Amoonzonより《たぬき全書 》届く!
斜め上から見た美しい世界2の前日譚。
無事、月の住人として幸せに暮らすようになった元カチカチ山の狸タヌちゃんは、寺子屋の先生として楽しく勉強を教えていた。
ある日、月についてアレコレ予言や透視をする水星人について生徒たちから聞かされる。
それはトンデモナイ者かもしれない!詳しく確認しなければ!あまりにも酷いことが書いてあるのなら、抗議文を送ってやろう。
まずは、ある事ない事書きまくる水星人カサンドラ嬢が管理する《ツキペディア》という百科事典サイトにアクセスするのだった。
「まっ…まぁ…とりあえずツキペディアのことは置いておきましょうか」
狸が咳払いをすると、ちょうどよく料理が運ばれてきました。
「お待たせ致しましたぁ〜!店長渾身の新作《BIGプルプルプリン》ですぅ!」
「おーーーーー!」
三人は、テーブルに置かれたプリンの大きさに驚きました。
「うっ、うわぁ…僕、全部食べられるかな?」
「私は余裕だわ!でも…すごい量よね!うさぎの頭より大きいんじゃない?」
「ふわぁ!!!こりゃ楽しみですね!!ほんとにプルプルですー!」
お皿を少し動かすと、左右にぷりん!ぷりん!と気持ち良さそうに震えています。
プリンまで食されることを喜んでいるようです。
「いただきまーす!!」
大きく口を開けてガブリ!!
「タヌちゃんったら、あはは〜!!スプーンあるよ!」
かぐや姫は爆笑しながらスプーンを渡してくれました。
「ハッ!そうでしたね!」
なんという失態!美味しそうな食べ物を目の前にすると、つい我を忘れてしまいます。
直接カブりついてしまうなんて…下品な狸だ!失敗!
ふと見ると、うさぎも同じことをしていました。
「あ!うさぎも!!?また口の周りに付いちゃうわよ〜もーー」
「え?えへへ〜」
うさぎの顔がプリンだらけで美味しそうになっているのを眺めながら、狸は美しく食べられるように努めます。
「すみませーーん!おしぼりくださーい!」
気の利くかぐや姫が店員さんにお願いしてくれました。
「ほんとうにプルプルですね…しかもこれは…なんとも言えない素材の味が生きていて、食べ応えがあって…とにかく満点です!!」
「ふふふ、ほんと美味しいよね」
かぐや姫とうさぎもニッコリと嬉しそうに微笑みました。
この幸せな時間…狸は絶対忘れません。
親狸にも食べさせたかったな。
食べかけのプリンを頭の中で、父狸と母狸にも食べさせてあげました。
食べたことの無い味だよね?
「また皆で来たいですね」
自然と言葉が出てきました。
うさぎとかぐや姫の、そうだねという優しい声が聞こえました。
狸はとても幸福な時間を味わいました。
moon cafeは、この日LIVEの予定が無いとのこと、それだけが残念な点でした。
狸のお腹の音と、どちらが良い音がするのか聞いてみたかったのです。
きっとまた近いうちに、楽器たちの演奏を耳にするはずだと感じました。
moon cafeからの帰り道、かぐや姫とラーメンを食べて帰ろうと話していたのにストイックなうさぎに止められました。
「君らの足が遅いのは食べ過ぎのせい!」と言われ、狸は本気でカチンときたのです!
しかし、明日から日本の緑茶とおにぎりで過ごすから大丈夫だと言い張るかぐや姫に、つい笑ってしまいました。
一度、彼女が握った歪な巨大おにぎりを差し入れてもらったことがあるのですが…明らかに減量には不向きでした。
中身はグミなどの甘い菓子だったからです。
吐きそうになりながら「美味しい♡」と嘘をつきました……いい思い出ですが、二度と食べたくないなぁと思いました。
月の神様は、なぜ体重という概念をココでも採用しているのか?今度聞いてみよう!
ラーメン食べたかったなぁ
これからジムに行くと言ううさぎと、帰って寝る予定があるかぐや姫とm.uの前で別れました。
狸はひとりで寺子屋へ向かいます。
まさか授業をするところが自宅なわけではありません。
寺子屋の裏に、ピカピカに光る灰色の平屋が建っているのですが、月に来てすぐに神様が創ってくれた我が家です。
狸だというのに、今ではフカフカの分厚い布団で眠っているのだ!
