のどかで穏やかな場所、クーロン村
前回のあらすじ
最寄りの町に向かう商人の護衛依頼を受けた。
ワイバーンに勝利!依頼も無事に達成!
メクスカンからクーロン村までは何事もなく向かうことができた。
少々予定より早く着きそうなぐらいだ。
メルの体力も、相当付いていたのだろう。
そして、クーロン村に到着した。野生動物やモンスターが入り込めなさそうな柵の中に畑が広がっていて、本当に穏やかな場所だった。
村の入口に立っている人物が、メルを見て話しかけてくる。
「お、お前、メルか?メルなのか?」
「肉屋のおじさん!メルです、ただいま帰りました!」
「………皆ー!メルが帰ってきたぞー!」
おじさんはそのまま村の中に入っていってしまった。
「えーと……ようこそクーロン村へ!」
「ああ。しばらく滞在させてもらうとするか」
「よく帰ってきたな、メル!」
「何もなかった?ひどいことされてない?」
「大丈夫ですって!特に何もなかったですよ!
あ、それから紹介しますね。タツマ・フジシバさんです!迷宮内で危険な目に合いそうだったところを、助けてもらったんです!」
「あ、どうも藤芝達魔といいます。はじめまして、よろしくお願いします。」
「おお!メルが世話になったようで……」
「いえいえ、メルには助けてもらってますし……」
「いい人達だったな、親御さん」
「あはは……心配しすぎだと思うんですけどねー」
「あ!メルお姉ちゃんだ!」
「ホントだー!メルお姉ちゃーん!」
「あ!トンビくんとツバメちゃん!元気にしてた?」
「うん!私達元気だよー!」
「俺、畑仕事手伝ってるんだー!」
「そっか!それは良かったねぇ!」
「うん!でも、なんだか大変なことが起こってるんだ……」
「どうしたの?」
「なんか、村の外からモンスターがきてるんだって。肉屋のおっちゃんが追い払ったけど、今度はどうなるかわからないんだ。」
「なるほど。じゃあ俺達の出番ってわけだな。」
「お兄さん誰?」
「だれー?メルお姉ちゃんのカレシー?」
「ち、ちちち違うよ?!」
「あはは、違うよ。俺はメルの仲間の藤芝達魔っていうんだ、メルと一緒に冒険者をしている。」
「じゃあモンスターやっつけてくれるの?」
「もちろんだ。お兄さんたちに任せとけ」
「私もやるからね!」
「じゃあ、お願いします!」
「おねがいします!」
まずは実際にモンスターと戦ったあのおっさんに話を聞いてみる。
「おお、あれをやっつけてくれるってのかい!
もちろん話すとも。奴ら、5体ぐらいでやってきては、村の作物を食い荒らしているんだ。
すばしっこい猿で、武器を持ってるやつがリーダーのようだったよ。」
「なるほど……どうやらファンクモンキーが率いる群れのようですね。かなり厄介な敵ですので、ふたりとも気をつけてください。」
「そうか」「分かりました」
奴らの棲家はすぐに見つけられた。村からそう遠くなく、村が見える位置にあったのである。
奴らに見つかる前に、5体ほど倒すことに成功した。
その後は5人で戦った。
あいつらはたしかにすばしっこいやつだったが、俺は【二速斬り】や【三速斬り】ならば十分対処できるし、
ブレンは木のツタや枝を絡ませて機動力を奪い、ソイルが確実に仕留める連携を見せた。
メルはブレンと同じく、【アイスフィールド】で足を凍らせて魔法で滅多打ちにする。
スカイ?不可視かつ無臭の銃弾を、どうやって避けろと?
しばらく戦っていると、リーダーらしきやつが出てきた。あれがファンクモンキーらしい。
さっきまで相手にしてたステップモンキーとか言う奴らとは違って、向こうから攻撃を仕掛けてきた。それに乗じて取り巻き達も攻撃してきた。
ファンクモンキーはめちゃくちゃな振りかぶりで攻めにくく、隙を見出すのに時間がかかった。
だが、隙を見つけてからは大したやつではなかった。あっという間に追い詰め、とどめを刺した。
向こうも全員倒したようだ。
しかし、次の瞬間、もう一匹のファンクモンキーが襲撃してきた!
「きゃあ?!」
「くそ、メルを狙うとは!」
俺に挑んでも勝てないと悟ったのか、メルに攻撃を仕掛けた。
だがブレンが弾き飛ばした。
「チッ!かかってこいよ!」
挑発にも乗らず、なかなか隙を見せない。
そして、いきなり大ジャンプをした!
