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あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
10章 立奏大学_カニとエビのクリームパスタ(つまりそういうこと)
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つまりそういうこと

 椅子に座り、何気なくスマホをいじっていたら、そう言えばこの前の帝東大で小早川さんというか銀杏並木の景色を撮っていたことを思い出した。そう、風景ね、風景。いろいろあってすっかり忘れてた。

 撮影した画像を見てみると、黄色い落ち葉の上で、黄色い葉をつけた木々を見上げる小早川さんと美魔女が写っていた。

 これ本気でジャケ写じゃん。ちょっと俺、撮影技術高過ぎでしょ……天才かもしれん。

 小早川さんの姿を指でスワイプすると画面いっぱいに小早川さんが写し出された。驚いて思わずスマホのホーム画面に戻った。

 何今の。心臓に悪いよ、ビックリした。俺のスマホに小早川さんいるじゃん。鮮明だし。何? いやさ、スマホってこんなに画質って良いの? スワイプして画像広げてもくっきり写ってるって何事?

 再び先ほどの画像を開く。

 黄色い落ち葉の上で、黄色い葉をつけた木々を見上げる小早川さんが写っている。


『わぁ、綺麗!』


 と言っているのが画面越しでも伝わる。綺麗な風景を見て綺麗と言って、美味しい物は美味しいと言って、素直に思ったことを口に出すんだよな彼女。そんな自然体なところが一緒にいても心地良いし、何かこっちまで嬉しくなるんだよなぁ……。

 しかし、ずっと見ていられるな。これが人を好きになるって感覚なんだろう。やっぱり俺は小早川さんのこと好きなんだよな。隣りには美魔女が写っているが、俺と小早川さんが付き合ってどこかに出掛けたりすることがあれば美魔女の写っている位置に俺がいるようになるのかな。本気でそんな未来が来ると良いよなぁ。

 画像を閉じてデスクの上にスマホを置いた。ダウンコートの掛かっている壁をぼんやり見つめてため息が出る。奥がつかえている感じがするんだ。もどかしいし、すっきりしない。コートの横にはカレンダーが掛けられていて、大学はそろそろ冬休みに入る。

 12月24日の日付が目に入る。


「……画像、小早川さんに送って無いな」


 スマホを手に持つと先ほどの画像をまた開いた。これ、小早川さんに画像を送らないと本気で隠し撮りになるよな。今からそう言えばって言って画像送った方が良いよな? 帝東大に行った時からけっこう時間が経ったけど、忘れてたって言ってさ。そのついでに学食行きませんかって誘うのはどうだろうか。俺、一応副部長だったような気もするし、別に不自然じゃないし、サークルの活動だし。隠し撮りにはしたくないし、あくまでサークル活動ってことで。

 急いでクリスマスの雰囲気も味わえそうな大学を検索してみた。


「やば……あった。最高じゃん」


 まさにこの時期にうってつけの大学の名前がすぐに出てきた。ひとつ深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。あくまでサークル活動の一環として、さりげなく。俺よ、落ち着け。メッセージのやり取りができるアプリを開き、小早川さんの名前を見つける。


『今度、サークルでここの大学の学食に行かない? 12/20前後とかで』


 大学のサイトURLと共にメッセージを送った。

 あ、先に銀杏並木の画像を送った方が良かったかな。まぁ良い。俺のメッセージはすぐに既読になった。小早川さんは今日、バイトじゃなかったのか?


『こんばんは。良いですね! この時期はツリーが点灯しているみたいです。ツリー見たいですね。ぜひぜひ』

「ぃよしっ……!」


 声が出たし、思わずガッツポーズをしていた。


『他の人にも声掛けますね。またご連絡します』


 あぁ……そうなるよね。そうだよな。サークル活動だし。とりあえず12月にクリスマスっぽい雰囲気が堪能できればそれで良しとしておくか。

 ピコンと通知を知らせる音がスマホから鳴った。


『未島先輩は連日パーティーにお呼ばれされているみたいで12月は難しいみたいです』


 プリンセスかよ。社交界的なヤツ? パーティーがどんなものなのか想像がつかないが、実際にパーティーに行く人って初めて見るよ。あの一家は年末年始とか忙しそうな気もするし、タキシードを何着か普段着として持ってそうだもんな。


『高峰君は聖地秋葉原に行くのでその辺りの日にちは難しいみたいです』


 高峰は秋葉原の民になったのか。聖地って言うからには高峰にとって神聖な何かがあるんだろう。この前何かが目覚めそうって言っていたのと関係が? この人、ホントにどこに向かっているんだろう。

 今のところ俺、美魔女、小早川さんの3人。小早川さんは確定で行けるって理解で大丈夫かな? 美魔女と俺の2人はさすがに厳しいよな。

 遅れてスマホの通知が鳴った。


『美波里先輩はしばらく旅行だから無理だそうです。立奏(りっそう)大には私と今井先輩の2人で行く感じですねぇ』


 俺は神という存在を今まで信じて来なかったが、この時ばかりは天に感謝を言いたい。神様ナイス!

部屋の窓を開けて夜空に向かって叫びたいくらいの気持ちだ。

 

『了解です。忘れてたけどこの前、銀杏並木を撮った画像を送るよ』


 帝東大の画像を小早川さんに送るとすぐに既読になった。すると小早川さんからも画像が送られてきた。

 その画像は銀杏並木の中に俺と高峰が写っていて、高峰の操作するスマホを覗いている俺がいた。

 帝東大で銀杏並木にいた時、小早川さんからも俺達の姿を撮られてたんだ……。


『銀杏並木の中にいる感じがポスターみたいだったので隠し撮りしました(笑)奇遇ですね』


 そして照れてほっぺが赤くなり、頭に手を添えているうさぎのイラストが送られてきた。

 これは偶然なのか? 同じタイミングで同じ景色の中、お互いにこっそり撮ってたってことだろ? これってつまり……。もう"そういう仲"なんじゃないの?

 心臓が潰れるかと思った。自然とため息が出て、体が満たされて腹の底がこそばゆいような感じ。これが「キュン」ってことなのかな。破壊力が凄まじい。キュン死にって本当にありそうだよな……。

 スマホを持ちながらベッドに横たわると、もう今日は何にもする気が起きなかった。そして自然とため息が出る。

 

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