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エバーレコードパーツ ピークアブー編 エバレコ  作者: 行雲 日千羽
太陽と陰の晩餐詩 〜激闘ギャンリック戦〜
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【 外伝 】第6話 青二才の拙い英雄譚

 【 古城北側の本陣 】


 一方、ジブラは苦戦し歯痒《はがゆ》さを覚えていた。


 若い兵卒が、ほぼ始めての実戦で舞い上がっていた所に、マデン方面からの盗賊の剣戟部隊が襲いかかって来たからだ。


 これは自身の作戦の失敗を意味している。


( くそう。オラの部隊じゃない事ぐらい、充分にわかっていたはずだぞ、ジブラ!

バーンが居なくてもやるんだ! )


 そこにドンの長男が現れ胸を張り、左手を腰に当て、右手を胸に掲げて敬礼する。


「 赤獅子の名の元に! 」―――




  ―――一方、その最前線のドンの次男の部隊。


 雲が恐ろしい速さで流れ、月光と暗雲の闇が激しく交差していた。


 突風が吹き荒れる中、至る所で剣戟の音が響き渡り、怒号と断末魔の叫びが巻き起こる。


「 押し返せぇぇーー!ギャンザックの剣戟部隊など、鉄壁の陣で押し返せぇぇー!!! 」


 しかし、次男は焦っていた。。。


( くそぉォォー!実戦は練習と違う......

わかっていたはずだ!

兵士が浮き足だっていやがる!

俺の指示が遅い!

連携が取れていない! )


 父親や兄と、この為の訓練に費やした時を思い、歯噛みする。


 阿吽の呼吸を意識しろ。鷹が上空から敵を掴み潰すイメージで戦線を組み立てろ!と様々な教えが、俺を攻め立てて来る......


 心が折れ、撤退の二文字が頭を掠め、それに魂が占有されていく。。。



 その時!?



 怪奇な叫び声が戦場に " こだま "する!


「 キィーキッキッキ 見つけたぜ!鉄壁の所の青二才があぁァァ〜!!!刻んでやる!

このギャンザック様がな!www 」




 その奇怪な声に気付けば、圧倒的な数の盗賊たちに囲まれていた。。。



 怯え縮こまる我が兵士たち。



 無理も無い......



 手配書をあまり見ない俺でも、覚えている凶悪で鳴らす有名な盗賊がチラホラいるからだ。


 ジリジリと下卑た怒号を上げ間合いを詰めてくる悪漢たちに、部下たちは、ビクつく以外の術を持てないでいる。。。



 弱気はいとも簡単に伝播するものだ。



( 俺はバカだった。。。 )



 俺たちは、血気盛んにジブラ様が布陣するはずだった西側の包囲部隊を志願する。


 腕組みをして修羅のような面持ちで断る彼に、何度も頼み込んで渋々了承してもらった。


 さっきまで、気の合う部下たちと肩を叩き合って湧き立っていたのを思いだす。


 兄貴の納得できていない顔が小気味良かった。


 褒めてくれる親父の顔を思い描き、俺の心は天にも上がる高揚感に包まれていた。


( みんなを認めさせたかった。俺より優秀な兄貴を追い抜きたかった! )



 そもそも英雄のジブラ様相手に何という言葉を吐いていたのだろう。。。


 百戦錬磨の猛将が拒み続けていた場所を無理矢理に。。。



 自身への怒りと、この事態に俺の心は萎んでいく―――




 ―――弱気な心は相手を傲慢《ごうまん》にさせる。



「 弱い。弱いぜ!鉄壁の二つ名なんて返上しろや!青二才が! www 」



( くそっ!くそっ!俺がジャバロン軍の名声を落としている...... )


 次々と悪鬼どもの餌食になっていく、我が同胞の姿に、気持ちが焦るばかりだった。


( やめろ!やめてくれ! )


 浮き足立つ自分に気付くも、制御不能になっている。



 目の前で槍を受けた兵士が、また1人俺の名前を呼びながら崩れ落ちた。


 いつも笑い合っていた相性の良い兵士の......


 俺と同じ日に結婚式を挙げ、同じく子供がもうすぐ......


( くそっ!俺は、俺って奴は!なんて馬鹿野郎だ! )


 次々と倒れ絶命していく仲間の姿を見る度に絶望感に襲われ、涙が頬を伝ってくる。。。



( くそっ!くそっ!くそっ!こんなに頑張っているのに。こんなに声を上げ、槍を振るっているのに! )



 そんな自分に苛立ちを隠せない。

 仲間を見渡す事も出来ず喚き散らしてしまう。



 勝ち目の無い戦いに突入せざるを得ない。悔しいが戦力が違いすぎる。。。

 


( おそらく俺はここで死ぬ。だが!だがよ! )



( だ、だれか助けてくれ!俺の仲間を!俺の兄弟を! )



......!?



