大切なもの
皆さんは、親子喧嘩は何歳くらいでされたか覚えてますか?
私は、反抗期になった10歳くらいですかね?www
些細なことで、お互いの生活時間帯のすれ違いもあり、しばらく、くだらない意地を張っておりましたwww
そんな少し思い出も混ぜつつ描いてみました。
楽しんでいただけたらうれしいです。
社会科見学という名の出張。
( 疲れた......)
うらぶれ、すさんだ心を引きずって
前世のサラリーマンのように帰宅した私。
しかし休む暇がない......
最近は、軍師ミリアの助けもあり、
圧倒的有利な戦況にある私だが、
どんな風に我が宿敵と戦うか作戦を練っていた......
しかし扉を開けると、あの香りが漂ってくる......
「 こ、これは!?......」
台所のドアを足早に開けた......
我が軍師ミリアが、
ニコニコの少女のような笑顔で、
私をお迎えしてくれる。
私はキッチンから漂う匂いと
一生懸命に調理をしている宿敵の動きを
訝しげに注視していた。
( それにしても良い匂いだ!
片時も忘れた事なんて無い!......)
芳醇な汁が滴る度に火が燃え上がり、
「 ジュー、ジュー」と私の心を踊らせる音を立てて、それは誘っている。
アハルの出店には無い香りが漂う。
「 こ、これは......アリーのスパイスだね......」
母がテーブルに肘を立て、
指を交互に組んで、
その上にアゴを乗せこちらを
キラキラ大きな瞳を潤ませ、
ニコニコ笑顔で見てくる。
そして、ふんわり漂う調味料と、
重厚で濃密なこんがり焼けたその香りは、
やはり「 食べて〜」と、
私を誘惑しているのだろう。
自然と瞳が潤んでくる......
母はそんな私を見て、
更にクスクスと少女みたいな顔で笑う。
「 ぬ?なんだ......?この匂い......なぜか知っている?」
すると、我が宿敵が大きな平皿に
白いホクホクてんこ盛りに盛ってある
料理を持って来て言う。
「 おかえりアブー......
これはラハビアで作られている
お米と言う食べ物だ」
私はしかめっ面をしながらも、
内心では、一気に心を弾ませる。
( お、お米ですと!?......
日本人が愛してやまない、
永遠の白い恋人......お米ですか?)
一粒一粒が真珠のような光沢を放ち、
眩いばかりの純白が目に刺さるそれは、
夢にまで出てきた炭水化物の王の姿。
立ち昇る湯気と共に、
炊きたて特有の甘く、
懐かしい穀物の香りが鼻腔をくすぐる。
すり減り、極限まで空腹を感じている私の胃袋を
刺激する暴力的なまでの芳香だ。
ここで、奴の目は笑っていないが、
出来る限りのニコッとかわいい顔で、
人差し指を立て、ちょっと待ての合図。
台所へ急いで入って行きメインディッシュを持って来る。
なんども紹介するが、
イノシン酸と言う旨みの豪華なマントをまとった、
タンパク質の王様。
みんな大好き、アブーも大好き、くし焼き肉だ。
しかし......父がもじもじと、
その逞しい体躯に似合わない仕草をしている。
そう......まだ終わっていない。
我々の戦いは!
そして父は、その大きな体を、
しょんぼりと窄ませて
ハの字になった眉の間に深いしわを刻み、
うなずきながら、
申し訳なさそうな瞳を床に落とした。
下唇を無意識に突き出し、
かすかに震わせながら、
ようやく言葉を絞り出す。
「アブーがいつか港で、
足を止めておねだりしてたやつだ……!
仲直りしたくて、買って来たんだ……」
父の声はいつもより一オクターブ低く、
喉の奥で詰まるように震えている。
無意識のうちに私の握りこぶしに力が入った。
( 頑張れ父さん......)
かわいい愛する男が頑張る。
「 父さん、ケンカになってる間、
ずっと……心が痛かったんだ。
こんなの嫌だ!って……な!
だから……どうか……」
ここで私は、
今にも泣き出しそうな父の顔を見ていられなく
なり、
左手をゆっくり前に上げて、
その言葉を遮る。
ふと、ドン爺に生意気な口を叩いたり、
バーンおじさんの歌で諭されたのを思い出し、
今回の一連の自身の矮小な振る舞いが恥ずかしく
なっていた。
しかし!......逃げるな私。
この場を収められるのは私のみ。
ゆっくりと深呼吸をすると、
両方の頬を「 ビシッ、ビシッ」と叩く。
赤髪の小さな戦乙女は、
ガタっと椅子から立ち上がり、
左手を腰に当て、右手の拳を胸に掲げ、
胸を張り顔をやや上に向け微笑む。
しかし涙も自然と溢れ頬を優しく撫でる。
( 仕方ない......嬉しい時......ほっとした時......
人は泣く)アブを
このポーズはジャバロン軍の敬礼の型であり、
いつも母が語ってくれていた、
伝説の戦乙女フレイが、
悪魔王ワグナスを倒した後の、
最後のワンシーンでもある。
ただ、今の私は戦乙女にしては、
いささか格好がつかない顔かもしれない。
( 泣いちゃっているし、鼻水ジュルジュルだしな
www)
しかし私は、女神となり天界に上がる
戦乙女フレイの最後のワンシーンでもある美しい
微笑みを精一杯に作って言う。
「 父さん!私も悪かったよ!ごめんね......
私もずっ〜と、心が痛かった!
本当にごめんね!心が小さい小娘だったよ!
赤獅子ジャバロンの娘なのにさ......」
父は目線を落とし俯いたまま、
少し泣き出しそうな、
そして少し嬉しそうでもある、
そんな複雑な顔をして、
何度も頷きながら精一杯の安堵の声を何とか絞り
出した。
「 お、おう......」
こうして、我々はこの世で一番絆の強い、
世界で一番仲の良い家族へ戻っていくことになる......
食べ終わる頃には元通りの笑顔で、
全世界を震撼させた大戦なんて一切感じさせ
ない、
笑顔で笑い合うアットホームな家族。
よくよく考えてみれば、
なんであんな小さなことで、
ここまで大喧嘩をしていたのだろうと思わざる
得ないw
「 白い米、串焼き肉も、美味しいよ!
父よありがと、幸せ家族」女神アブ子。
父が「 何だよ、それは!www」と、
すっかり陽気ないつもの父に戻り笑い、
母はそんな私達を見て右手こぶしで口を隠し、
少女の様なニコニコの顔でクスクスと笑う。
( 良かったよ......)
そもそも、家族の間で一人が勝った負けたなんて
無かった。
あるわけが無い......
あるとしたら、仲の良い家族......
これが【 真の勝利 】なんだろう―――
―――次の日の朝、父の思い出の詰まった
大切に飾っていた宝物、
木剣( ぼっけん丸 )を何故かもらった。
泡立たしくなる砦の広場と戦人の顔になるアハル
の兵士たち。
そして更に次の日、父とバーンおじさんは、
ドン爺と共に商業都市《 サロス 》の更に
南側にある山脈を根城にしている、
賞金首の山賊 【 ギョロ目のギャンリック 】の
討伐遠征に出陣する。




