瑠璃、と、サーラ。
……元々この体はわたくしのものであったはずなのに。
……転生の魔法でこの時代に生まれ変わるはずだったのです。
……でも。気がついたら貴女がわたくしより先にこの体に転生していて……。
あうあう。カッサンドラさまの声がする……。
……ああ、やっとわたくしの声が貴女に届いたのですね……。
ああ、そうみたい。っていうかなに?
転生のバッティング?
そんなことあるの?
……何度も貴女に声をかけてたのですけど、今まで気がついて貰えなくて……。
ああ、なんだかかわいそうになってきた。。
……せめて、と、予感のイメージを送ったりしていたのですけど……。
え? もしかして今までの悪い予感って、あなただったの?
……そうです! この身体が傷つくのは回避しなければ、と、必死でしたよ。
そうだったんだ。ごめんなさい。と、ありがとうございますカッサンドラさま。
でも、なんで急に声が聞こえるようになったんだろう?
……祭壇の聖杯のおかげでしょうか。あれにはわたくしが生前に力を込めておきましたから。代々の預言者への指針も残しておきましたし。
……貴女とわたくしが繋がるキッカケになったんだと思いますよ。
そっか。
に、しても。カッサンドラさまはこの身体を操ったりは出来ないの?
……今までは……、出来ませんでしたね。この先は、もしかしたら出来るようになるかもしれません。貴女がわたくしのチカラを受け入れてくれれば、可能かもしれません。
なら……。試してみます?
わたしはさっきの聖杯の光の真っ白なイメージを思い出す。
こころの中の深いところ、そこにあの白いイメージがあるような、そんな気がして。
自分の中に潜る。
ああ、ここに来るのは何度目だろう?
わからないけどきっと何度か来たことあるはず。なんだか懐かしい。
わたしは自分の中の、インナースペース? 昔お話でよく読んだそんな言葉が出てきて、そこにたどり着いたのだろう。
そこは真っ白な空間。何も無いようにもみえるけど、何かがある気配がする。
意識を集中していくと、そこに、サーラの姿が現れた。
貴女が……カッサンドラさま?
その少女は微笑み頷いた。
彼女がサーラ? だとしたら、わたしは?
わたしの意識は……、記憶の中にある見覚えのある手、足。顔にかかる髪。
やっぱりわたしは瑠璃の姿なのか。
ひょっとして、わたしの方が、邪魔者、なのか……。