ミルミーナ
私はその古文書の切れ端5枚を、
バーンおじさんが特に大切にしている書物コーナーにある、
彼の机からわかりやすい場所に細心の注意を持って仕込む。
さり気無く、あくまで自然な感じを演出するも、
目立つ絶妙なアピールが大切だwww
仕込んだ後、おじさんの机がやや荒れているのに気づく。
いろいろな書物が山積みになっている。
いつもきれいに整頓されている机が......
おじさんの性格から言って、このような事は全くない。
( 大丈夫かな?......)
かなり負担が掛かっているようだ。
私の父はシンプルな性格で、
軍略や戦術、武芸など興味のある事はとことん追求していくが、
内政はそこそこ、
それ以外の雑学や複雑な理論構築はすべておじさんに任せている。
ただ、良くも悪くも間違いなく脳が筋肉なので、
余計な事は一切考えない 。
方向性さえ決まってしまえば、
抜群の行動力を発揮してくれるはずだ。
パラパラとおじさんの見ていた書物を漁ると、
ハーブ・食事療法などが書かれている、
ラムスの医学書というタイトルが目に留まる。
「ふ〜ん。ハーブか……ミル姉の家に行ってみるかな? 」
と彼女の顔が浮かぶ。
「 ふぁ〜〜〜......」
ふと気付くとすごい眠い......
普段ならとっくに寝ている時間帯だ。
明日もお師匠の授業をこなしつつ、
母からの串焼き肉用アルバイトを、
1からしなければならない。
お疲れ様私、頑張ろう私―――
次の日、アハルの朝は早い。
ほとんどの人が日暮れと共に寝るが、
朝はめちゃくちゃ早い......
時計がないので、何とも言えないが、
体感的には大体3時ぐらいに起き、
4時ぐらいには外に出るイメージ。
ひんやりした湿気が肺に入り軽く咳込む。
東の水平線から微かに明らみ、
希望の始まりを告げると入り江の水鳥たちが「 バシャバシャ」と起きる。
続いて「 クワッ、クワッ」と朝の挨拶をし始め太陽が登ってくる頃。
起きてそれを眺めるのが、私の日課。
しかし......今日は違う。
「 眠い......バチくそ眠い......」
こないだ、つい相方の前で使ってしまい、
ちびっ子探検隊中心に港の子供達の間で、
流行ってしまった言葉。
しかも寝不足で目がブッ腫れ、酷い寝癖だとお師匠や相方達に笑われるwww
お師匠の訓練と授業が終わり、
母からのアルバイトもこなす。
その後、相方と弟と待ち合わせしてミル姉の家へ向かう時に言われた。
「 アブちゃん?何か私達に隠している?」
......たくさんあるwww
しかし誤魔化し進む、ちびっ子探検隊。
ミル姉は農家の娘。
彼女の両親が、野菜をアハル砦に納品している関係で、
父たちの生徒になっている、11歳。
ちなみに彼女のおばあちゃんは養蚕もしている。
我々ちびっ子探検隊は黒く熟した桑の実を求めて、
彼女の家についこの前まで、
連日入り浸っていたwww
3人とも口の周りと手を真っ黒にしながら、おばあちゃんにお茶を誘われて、
家の中へ踏み込むと、そこは別世界。
遮光していて少し薄暗い部屋。
「 シャワシャワ 」と雨が降っていると錯覚したが違う。
屋根裏に上がればおびただしい数の白い幼虫が葉を食べている。
その吐息と、大量の桑の葉が蒸れて異様な熱気と湿気。
それに加えて、葉の青くさい香りがムワッ〜っと充満......
その光景を見るたび、
相方は美少女が台無しの苦い顔となり、
その横で弟は恐怖で泣いていたwww
おばあちゃんは、何でも優しく色々な事を教えてくれる。
弟は甘えん坊なので、よく懐いていたw
話をミル姉に戻すと彼女はいい加減で、
見栄っ張りで、
がめつい性格を除けば、
すごい優秀な人材。
お師匠を見てしまっているので、
ついその他の人物を低く見てしまうが、
武芸も勉学も人並み以上だ。
当然、成人と共に危険はあるけど、
安定した高級職でもある、
父の軍への入団を切望するご両親。
当のミル姉は、口止めされているが軍には所属したくないらしい。
蚕の繭を買いに来る商人に「 設備が古い」、
「 色が悪い」と毎年買い叩かれる不遇を脱し、首都で洋服屋を開く野望を高説する。
しかし物事の本質を消して見逃さない、
相方のジト目が光った。
「 ミル姉はチャラチャラしたいだけの大都会に憧れる田舎の小娘っぽいよね? 」
と言われ本気で怒っていたのを思い出すwww
完熟した果実の甘酸っぱい香りで満ちていた桑の木の並木道は、
つい先日までの賑わいが嘘のように静まり返っていた。
「 アブ姉、一粒も無いね......」
食いしん坊の弟が悲しむ。
この世の終わりのような顔www
通り抜けた先に現れたのは、赤い屋根がちょこんと乗った、絵本に出てくるようなかわいらしい農家だ。
その時、家の前の庭で、面倒くさそうに生い茂った草をむしる少女の姿が目に入った。
湿った土の匂いと、
ちぎれた草の青臭い香りが辺りに漂っている。
「 おっす、ミル姉!」
カサリ、と彼女の手が止まった。土で汚れた顔を上げた少女は、こちらの姿を認めるなり、驚いた顔で声をあげた。
「 げっ!?……赤髪の小娘が来やがった......」




