第26話 赤髪の戦乙女アブー
勢いと思いつきだけで駆け抜けた
5か月間でしたが、振り返ってみれば
私の大切な思い出の1ページになっていました。
本当に楽しかった!
読んで頂いた、皆さん本当に感謝いたします!
再び、自身と向き合い頑張ります!それでは!
今日も希望の一日の始まりを告げる太陽が、
入江から眩しい光を放ち始めた。
朝のあいさつをしながら、
すっかり飛ぶのが上手になった若鳥たちを連れ、水鳥たちがキレイな編隊を組み、
北の暖かい地へと、続く長い旅路へ飛び去って行く。
少し寂しい気持ちになる。
西町への坂道では、オリーブの摘み取りが始まり、搾りたての果実から立ち上がる、
鼻を抜けるような若草の鮮烈な香りが砦にも漂う。
近くの小さな漁港では、たくさんの脂の乗った新鮮な魚が水揚げされ「 ピチピチ 」と跳ねている。
普段は、酒ばかり飲んでいる老漁師までもが、活気ある声を上げ、笑顔でそれをさばいては、干し網にキレイに並べていた。
こちらの西側の港町では、流通真っ盛りの新小麦が、黄金色の芳醇な香りを放ち牛馬車に積まれていく。
そんなアハルの季節の移り変わりが広がる中、
父たちが、昨日ようやく長い討伐の旅から無事に帰ってきた。
そして、今日は私と相方の6歳の誕生日。
そんなこんなで、訓練と座学はないとの事。
久しぶりの3人だけの朝ごはん。
「 わざと合わせて帰って来たわけじゃ無いぞ www 」と相変わらず、空気の読めない一言に盛大にツッコミを入れる母と私。
赤い頭を「 ぽりぽり 」と掻き、笑ってごまかそうとする、かわいい父。
アットホームな3人の日常が戻ってきた。
「 今日は収穫祭と遠征の祝宴とアブーの誕生日だ!楽しもうぜ! 」
決してイケメンでは無い父が、唯一カッコいい顔で微笑む。
私の大好きな父の顔。
母のキレイな潤んだ大きな目も、
すっかりハートマークだ!
「 おっと忘れてた!アブーは父さんたちの布団を干しとけよ! www 」
「 ぐぬぬ w 」
そんな私たちを右手こぶしで口を隠し、
少女の様なニコニコの顔でクスクスと笑う。
私の大好きな母の顔。
昨日は、3人で父を中央に美女が両側に寄り添い、『 赤獅子ジャバロン物語 』を聞きながら寝る事に。
どうやら、興奮して『 おねしょ 』をしてしまったようだ www
ふとんを干しに中庭に出ると、相方と弟が布団を干している。
どうやら、興奮していたらしい。
それはそのはず、
相方は昨晩【 ピエー様 】と一緒に寝るとダダをこねた上に、
蒼天の戦乙女をハの字眉の困り顔にさせる。
挙げ句の果てに、彼女の配下になると、言い出す始末。
( おぬしの父は、敬称こそ付けて呼ばれぬが、No.2の偉い人なんだぞ www )
ピエー様は、小刻みに肩を振るわせ、
お腹を抱え「 ケラケラ 」と涙を流しながら、笑い転げる。
そして、討伐中に装備から取れてしまった、
大きなトルコ石を取り出すと言う。
「 大人になって、『 覚悟 』があるなら是非来てくれ www 」と笑いながら言うと、
自身の思い出の詰まった宝物を相方に渡す。
この時の相方のキラキラしたハートマークになった目を、私は一生忘れないだろう。
そんな姉を見ていた、こっちの弟も
ポケットから、折れた角を得意気に見せてくる。
これは、討伐の戦闘中折れてしまった、
【 猛牛のジブラ 】の兜の大角の先端らしい。
( まぁ、おぬしらは、まずは私ぐらいに、『 おねしょ 』の回数を減らすんだな! www )―――
―――アハルの港町は、すでに活気ある掛け声が飛び交う出店が立ち並び、
お祭り騒ぎになっていた。
そんな中、アリーのスパイシーな香り漂う帆船が丁度、寄港していて、
さらに町の喧騒の賑わいに華を添えている。
「 やあ!アブーちゃん!元気だったかい?
新物のスパイスを満載にして持って来たよ!
