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孝従との戦い

地上では魔物相手の総力戦が行われていた。ある者は魔物と戦い、ある者は街の人々を避難させ、王都は魔物と人の血でむせ返る匂いがしていた。

「始まったね。」

「予定通り・・・。じゃあ、我々もはじめましょう。」

美珠の揺るがぬ声に相馬が頷いた。

さして戦力にはならぬ四人は地下通路の中で、自分達の時を待っていた。

出発時は五分程しか遅れをとっていなかったはずの精鋭部隊の姿は地下通路では気配すらもう感じられない。

それははじめから予測していた。

精鋭部隊の移動速度は自分達とは比較にならないことぐらい。

だから相馬は奥の手を持っていた。目の前には細くさびついた、女の握りこぶしほどの管が上から下へと配置されていた。耳をその管につけると水が流れていた。

「ここをぶち抜けば庭に出られる。この排水溝は庭の池を循環させているものだろうから・・・。」

相馬は通路の見取り図から顔を上げると懐から黒い筒を出した。

「下がって!危ない。」

 その筒を上へと投げつける。天井にあたるとその物体はほんの小さな衝撃に耐えられず宙に浮いたまま轟音を立て炸裂した。

 土埃が辺り一面を覆い、暫くしてから土埃をかき分けるように光が見えた。

「相馬、あんた一体どこでそんな物騒なもの。」

「海外留学が長かったからね。世の中にはこんなもの扱う国があるんだ。」

「・・・物騒な国だねえ。」

珠利が笑いながら顔を出すと、そこは予測どおり城の庭。

相馬と初音は珠利の手を借り、地上へと出、美珠も手をかけ地上に出ると、光の眩しさに目を細めた。

 目の前には父が治めていた王城。かつての美珠にとって近づきたくない場所であり、いずれ自分が嫌々ながらも治めなければと考えていた城。

 けれど今、自分の立つ場所からは荘厳な城の全景をおさめることはできなかったが、国の中枢に、代々王族が守った場所に戻ってきた、そう思うと気持ちが引き締まった。

「久しぶりの城・・・。今まで重荷でしかなかったのに・・・。今は懐かしくて・・・そして別の重さを感じる。・・・これがきっと責任というものね。」

「そうですね。我々庶民にとれば城は憧れですもの。城が戻れば舞踏会にも出てみたいですし。」

「はいはい。話はそれ位にして。さ、進もう。」

「ヒヨコの言うとおりだよ。嫌な気配が集まってきてる。・・・早く、孝従を捜さないと。」

「ヒヨコって!」

けれど珠利の瞳は武人の色そのものだった。

「!っ、下がって皆!」

「私をお捜しですか?」

頭上から声がしたのと珠利の声はほぼ同時だった。

美珠が目を上げると孝従が二階の手すりに腰を掛け見下ろしていた。

「ちょうど良かった・・・。話があります。」

「愛の告白ですか?困ってしまいますね。」

孝従は美珠を挑発するように笑うとそこから四人の前に飛び降りた。

そして何を言うこともなく剣を抜き、襲いかかった。

迫る剣を、剣が防ぐ。

間一髪珠利が立ちふさがった。

「珠利、お前か。その風体は軍・・・。お前軍にいたのか?」

孝従は少し懐かしそうに笑った。

「孝従先生のせいであの時の訓練生たちは解散させられたからね。相馬のお父さんに軍に配属してもらった。騎士しか昔は考えてなかったけど、いいよ。軍も。」

その間にも周りから魔物が咆哮をあげ、迫ってくる。

相馬は銃を構え魔物を相手にしはじめた。

数では不利なことは美珠にも分かっていた。けれど美珠は孝従に剣を抜きたくなかった。

静かに生きようとした彼を、家族のもとへ帰してあげたい。

彼の家族を無茶苦茶にしたのは国なのだから。

美珠は孝従を見据え、一度呼吸を整えた。

そして声を張り上げた。自分の中にある思いを伝えるために。

「孝従!聴いて、聴いて欲しいの!私達、咲さんに会ってきたの。」

美珠の声に、妻の名に少し孝従の動きが止まった。

「聞いたの、麻紀ちゃんと信ちゃんのこと。」

「うるさい!」

それも一瞬、孝従は珠利の剣を振り払い、美珠に斬りかかった。しかしまた珠利が防いだ。

剣から火花が散った。

「謝っても許せないことぐらい分かってる!もし私があなたの立場なら、同じ事考えるかもしれない。」

「なら・・・おとなしく死んでください。」

「それで・・・あなたの気持ちが晴れるというのなら、それでも仕方ないのかもしれない。でも、その前に聞いて!咲さんは帰ってきて欲しいって泣いてた。やつれてガリガリで・・・、それでも貴方の帰りを待ってるの!。」

「うるさいと言ってるだろう!」

正気を失いつつあった孝従の攻撃は珠利の剣を弾き、珠利を刺そうと突きを繰り出した。肉を裂く音がした。

「美珠様!」

初音と珠利の声が重なった。


ラストスパート頑張ります!!

もう少し、お付き合いくださいませ^^

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