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【第二章 第二話 小事件勃発 ― 力の目覚め】

第二章から ちょと話を頑張って長めに書いてみました。

色々な方々から見ていただいてますので何でもいいので感想なんかを書いていただけたら大変うれしく思います。

村の朝は、いつもよりざわついていた。


畑の前で集まる村人たちの顔には、

言いようのない不安の影が宿っている。


誠人もその輪に加わり、麦の列を眺めた。


茎が折れ、まるで何かに踏み荒らされたような痕跡がある。


「獣か?」


誠人が呟くと、近くの老人が苦い顔で首を振った。


「いや、足跡は見つからん。夜の見回りでも気配はなかった」


小さな妖精がふわりと肩に降り立った。


リル……


いや、『リルファニエル・クルサティオス・ヴェルディアナ・セリフィアント・オルマグナティウス・フィルカリエル・アストラルヴェニオ・カリステルノヴァ・エルファニクシア・ボルディアントゥス・ミラセフィリア・ルミナスティオ』である。


「なー…長っ! リルでいいか」


リルは口元に指を当てて微笑む。


「そう?、名前簡単でしょ?

希少種族だから多少長いのは仕方ないし。

子供のころから呼ばれていたのよ。」


「簡単?この世界の価値観はよく分らん。」


と朝からどうでもいい絡みが終わったところで、

改めて誠人はリルを見た。


「君はこの村の妖精って訳じゃないんだよな?」


「うんそうよ。あなたと前世で一緒に戦った、

この世界でも希少な魔法使いの一人。

あなたの師匠であり、相棒でもある」


誠人は改めて考える。


前世の断片が、薄暗い記憶の奥で微かにチラつく。


昼を過ぎた頃、さらに騒ぎが起きた。


飼っていた山羊が突然暴れ出し、家を突き壊そうとする。


普段は温厚な動物が、

目を赤く光らせ、涎を垂らしながら暴走している。


村人たちは必死で縄をかけるが、全く抑えきれなかった。


「危ない!」


子供の一人が突き飛ばされ、転んだ。


その瞬間、誠人の体が勝手に動いていた。


気づけば山羊の前に立ちふさがり、掌を突き出していた。


次の瞬間、誠人の手から光が溢れ出し、

圧縮された空気が爆ぜ、

山羊はまるで透明な壁に叩きつけられたかのように地面へ倒れ込む。


そして意識を失い、静かになった。


周囲の空気が凍りつく。誠人自身も驚き、震える掌を見つめた。


「……俺、今、何を……?」


リルは眉をひそめる、しかし小さく頷く。


「やっぱり……

あなたの中に眠っている力、

転生を経て、さらに強力なものになっているわ。」


その言葉の意味を完全には理解できない。


だが、確かに自分の中で何かが震えているのを感じた。


心臓の鼓動がやけに力強く響き、

血管を流れるものがただの血液ではないかのように熱を帯びている。


その晩、村の広場で再び騒ぎが起きた。


今度は森から現れた「黒い影」が家々の間を這い回り、

子供を狙うように近づいてくる。


正体は分からない。


獣とも人ともつかぬ、不気味な影の塊だ。


村人たちは逃げ惑い、恐怖の声を上げた。


「誠人!」


リルの声が鋭く響く。


迷う時間はなかった。


誠人は影の前に立つと、無意識に深く息を吸った。


視界が赤黒く染まる。


日本で見た夕焼け……

いや、もっと前、知らない戦場での血煙の光景が重なった。


胸の奥から力が噴き出す。


「……来い!」


拳を振り下ろした瞬間、

大地が唸りを上げ、

光の奔流が広場を駆け抜けた。


影は悲鳴を上げる間もなく霧散し、夜空へと消え去った。


静寂が訪れる。


村人たちは呆然と誠人を見つめる。


誰も言葉を発せない。


リルだけが、わずかに笑った。


「流石ね……それが本来のあなたの姿。

前世で魔王に立ち向かい、仲間を導いた者の力」


誠人は拳を見下ろし、思わず苦笑した。


「……チートじゃん、これ。普通の人間が使う力じゃない」


リルは肩にふわりと飛び乗り、

誠人の視線に合わせて軽く手を振った。


「でも、これがあなたの宿命。

かつての力は戻ってきてる。

でも、制御はまだ完璧じゃない。

だからこそ、今後どう動くかはあなた次第」


夜空には満月が昇り、静かに村を照らしていた。


そして誠人の胸の奥では、力が確実に目覚めつつあった。


「……この力の向かう先か――」


誠人の意志とは裏腹に進んでいく状況。


その先に待つのは、魔王との再戦。


そして、封印された前世の記憶のすべて――。

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