我が親友のジャバロン父さんは、いるかな? 」
私は、流暢なラハビア語で家にいると言うと、「 ほう!その年で偉いね! 」と、
心にも無さそうな世辞の言葉を並べ、
細身な身体で、身軽に砦への長い階段を駆け上がっていく。
( そんな、時を駆ける商売人の心意気、
決して嫌いでは無い w )
なんて思いつつ、待ち合わせ場所へ急ごうとする。
「 おいそこの、おてんばチビすけ!元気だったか? 」
「 おおう! 」
( この声は!ゴツいデコボコ親方コンビ! )
金髪の大男ライハーンと、愛しのデミル君までも現れる!
私が「 どうしたんだ? 」と聞くと、
昨晩、アハルからの早馬が家に来たらしい。
なんでも女盗賊の報奨金と、溜まったツケを一気に払ってくれると、
ライハーンは、大樽を叩いたような声で吠える。
その後、工房関係者がゾロゾロ現れた。
一様に、私に話し掛けてくるが、何を言っているのかわからない。
( 私は聖徳太子では無い www )
大きな子犬のような子供たちに
囲まれ、喜ぶ私に、
ライハーンが ( ニカッ ) と似合わない笑顔で吠える。
「 おう、忘れてた!これを見な! 」
見れば、精密な揚水水車システムの図面と見積り書!
そして、ライハーンは再び吠える。
「 まぁ、バーンが金をたんまり弾んでくれればの話だけどよぅ〜 www 」
豪快な奥様に尻を「 ペシリ 」と叩かれ、
砦への階段を登って行く、工房の御一行。
( 前世での旅行なら、大型バスをチャーターしないといけないな www )
この頃、疫病はすっかり鎮静化し、
東側の港町では、建築に携わる職人達の放つ作業音があちらこちらから鳴り響く。
ドン爺とパパっ子さんのシェリ姉が、
喜び飛び跳ねる仲の良い姿。
ちなみに未だ、長い三つ編みのひげは、流行ってはいない w
そして、牛より大きいジブラに肩車をされ、少し恥ずかしそうな、
ぽっちゃり系お姉さんのオウカのほんわか、心弾む光景。
さらに、新たに建設される市場の現場で、
15銀貨になった羊皮紙の図面を片手に、
大工の親方たちと話し込むバーンおじさん。
遠征から帰ってきたばかりだと言うのに、
本当に頭が下がる頑張り屋さんだ。
そして、東港の門に立つ、
さらに背が伸びた、淡い栗色のふんわりヘアーが目立つ一人のイケメン。
「 そう...... マイダーリンだ!www 」
未だに、左腕の当て木と麻布の包帯が痛々しいけど、ダーリンが爽やかな顔で微笑みを浮かべる。
「 アブー!だから、そのマイダーリンって、どういう意味なんだ? www
『 アブ語 』は、わからないんだよなぁ 」
東町の街並みに溶け込む、
美女とイケメンの睦まじい姿。
二人は時折顔を見合わせ、
ゆったりとデートを楽しんでいる。
( 何事も具現化させるにはイメージが大切だ www )
それを妄想しながら、あの衝撃の芳醇な香りを放つ、
お目当ての串焼き肉屋に着く。
私は少し偉そうに咳払いをすると、
踏ん反り、見下ろすような視線で、
横柄な演出をしながら店主に話しかける。
「 ちみちみ!今日は砦で祝宴が行われるのだよ!
そこでだが、出張シェフを頼まれてくれまいかね? 」
店主に ( ぽかん )とした顔をされ、
ダーリンにその喋り方はやめろと笑われ、
活気ある東の町にこだまする。
〜 再び、広がりを見せる発展の息吹が 〜
〜 さらに成長を続けるアハルの町に 〜
〜 海がもたらす豊かな実りを 〜
〜 後押しする優しい風が吹く 〜
少しは、私の秘めている知識も役に立っているようだ―――
―――そう、私には前世での記憶がある。
日本のサラリーマンで、
建設業の監督をしていた、
今夜、6歳になる赤髪の小娘。
ちびっ子探検隊の隊長で、
偉大な父【 赤獅子ジャバロン 】の一人娘。
そして【 赤髪の戦乙女アブー 】と呼ばれ、
皆から讃えられる英雄になる女だ!www