( そうだよ。お、親父...... 親父なら...... どうするよ? )



 ......



 すると...... 脳裏に自身の父親の笑い声と、絶対絶命のピンチから生還したという武勇伝がこだまする。



 そして、父のいつもの口癖。。。



「 ピンチの時こそ、ワシの血が騒ぐ時じゃわい! 輝く時じゃわい!www 」



 ……親父。



 あんた、本当に馬鹿だったよ。


 でもよ。


 今なら少しだけ分かる気がするよ。


( やっぱり【 シェリー 】の言う通り、最高にイカしてるぜ!俺も妹からそう言われたい! )



( 自分から逃げたままじゃ、一生後悔するな...... 親父 )



 父親の無邪気な笑顔と、バカを言うセリフが俺を包み込む。


「 ププっ w 」


 俺の好きな親父だ。追いかけるべき男の顔だ!自由でわがままだけど最高にカッコいい俺の英雄だ!


 俺はその笑顔に更に吹き出しそうになるも、気付けば心を立て直していた。



 もしかしたら俺は半分、イカれ始めているのかも知れない。。。


( だが、何故か腹がくくれたぜ!ありがとう親父!頭がおかしいぐらいバカ言ってるのが俺たち親子だ )



「 兄弟たち!絶対に諦めるな!

円陣を組め!気合いを入れろ!

活路は絶対にある。俺たちは生き延びるぞ! 」


 

 そうだ!と互いに鼓舞し合う兵士たちに僅かな闘志が立ち上がった。



 投降寸前の兵士たちまでも立て直し、鉄壁の円陣が築かれる!



 正に背水の陣にも似た、最後の戦いだ!


 

 その様子に苛立ちを隠せない4本剣のギャンザック!


「 生意気に、立て直しやがって...... ムカつくぜ!お前らやっちまえだギャャああぁァァ〜! 」


 呼応するように気合いを入れ直す盗賊幹部の面々。


「 腰抜けの青二才の部隊を蹂躙《じゅうりん》してやれお前らァァ〜!うおおぉォォ〜〜!」



 盗賊たちは、下卑た怒号を張り上げ少なくなった兵士たちに襲いかかる。



 しかし、傲慢《ごうまん》は緊張感を止め、油断を蔓延《まんえん》させる。油断は相手をみくびり判断力を鈍らせ、全力を出せないのが常だ。


( へへっ!数日前のピエー様からの受け売りだ。)


「 臆するな!我らには女神フレイ様と、偉大な5人の猛将が後ろに控えている!それに恥じない戦いをしようぜぇー! 」



「 おおぉォォーー! 」



 数に酔いしれ舐めてかかる盗賊たちの骸《むくろ》が円陣の外に積み上がる!



 こちらの士気がどん底から這《は》い上がり、敵の動きが明らかに鈍くなっているようだ。



 !?...... 自ら前に出て来やがったか!


 

 敵大将はこの戦場の機微を察していやがるようだ。


「 ギャ〜キャキャキャ〜 www やるじゃないギャ!俺様が相手してやる! 」


 奴は4本の剣を曲芸の様にクルクル回しながら無防備に歩いてくる。


 盗賊たちに歓喜の怒号が立ち上がり我々に動揺が広がっていく。



 これはいかんと俺も仲間たちを鼓舞する。



「 やってやる!4本腕の化け物が! 」


 我こそはとばかりに勇敢な兵士が挑むも、あっという間に10人以上が斬り伏せられトドメを刺されていく。。。



「 や、やめろぉォォ〜〜!ギャンザックぅゥゥー! 」



 奴は視点をクルりと回すと、大きく見開き、サメのような歯を見せ長い舌で剣を舐めて笑い出した。


「 ギャ〜キャキャキャ〜 www

だから青二才だっていうんだギャ!

手足を切り取って芋虫にしてから、

お前の兵士たちが惨殺されていくのを見せてやる! 」


「 やれるものなら、やってみやがれぇぇー! 」


 もうやるしかない―――




 ―――その頃、古城北西の戦線の端で黒い人影が宙を舞った。



次の瞬間!?骨が砕ける鈍い音が夜空に響く!



 土煙が月夜に立ち上がる。乾いた砂が1人の盗賊の頰《ほお》に当たった。



「 嘘だろ...... 無理だぜ...... 勝てない。勝てっこない...... 」


 盗賊の1人が呟く。


 その場にいた悪漢たち誰もが、そう悟っていた。

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