招かざる客
「ちょっとまて、次は13階層か?」
最後の『岩転がし』を討伐した勢いのまま次の階層に進もうとしていた『破壊者』が急に立ち止まり、遠藤さんに声をかけていた。
「ええ、そうですね」
「そうか、もしかしたら『招かれざる客』かもしれない」
「その可能性がありましたか」
話し合う2人についていけない私たちを代表して田中さんが質問してくれた。
「その『招かざる客』とは?」
「出ることが決まったわけではないのですが、13階層によく出てくるモンスターの名前です。特殊型には位置しますが、今まで13階層にしか現れていないので、『13階層の招かれざる客』と呼ばれているモンスターになります」
「強いんですか?」
「強いですよ。基本1体しか出てきませんが、倒すたびに後ろに現れ強くなって帰ってくるので、一部では『13階層のホラー』と呼ばれています」
あまりに不吉なあだ名に及び腰になってしまうが、遠藤さんの話は続く。
「必ず後ろに現れ、追ってきますから見失わないように逃げ回り、次の階層にたどり着ければいいだけなので攻略は難しくはないですよ。まだ次の階層で出てくるとは確定してないのでそんなに怯えなくても大丈夫ですよ」
物語ならばこのような説明の後に必ず出てくるのだが、さすがに現実にまでそんな法則が当てはまるわけがないと心を落ち着かせて13階層へと潜ることにした。
13階層に到着して、最初の角を曲がった時にそれは現れた。
「やはり『招かれざる客』ですね」
先ほど曲がった角から現れたのは、顔が水膨れによりぱんぱんに腫らした身長2m越えの両手に斧を持った大男だった。
その大男がうめき声を出しながらなかなかの速度で走ってくるので今すぐにでも攻撃を加えるか、逃げ出したくなってしまう。
「速度を合わせて走ってください」
『破壊者』と遠藤さんが交互に追い越しては後ろを振り向き必ず『招かれざる客』を視界から外さないようにしていた。
「次のを左です。」
「俺が殿に着く」
「お願いします」
『破壊者』は私たちをやり過ごすと、『招かれざる客』を引き付けて攻撃が届かないギリギリの場所でバックステップにて下がり、『招かれざる客』が遠藤さんの視界に入るまで誘導してから振り向き、また先頭へと出て、遠藤さんと交代する。
このように何とか視界に収めたまま何とか進んでいたのだが、一度だけ見失ってしまう。
角を曲がり今度は遠藤さんが殿に着いたときにそれは起きた。
「あ」
遠藤さんの慌てたような声が聞こえて、全員殿に着いている遠藤さんの方に視線を向けてしまった。
本当であれば角から見えてなければならない『招かれざる客』が見えず、慌てた遠藤さんが戻って位置を確認しようとしたところ、進行方向から爆発する音が聞こえてきた。
「すまん。倒してしまった」
音に驚き進行方向に全員の目線が向いたのが良かったのか、『招かれざる客』が後方から現れた。
今度はハルバートが握られており、先ほどより引き付けて逃げるのが厳しくなったが、何とか14階層への階段を視界に収める地点まで来れた。
「そのまま彼の事は無視して次の階層へ向かってください」
遠藤さんが殿に着き急かしてくるので、この階層でも休憩らしい休憩を取らずに次の階層へ潜ることになった。




