大いなる索敵
九十話になりました。有り難う御座います。
とりあえず足取りを掴んだブレアたちだが、逃げ方がえげつない。複数方向に逃げているしたまに転移もしている。相手は空間術師のエルフがいるそうだ。これは追いきれないな。ブレアが寿命で死ぬまで追いかけっこならまだいいが、エルフが死ぬまで追いかけっこはさすがにできないからな。
ボク一人ならスリーSになれば追いかけれるけど。魔族のリンゴやクラリスさんも大丈夫か。エルフより魔族の方が長生きだ。でも相手も味方を増やせるからな。
ちなみに新書派はどんどん減っていて、すでに壊滅状態らしい。それでもニターナ貴族間の不和は残っていて争いが続いている。そもそも戦争したい理由が口減らしと略奪だから世界が暖かくならないなら戦争もなくならないんだ。王のせいとか貴族のせいとかじゃないんだよね。革命とか言って王家を潰した国もあるらしいけど、それで民が豊かになった話はどこにもない。
当たり前なんだけどね。人口一千万の国があったとして、王家が五十億の稼ぎがあったとしよう。一人辺りいくら増える? 一年でだよ?
豊かにならないんだよなあ。革命なんかしても。むしろ無秩序になって飢えが進むだけだ。
セレナが考えるように、教育とか公共の施設を増やしていった方が民は豊かになる。
そんな政治的な話はボクにはできないけどね。なんでボクが女王様?
ボクが革命で倒れたら誰に文句言いに行こう? 勝手に王様にして勝手に倒されたらやってられないね!
まあなんか異常に好感度が高いらしいんだけど、ボク。でも女王は忙しいからやだなあ。ボクなんて政治できないから、ただのお神輿だよねえ。あ、夏祭りはお神輿出すように命令しちゃお! 忙しさが増しそうだけど。
それで索敵を進めている。ボクらの敵って実はブレアやソックセンや帝国だけじゃなくて、南には南で魔物の国がいくつかある。魔王国に編入されてても領地が曖昧なせいでゴブたちが軍隊チームに襲われることとかあるんだよね。負けないが。
だからそっちも索敵しないとダメなんだけど、さすがにムバウばあちゃんだけでは無理がある。精霊術学校でもゴブの間に作りたいんだけどムバウばあちゃんだけの負担が大きすぎて無理だ。ゴブリンシャーマンがもっといたらいいんだけど、ゴブ自体言葉がほとんど分からないからなぁ。町の人どうやって商売してるの?
それでいろいろ行き詰まる。
はあ、なかなか物事は進まないね。毎日ブラック仕事だよ。
とにかく敵を見つけて、どんな手段でも攻めなきゃダメだ。戦力差が埋まったら嫌だしね。
でも上手くいかない。まあ相手だって頭がついてるからその対策はどんどん立てていくだろうけどさ。
相手もボク並みに苦労してるなら研究とかにも手が回せないだろうし、それはそれで良いのかもしれないね。
まあ策がないわけじゃないんだ。ムバウばあちゃんを通訳だけで使って「シャーマン誘ってこい」ってパンを渡すとかね。
………………(ある女ハーフエルフの旅人の視点)
この町は驚くほど戦が多いようじゃのう。その割にほとんど誰も死んでおらんとか、嘘のようじゃが真らしい。信じられんな。
何より軍事ではエリクサーが使い放題らしいが、王族がこぞって求める品じゃぞ?! 嘘と思ったが真じゃし!? わしも混乱しきりじゃ。どうやって作るんじゃ。材料も集まらんじゃろうが。スキルか……。すごいのお、さすが神の御技じゃな。
友人のモアリーストに会いに来たのじゃが奴は相当忙しく動き回っているようじゃ。うーむ、ハーフエルフで生まれた我はまだ肉体は人間の十代と変わらぬだけ動けるがあやつすでに六十代じゃろうに。あ、我も年は変わらんがな。
しかしまあ、新しい国の文治を支えておるのじゃから忙しくないわけはない。わしも急がぬつもりじゃったのじゃがな。あっさり面会は叶った。
「正直手が足りないのですよ。ゼファーさんもうちで文官をやってくれませんかねえ」
「う、ううむ、すごく急がしそうではないか……。考えさせてもらう」
「今ならなんと、ルーフィアパン店の食料が無料! 食べるだけならですが」
あれ、結構魅力的? お金の面で苦労することはなさそうじゃ。ただ、これ絶対ブラック企業じゃけど。
「ブラックとは言いますが我らも週に三日休みを取ることを許可されておりますからな」
「それ、仕事が圧縮されるだけではないのか?」
「そうですな、正直休みも働きたいのが本音でしてな」
ただ休みの日を増やしても仕事の量が変わるわけではないからな。それだけでいいなあと飛び付くのはバカというものじゃろう。ただ、効率化は進む。
「うーん、ぶっちゃけて言うなら国を起こしたところなので仕事量は多いのですが、休みは休み、ぼんやりしていてもおこられることはない。国がある程度落ち着けば過ごしやすい休日になるでしょうな」
「そういわれると今のうちに働いてみせて給金を増やすべきかとも思うな。わしもハーフエルフであるし、十年やそこらの時間なら我慢できよう」
「あ、過労死はご心配無く。ことあるごとに女王陛下から疲労回復薬とか届きますのでな」
「殺される?! ブラック殺される?!」
「働き甲斐や生き甲斐はありますでな。うーん、ただぼんやり生きるくらいならこの国に尽くすのは悪くありませんぞ」
うーん、むむ、確かになあ。なにもせず、なにも期待せず、なんにも動かず、なにも考えず。そんなのは生きている意味がないし甲斐もない。
うーん、自由を謳歌したい気持ちはあるが、トップが偉そうに命令してくるような組織ではなさそうじゃし、プライドを保って仕事をできるのなら良いかもしれぬ。
「そうですな、まずはこの町を知るべきですな」
「うむ、数日回って知っては来たが、本質はまだ見えぬな」
「とにかくルーフィア女王の元、セレナさんという天才が改革を進めている町です。知り尽くすのはなかなか難しいですぞ。住んでいる私もそうですからな」
「うむ、面白う町であるのはすでに知っておるぞ」
「あ、一つだけ注意がありますぞ。女人が国王に近づくと一瞬で落とされると言われておりますのでなるべく近づかぬように」
「は?」
国を知るなら王も知らねばならぬだろうに……。いや、なんかヤバい予感がした。この国の王には絶対に近づくまい!
そもそもこの国の王は女王なのじゃが……あれじゃ、怖いもの見たさというのが湧いてくるな。
ともあれ、どうもモアリーストもキツいようであるので、奴の下で働いてやることにした。はなたれの頃からの親友でもあるしな。
……ルーフィア女王陛下。どんな方であろう。ドキドキ。
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過労死担当の新人ゼファーさんがごろりんこします!
「え、しなきゃダメかの? ご、ごろりんこ。六十超えてやるのは恥ずかしいのう、これ」




