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第2話 アハル

( ここは......どこ? )


 起きて薄目を開けると、抱かれ揺れながら、賑わいの中どこかに進んでいた。


 秋の風が街路の落葉樹を優しく撫で、赤や黄色に染まった葉が、美しく舞い落ちてくる。


 一日の終わりを告げる、琥珀色こはくいろの日差しが南に連なる山々を優しく照らしていた。


 それは、季節を謳歌するように鮮やかな影を落とし、

 温かな、そして少し切ない茜色あかねいろの情景を作り出している。


 刈り取られた小麦畑と流通し始めたそれが、

 町全体を豊かな黄金色の実りの匂いで包み込み、荷運びたちの喧騒が鳴り響く。


 この時期、冬への支度が始まり、鹿や山羊の肉を塩漬けにする作業。


 露店から漂う、香ばしい匂いが ( ふわり ) と風に乗って、通行人の足が自然と止まる。


「 ジュウ、ジュウ 」と音を立てて焼ける肉。

 その芳醇な、たまらない香りに思わず喉を鳴らし、店主に声を掛ける人々。


 赤黄金あかこがねに染まった町並みの中で、広場では人々が、さらに集まっている。


 麦穂の輪冠を被った多くの男女が笑みを輝かせ、互いの手を取り合い踊る姿。


 祭りの喧騒が沸き立ち、太鼓の響きと笑い声が混じり合う。


 かがり火が夜空を染め始める―――




 ―――川辺の一際大きな建物の石畳の中庭に来た。


 ここでもたくさんの人々が沸き立ち、祝宴が繰り広げられている。


 そこに到着し中央に立った2人の男。


 まず、この男は 【 ジャバロン 】

 この地域を治める若き族長職らしい。


 赤髪の鍛え上げられた強靭な体に、喜びで歪んだ顔。

 目尻が下がりっぱなしのだらしない笑みで私を見ている。


( ちなみにいつもこの顔で話しかけてくる www

もう一人同じ顔の白髪頭の老人も数日間いた。)


 今回も周囲に腹を抱えて大笑いされているようだ。


 めっぽう強いが、少しおっちょこちょいの、ユーモアを絶やさない面白い男らしい。


 次にこちらは【 バーン 】と呼ばれる男。

 幼い頃から族長となった男を支える、

 冷静沈着な『 千手 』の二つ名を持つ天才軍師との声が掛かる。

 

 道中で、度々私をのぞいていた、この男。


 青みがかった濡れ羽色の長い黒髪を、秋風になびかせ立っていた。


 その穏やかな優しい微笑みで、手元を愛おしげに見つめ、度々、何かをささやいている。


 そんな男たちの逞しい腕に私たちは抱かれていた。



 そう...... 私と相方である。



 ちなみに、私たちの母親は美しい双子だった。


 父と母は結婚直後に色々あったらしいが、そんなことを知る由もなく私は無事生まれる。


 二人の前には、収穫祭と私たちの誕生を祝う料理が並ぶ。


( まぁ正確には、もうちょっと前に生まれているけどね www

12月生まれが誕生日と、クリスマスを一緒に祝うようなものだ! )


 大勢の男女が嬉しそうに湧き立ち、青年たちも麦穂の冠で頭を飾り、

 手を取り合い楽しげに歌いながら踊っている。


 子どもたちは「 キャッキャ 」と駆け回り、花を摘んで赤子に近づけたり、

 互いに追いかけっこしたりして、はしゃぐ姿がとてもかわいい。


 それは祝いの場を、ますます盛り上げ、弾けるような心踊る一枚の光景―――




 ―――赤ん坊の頃に感じていた異差を歩けるようになると埋めていく。


 前世の世界とは、年代も場所も違う。


 もちろん、わからない振りをしているが、大人たちの会話からわかる。


 人口約一万人の【 サロス 】という名の中規模の中継商業都市らしい。


 生活する敷地内には、かなり大きな練兵場がある。


 大人だけでなく、10歳くらいの子供たちも、様々な武器で激しく稽古していた。


 弓の練習場もあるが、どうやら飛び道具は矢だけのようす。


 相当に古い時代なのだろう。


 見つかるといつも怒られるので、いつもそっと入り口からのぞいていた。


 その中で、1人が抜群に輝いている!