なんとも贅沢な境遇。
本当に幸運な狸です!
親狸とここに住めたらどんなに幸せだったことか。
このター坊が先生なのだから!
母狸はなんと言うだろう?「おめでとう!」と花冠を頭につけてくれるかもしれない。
父狸は怒るかもしれないなぁ?
「そんなことより罠を見抜けるようになったのか?」と言うかもしれない。
「ここに罠は無いんだよ」と言っても、「そんなことはわからない!」と月を周って危険がないか確認しに行くかもしれない。
実際ドジなター坊は、罠にかかって死にかけたのだから…。
父の予感は的中していたわけだ。
しかし、かぐや姫に会えばふたりの気持ちも変わるだろう
ここで幸せに生きられるはずだ。
ふたりを連れて、どのお店に行こう?
母狸はm.uで素敵なお洋服を選べばいい、父狸には映画館が良いだろう、色んなジャンルがあって退屈には及ばない
フルーツ食べ放題のお店があったなぁ〜
まだ行ったことが無いし、ふたりを連れて行けたら
もう死んでもいいくらい幸せだろう。
あっ…そういえば、タヌはもう死んでいるんだっけ?
厳密には死んでいないのかな?
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
親狸のことをたくさん思い出していると、自宅が見えてきました。
寺子屋を通り過ぎて少し歩くと、お気に入りのキラキラポストが見えます。
中を確認すると、注文していた本が届いていました。
持ち上げると、ズッシリ重く封筒はかなり厚みがありました。
Amoonzonから送料無料で即配達!
ありがたい!
「こりゃ楽しみです!」
地球にいるときにうさぎが言っていた神通力を持つ狸。
ここに来てから実在すると知り驚きました。
この封筒の中身は、なんとその神狸が書いた《たぬき全書》なのです!
大切に本を脇に抱えて、家の玄関へ向かいます。
近付くと扉が勝手に開きました。
そして、狸が家の中へ足を踏み入れた途端、ほんのり優しい明かりが灯りました。全自動なのです!
といっても、まだ慣れません…。
なにせ狸は室町時代の狸ですから、ピカピカと光る電気や急に話しかけてくる冷蔵庫、いつでも温かい綺麗なお湯が溜まっているお風呂など…。
来たばかりの時は違和感だらけで、どこかの殿様にでもなった気分でした。
とにかく落ち着かないので、神様に内装を変えてもらったのです。
ベッドを敷布団に。
電気は少し暗めで、ろうそく風のオレンジ色の灯りにしてもらったり、お風呂はたぬき池を思い出させる石で囲まれた大自然の露天風呂風にしてもらいました。
注文ばかりで、逆に贅沢になってしまったのですが…
お風呂はとっても大きくて一番のお気に入りです。
一生の住まいが月に誕生しました。
幸せな狸は、トコトコと二番目にお気に入りの場所、寝室へ真っ直ぐ向かいます。
ドカン!と布団に横になると、早速本の封筒を破きました。
ルンルン気分で本を取り出すと、帯に《神狸のことすべて教えます》とデカデカ書いてありました。
「おぉ!!!最高ですね!教えてもらおうじゃないですか!」
1ページ、1ページじっくり読み進めます。
最初は、神狸の挨拶から始まり、直筆のサインが載せられたページ。
そして狸らしく好きな食べ物のことなど。
狸はみんな食いしん坊らしいな…
「ずいぶん食べ物のページが多いですね………ん?」
第二章に進むと《化けることは本当に出来る》と書いてありました。
「えぇ…それは知ってるのよ」
《人間に化けることは本当に難しい。かなりの修行期間を要するのだ。地球の狸が化けることが出来たなら、それは本当に凄いことだ。神になるくらい難関なことなのだから》
と書いてあります。
「むふふっ…そーなんですかぁ?」
なんだか嬉しくなってきました。
既に化けることが出来る自分は、神狸に似ているところがあるのかも!と感じたからです。
「ふむふむ…」
狸はどんどんたぬき全書に夢中になっていきました。
寺子屋での授業の準備など、頭の片隅にもありませんでした。