「させるかよ!」
盾を出すのは間に合わない。ならばー
「た……タツマさん……!?」
「ぐぅ………っ!」
腕に刺さった感覚がする。すごく痛い。でも、隙は出来た!
「……ソイルっ!」
「!【バインドロック】!」
岩の蔦のようなもので拘束し、動けなくさせる。
一旦刺さった剣を抜く。
「いっ、てぇー……」
「【ハイヒーリング】!なんであんなことを?!」
「そりゃ………お前が傷つくのを見たくないからだよ……」
「えっ……?」
「【特効剣】!!」
「ありがとうございます、おかげでしばらくはモンスターに悩まされることはなさそうです!」
「タツマお兄ちゃんありがとう!」
「ありがとー!」
「いや、頼まれたことをしっかり終わらせただけなので。」
「いい人みつけたんだね、メルお姉ちゃん!」
「うん。ほんとに、いい人なんだよ……!」
「………ここは?」
「私の、大切な人たちが眠ってるところです。
この人がいなかったら、私、生まれてないですから」
「もしかして……?」
「はい。私の、お父さんとお母さんです。」
「……亡くなられてたのか……。」
俺たち二人は静かに、手を合わせる。あの二人とそこまで似ているところがなかったのは、そのせいだったのか。彼らは里親、というわけだ。
「お父さんは、小さい頃にモンスターに。もう覚えてないですけど、優しくていい人だったって聞いてます。
お母さんは、5年くらい前に、盗賊に狙われたときにわたしを、かばって……
………今でも、覚えてるんです。『幸せに、生きてね』って言う、お母さんの最期の言葉……」
だから自分を犠牲にするやり方をした俺に、怒っていたんだな。
あのとき聞こえたつぶやきも。
自分をかばってまで守らなくていい、死んでしまうのだけは嫌だ、という、彼女の心が強かったのだろう。
「……もう大丈夫。お母さん、私、頑張るよ。お母さんが笑っていられるよう、私も幸せになってみせるから!」
…………?
ここは?
(ありがとう……あの子を助けてくれて。
あの子の、支えになってくれて)
後ろを振り向くと、そこには女性がいた。
赤い髪に緑の瞳。メルの、お母さんだろう。
彼女と何となく雰囲気が似ている。
(わたしは、あの子をおいていってしまった……あんなに早く。まだ成長できていなかったあの子に、トラウマを与えてしまった……
でも、あなたがあの子を守ってくれて。あの子を成長させてくれて。私はすごくホッとした。
頼みがあるの。あの子をこれからも……支え続けてくれる?)
その問いかけに俺は、すぐに
「もちろんだ。任せておけ。」
と答えた。
(今度は……孫でも連れてきてもらえたら嬉しいわ。)
メルのお母さんはそう言って、俺は現実に戻った。
「……さて。行きましょうか。」
「………おう。」
そして、その場を後にする……その前に。
メルは、こちらに振り向いて、こう言ってきた。
「タツマさん。その………私、」
「あなたのことが、好きです。」
「最初に見た時は、あんな強そうなモンスターを倒せるすごい人なんだって思いました。
私の怪我を治してくれて、新しい魔法を教えてくれて、一緒に戦ってくれた。
あの骸骨と戦った時に、あなたが自分の身を削ってまで勝負を決めに行ったとき、すごく怖かった。もしかして、死んでしまうんじゃないかって。その時から、あなたのことが気になって仕方なかった。
あの猿と戦ったときも、私をかばって怪我をして。なんでそんなに気を使ってくれるのか謎だった。
仲間を大切にしてくれることも、困っている人を助けようとすることも、何より……一番前で戦うあなたが、とてもかっこよくて、好きになったんです。」
「初めて君を見てから、可愛いと思った。
かわいいだけじゃなくて、誰でも仲良くなれる、しようとする君が、魅力的に見えた。
今、好きだといってくれて、純粋に嬉しかった。心が暖かくなった。ずっと一緒にいたいって思ったんだ。
だから俺と、付き合ってください。」
「………はい!」
その声が聞こえた瞬間、俺は彼女を抱きしめた。
可愛いと、愛おしいと思える人と、付き合えると思って、自分でも抑えられなかった。
抱き寄せられた彼女は、えへへ、と嬉しそうに笑った。