 すごい動きをする、淡い栗色の髪の少年。


 いつも、とても気になっていた。


 少しカッコいいイケメンなのもある www


 ちなみに、ここは父たちが元々住んでいた場所ではないらしい。


 異国などの書物がたくさん保管された大きな書庫もある。


 天才軍師のバーンおじさんは、

 それらを使い、十代の子供たちに教育を施していた―――


 


 ―――そう……私は普通の赤ん坊では無い。


 私には前世の記憶がある。


 日本のサラリーマンで、建設業の監督をしていた。


 家族や人生のことも覚えている。


 だが、少し違和感を感じていた。


 どのように死んだのか?


 他にも大切な事がたくさんあったはずなのに、

 頭にもやがかかっていて、どうにも思い出せない。


 ただ、決して忘れてはいけない物だと、強く感じていた―――




 ―――そしてその年の私が3歳の時。


 サロスの町から北西にある【 アハル 】という、人口千人しかいない田舎の港町に引っ越すことになる。


 なんでも、神話の時代に築かれた軍港だったとか、そうでは無いとか、その見解は多種多様だった。


( まぁ、歴史なんてそんなものかもね! )


 度重なる反乱や戦乱で荒れ果て、戦略的意味を失い、いつからか忘れさられていた古き遺跡。


 港は泥で埋没化シルティングが進み、大型船が入りにくくなったために廃港となっている。


 そこから階段をかなり上がった、半壊した砦が、私の新しい家となった。


 私と同じ日に生まれた、青みがかった濡れ羽色の美しい髪の相方は、『 お化け屋敷 』だとひどく嫌がる。


 次の年に生まれた一つ下の相方の弟は、夜な夜な『 ギャン泣き 』していた www


 おそらくだが、ピリリとスパイスの効いた意地悪を言う相方が、怖い話をしていたのだろう w


 私たちに仲良くしてくれる大人の兵士たちも、日々の改修作業に陰口を叩く。


 だが、なんとなく私は、この『 オンボロの砦 』を気に入っていた。


 それは、半壊した砦の防壁の上に立つと、よくわかる。



 東に広がる入江に朝日が昇り、淡く金色に煌めきが広がっていく。



 潮風が運ぶ塩の香りとともに、無数の鳥たちが岸辺から飛び立つ。



 いつも、心を躍らせていた......



 振り返れば、西に穏やかな海が広がる。



 そこに太陽がゆっくり沈み、いつも水面を深紅に染め上げていた。



 その、幻想的な美しさに深い感動を覚える。



 そして夜には前世ではほとんど見る機会のなかった、満天の星々と銀盤のような月が織りなす壮大な夜空。



 心を、たびたび奪われる......



 そして、この海や夜空を見る度に、何故か涙が溢れて止まらない。



 まるでこの廃墟だった港が、何かと繋がっているような。。。



 そんな感覚を覚える、私の大好きな場所になっていった―――




 ―――5歳になると、私と相方には家庭教師がつく。


 あの、すごい動きの淡い栗色の髪の少年だ。


 この世界では15歳で成人になるため、正確には少年ではなく、大人。

 先生でもあり、お師匠でもある。


 本当に純粋に、凄いと思わざるを得ない。


 【 お師匠 】は、あの腹部に温かみを感じ、

 躍動感に心が跳ね上がる感覚。


 を自在に使いこなすのだ!

オレンジ色の山々を差す日差しを『 琥珀色 』に、

収穫祭を祝う、踊る人々の情景を『 茜色 』、

オレンジ色の町並みを 『 赤黄金あかこがね』に変更。


祖父シャルークの一文と、

前世の記憶を持ち、話せなくても、いろいろ思考している一人称での文章に置き換えました。

R8.3/28 行雲 日千羽


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