無事、月へ到着!
斜め上から見た美しい世界2の前日譚。
無事、月の住人として幸せに暮らすようになった元カチカチ山の狸タヌちゃんは、寺子屋の先生として楽しく勉強を教えていた。
ある日、月についてアレコレ予言や透視をする水星人について生徒たちから聞かされる。
それはトンデモナイ者かもしれない!詳しく確認しなければ!あまりにも酷いことが書いてあるのなら、抗議文を送ってやろう。
まずは、ある事ない事書きまくる水星人カサンドラ嬢が管理する《ツキペディア》という百科事典サイトにアクセスするのだった。
「ちょっと!タヌちゃん!おーきーてーーー」
「うぅん……」
「ターヌーちゃーーーーん」
「…………クッキー…むにゃ」
「ふふふ」
「ハッ!!かぐや姫!」
目を開けると、大好きなひとがニコニコ笑っています。
「クッキーの夢見てたの?」
「えへへ……♡」
かぐや姫は、狸のゴワゴワした頭をナデナデしてくれました。
キュルルンした目を作って見つめると、ギューッ!と抱きしめてくれました。
タヌちゃん可愛いねぇとスリスリしてもらえました!
「起きたなのー?ぐっすり眠ってたの!」
大きな身体のトナカイさんが言いました。
「ありがとうございました!助かりました!」
意外と寝心地の良かった座席から、ヒョイッと降りて
頭を下げました。
トナカイさんは「いいの!また、あたいとお話してなの!それじゃあ、さよならなの!」
お辞儀をしてから、再びふわふわ〜っとソリを引いて帰って行きました。
眠っている間に月に到着したようです。
寝起きの狸は、まだボーーッとしてはいますが、ぐっすり眠ったので身体は軽くなっています。
「うさぎのところに行くけどタヌちゃんも行く?」とかぐや姫が言いました。
「あ!!!!!!!!」
「きゃあ!なに!?タヌちゃん!!どーしたの?」
「かぐや姫!!大変なんですよ!!!!!
えっと……とりあえず…うさぎのところに行きましょう!」
「うっうん」
かぐや姫はとても驚いた顔をしていましたが、うさぎのところに向かって歩き出しました。
月の出入り口から少し行くと、m.uの裏に公園があります。
ブランコや雲梯など楽しそうな遊具がたくさん置かれており、小さいチンパンジーさんたちがボールを投げて遊んでいます。
少し離れたところには、キラキラした緑のベンチと白い石のテーブルが用意されていて、見慣れたフカフカのうさぎが座っています。
「うさぎー!」
かぐや姫が声を掛けると、向こうも手を振り返しました。
ふたりはまだツキペディアのことを知らないみたいだ…気が重いですが、きちんと見たことを話さないと。
うさぎは明るい声で「カフェラテ買っておいたよー!」とmoon cafeの紙袋をテーブルの上に置きました。
「わーい!ありがとー!飲む飲む!」
かぐや姫はうさぎの向かい側に座ると、袋からコーヒーカップを取り出しました。
先に狸に渡してくれます。
自分もかぐや姫の横に座ると、まずはきちんとお礼を言いました。
「ありがとうございます、うさぎ。ちょうど飲みたかったんです…」
カサンドラのところでコーヒーの匂いを嗅いでから
ずっと飲みたかったのです。
蓋を開けて、先に香りを味わう…
それからセンスの良い友人のセレクト、ぬるいカフェラテをゴクッと飲みました。
狸は猫舌なんだ!
ありがたい!
