14話 緊張感
「さっきアグニが言ってたコアって何?」
「コアはね〜フロンティアの中心にあるの! フロンティア内の魔物はぜーんぶコアから生み出されてるんだよ!」
「へー」
私が魔物だった場合は、私が発見されたフロンティアのコアが親でここにある方は叔父か叔母にあたるのか。
「コアってどんな形なの? イメージ的にはでっかい珠っぽいんだけど」
「ピンポーン! せいか〜い! コアはまんまるでピッカピカな珠でーす!!」
「大きさってどれくらいなの?」
「結構まちまちだね〜。小さいところは片手で握れるくらいだけど〜、大きいところだと一軒家ぐらいあるしねー」
結構差があるな。コアの大きさに比例して魔物はフロンティアの規模も大きくなっていきそうだ。
「てかアルナちゃん、めっちゃ話しかけてくれてうれし〜! 次あたしの話に付き合ってもらってもいい〜? いいよね〜? ありがと〜!!」
「え、あぁはい」
しまったな。少し面倒くさいことになってしまった。私が返事をする前から応えてくれる前提で感謝をしないでほしい。……まぁさっきウッドマンの殲滅を手伝ってくれたからいいか。
「あたしって完璧美少女なんだけどさ〜、やっぱりそれだけじゃ足りないわけ。シャルルさんとかガチで憧れなんだけど〜……あっシャルルさん分かる?」
「分かるよ」
「良かった〜、それでさぁシャルルさんってもう12歳ぐらいでイノベーター始めて、その年ですぐに最上位のイノベーターだったの! マジでカッコよくて! あたしもそうなりたいな〜って思ってトレーニングとかずっとしてたのね!」
すごい喋るなこの人。今が調査中だってことを忘れてるんじゃないかと思うほど本当によく喋る。
それなのに尻尾と触手で報告書のようなものを書きながら歩いている。並列処理が得意なのかな?
「あたしも12歳からイノベーターを始めようと思ってたんだけどさ〜。親にまだ早いって言われちゃってさ〜、結局始めたのが去年で私が16のときなのね! 16歳って数は少ないけど割といるの! だからやっぱり12歳ぐらいからイノベーターデビューしたかったなぁとか今でも思うの!」
「マラキア、敵来た!」
ディアがマラキアの話を遮って大声で報告する。アグニが使用した法術の効果が切れ始めたようだ。
「いちいち報告しなくてもいいよ〜、ディア? あたしだって気づいてないわけじゃないんだし。というかあんたの方が射程長いんだから先に倒せたでしょ」
「それはそうだけど! 俺はビビりだから!」
おぉ、自信満々に言ってるからかとてつもなく情けない。あと自覚あったんだね。
「あっそうだ! ディアもあたしと同じで16歳からイノベーター始めたんだよ〜! でもあたしと違って元々イノベーターになる気がなかったんだって〜! じゃあ何で2年もやってんだって感じで面白いよね!」
「ちょっ……やめろよな」
へー。疑問に思ってたところだけど失礼な気がして聞けなかったのに、そっちから答えを教えてくれてありがとう。
「ディアは何でイノベーターやってるの? 因みに私はアグニにやれって言われたからやってる」
「アグニ先輩そんなことまで言う人だったんだ…… まぁそれはいいとして、俺はお金が目的だな」
別にサラッと流していいようなことではないぞ。というかそんな俗っぽい理由なんだね。ビビりなんだからもっと安全にお金を稼ぐ道を探した方がいいと思うけどね、私は。
「見栄張って一人前になるまで放浪の旅を続ける!なんて言って実家出たからさ…… 手っ取り早くお金が欲しくて始めたんだけど、思ってたより怖くて。だけど1日ですごく稼げるから辞めるに辞められなくて……」
ストレートにバカだね。でも、困ってたらちょっと助けてあげたくなるくらいの親しみやすさがある。それで上手くやってこれたんだろうな。
「バカだけど面白いんだよね〜ディアは。それに遺物が強いからパーティによく誘われてたりするしね〜」
「パーティって何? 宴会? ギルドでよく聞くから違うんだろうけど」
聞き慣れたわけではないが、聞き覚えのある言葉だ。初めてギルドに行ったときは誰かがそれにアグニを誘っていたり、最近ギルドを彷徨いているとたまに耳にしたりする。
「うっそ! 知らないのぉ〜? 依頼を1組単位で請け負ってる複数人の集まりだよ〜? 今のあたし達だって臨時パーティなんだよ〜?」
「そうなんだ」
「反応薄いな」
別の意味を知っているから全く聞いたことのない単語より反応が薄くなるのはしょうがない。……今思い出してみるとアグニとなら世界を変えられるとか熱烈なお誘いをしてる人がいたな。意味を知ったら面白く感じてきた……いや、元からか。
「ってか〜、全然魔物いないね〜。普段だったら話してる余裕もあんまないはずなんだけどな〜」
「うぇー、それほんと? なんかまた嫌な予感がするー」
「魔物がいないならいいんじゃないかな! 戦う必要もないんだし!!」
異変が起きてるのだから、良いことになっている可能性は殆ど無いと思う。絶対に何か良くないことが起こる前触れだと思う。
その時だった。私達の後ろ、アグニがいた方向から地面を震わすほどの轟音が鳴り響く。
「ちょっとヤバいんじゃない!? 2人とも行くよ!!」
「うん!!」
「あ、あぁ!!」
全員でアグニの方へ走って行く。足が浸かりきらないほどの水深でも、まるで足首を掴まれているような鬱陶しさを覚える。そのせいで一段と心が落ち着かない。不死身と名乗ってはいるが、それでもアグニのことが心配になってしまう。
今出せる最高速度で元いた場所に着くと、穴の中心にガジルをゆうに超えるほどの巨躯、怪鳥の死骸が転がっていた。
「お、お前ら終わったか? どうだった?」
怪鳥の死骸の上、何ごともなかったかのように鎮座する男がそう言った。
「すごい音が鳴ったんで来たんですけどー、何も問題なかったみたいですね〜」
「あぁ、そういうことか。いやーこいつを撃ち落としたら下敷きになっちまってよ。抜け出すためにちょっと多めに爆発させたんだよ」
はぁ〜心配させやがってよ〜。まぁ不死身だし心配する必要はなかったんだろうけど。
「大体調査は終わったんですけど何か変わったことありました? こっちは見た感じ魔物が少ないかな〜ってぐらいですね」
「そうか、やっぱりか。こっちも異常アリだ」
私の予感が的中する。もう息つく暇もない。私が空を仰ぎ見たその時、アグニが口を開く。
「コアがない」
想像以上の異常事態。私は場違い帰りたい。