ふぅ~と一息。
真剣な顔でカップを見つめ続ける狸を、うさぎとかぐや姫はじーーっと見つめていました。
「な…何かあったの?」
うさぎが聞きました。
「……毒入りじゃないと確信があるって
幸せだなと思ったのですよ。」
怪訝な顔をしているふたり
「実は…お話しなければいけないことがあります」
かしこまって狸は言いました。
「実は、先ほどカサンドラ嬢の住む水星に行ってきたんです」
「えぇ!!?」
「すっ水星?!トナカイさんと水星に行ってたの!?」
かぐや姫は事情を聞いていなかったのか、心底ビックリした顔をしています。
「はい…色々ありまして。カサンドラはトンデモナイ者でした…」
「何があったの?」
うさぎは大きな目を見開いて、狸の言葉を待っています。
「じっ…実は、カサンドラの城の中に入りました
そして…」
ふたりのゴクリッという緊張した音が狸にも聞こえた気がします。
「台所であるものを見付けたんです…メモ帳です。」
「メッメモ帳を見つけたのね…?」
「はい……断っておきますが!そこには、《確定前》とハッキリ書いてありました!」
「確定前?なんの?」
うさぎはフワフワの顔を傾げて聞きました。
「…予言みたいのが書いてあったんです。
桃太郎のことでした。」
「は?」「え?」
「桃太郎は亡くなる…と。」
ふたりの表情はしばらく動きませんでした。
うさぎは沈黙の後に「なにが無くなるの?」と尋ねました。
かぐや姫は、口を開けたまま固まっています。
「ほっ本当かは分かりません!本当に亡くなるとは限りませんよね!」
「どういう事なのよ…?他には何か書いてなかった?」
「はい…16歳あたりで死亡と…」
「えーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????」
今更、大きな叫び声をあげて驚愕しているのはうさぎです。
「かぐや姫とうさぎのタスケルした桃太郎が16歳?あたりで死亡する。と書かれていました。」
「嘘よ、タスケルしたもん」
「そーだよ!!!!僕らがタスケルしたんだから!!!!」
「はい…でも書かれていました」
岩田さんが病気になって亡くなるかもしれないことや、鬼の事も話しました。
「僕らが旅行行ったときは、本物の鬼なんていなかったよね」
「鬼っぽい人間はいたけどね。実際の鬼なんて本当にいるのかしら?聞いたこと無いわよね」
「そもそも、カサンドラのツキペディアなんか信じる必要あるのでしょうか…?タヌには分かりません。」
三人は考え込みました。
「神様に聞いてみましょうか?」
「そうね、それがいいわ。神殿まで行きましょう」
ふたりは、さっきと全く違う雰囲気で眉間にシワを寄せて歩き始めました。
三人は無言で神殿を目指します。
m.uやmoon cafeの前を通ると、相変わらず住人が集まっていて活気で溢れています。
moon cafeの前に黒い看板を出している店員さんがいました。
女の店員さんは、エプロンからペンを取り出して
文字を書ける看板に【新メニュー】と書き足しています。
通り過ぎる直前、【もっちもちイチゴ大福】という文字が見えました。
どれくらいもっちもちなのか……
大福というだけで、美味しすぎて罪深いというのに…
お腹が空いてきた…グゥ〜と音が鳴りそうだ!
狸はいつの間にか、桃太郎のことよりもイチゴ大福のことを考えていました。
すると、「あ!!危なーい!!」と背後で声が聞こえます。
振り返ると、ボールがmoon cafeの看板に当たりました。大きく縦に跳ね返ってバウンドし、大きな扉の上にぶら下がっていた食べられる鐘にクリーンヒット!
柔らかい鐘は「グチャ!!!!」と潰れ、「ボトッ!!!!!」と一気に落下しました。
ふと目をやると、先ほど公園にいた小さいチンパンジーさんたちが慌てて駆け寄ってきているところでした。
「うわぁ〜ん!!ごめんなさい!!!」
呆然としている店員さんに謝っていました。
「誰にも当たらなくて良かったわね…シンボルは壊れちゃったけど」
かぐや姫は再び歩き始めました。
「店長があの鐘を見たらぶっ倒れるね…」
うさぎも前を見て行ってしまいます。
食いしん坊な狸は、あの鐘どーするんだろう?もったいないなぁ…と思いました。
何度もcafeの方を振り返りながら、捨てるくらいなら食べさせてもらえないかな?とお腹の空いた食いしん坊な狸は、鐘のことで頭がいっぱいでした。




