モンスター?レスラー?
モンスターに勝ったのがよほどうれしかったのか遠藤さんは両手でガッツポーズをとったまま勝利の余韻に浸っていた。
「それで?何があったんだ?」
「よくわからないんですが、この階層に到達したときに待ち構えていたモンスターを見た瞬間に遠藤さんが武器を捨てて素手で挑んで今このような状態です」
「は?状態異常でも食らったのか?」
「それはないかと。モンスターも素手でしたから」
眉をひそめた『破壊者』だが、あることに気が付いて興奮気味に両手で田中さんの肩をつかみまくし立ててきた。
「まさか、ここで出たモンスターっていうのは『ライアン・クレイジー』が出たのか」
「ま、待ってください。その『ライアン・クレイジー』ってなんですか」
「お前『ライアン・クレイジー』も知らないのかよ」
「知りません。そんなに揺らさないで」
「『ライアン・クレイジー』でしたよ。お先に勝たせていただきました」
すごくいい笑顔の遠藤さんが田中さんを前後に揺らしている『破壊者』の手を止めて話しかけると、『破壊者』が笑い出した。
「このダンジョン最高じゃないか。次は俺だからな」
ひとしきり笑い終わると遠藤さんを指さし宣言すると、いきなり服を脱ぎだして上半身裸になった。
「よし、ついてこい」
テンションが高い『破壊者』の後についていきながら、遠藤さんにモンスターの説明をしてもらった。
「先ほど私が戦ったのは、特殊型20種の『ライアン・クレイジー』です。このモンスターはこちらに合わせて戦ってくれる特殊なモンスターで、銃撃した場合銃弾の速度に合わせて『ライアン・クレイジー』の速度も上がるので、戦うなら素手か刃物で戦わないと勝てなくなります」
説明を受けていると、『破壊者』が『ライアン・クレイジー』と戦い始めた。
「魔法系統や、レーザー銃関連はそもそも聴きませんので、出会ったら格闘戦を挑む方がいいですよ。さっきも言った通り、このモンスターは私たちの強さに合わせて戦ってくれるなどエンタメをわかっています。だからこそ、ライオンマスクのレスラー『ライアン・クレイジー』の名前をもらっているのです」
『破壊者』と『ライアン・クレイジー』の戦いの中続く説明は、後半に大技が出るたびに声に熱が入ってきた。
「それなら、私たちでも倒せる?」
「一般人でも『ライアン・クレイジー』を満足させれば先ほどみたいに自分から首を差し出してきますからね。日本ではそんなにいませんが、ほかの国では『ライアン・クレイジー』と戦うためだけにダンジョンに潜ってる人もいるくらいですから」
最後に『ライアン・クレイジー』の胸をこぶしで貫き、雄たけびを上げて勝ちを喜んでいる『破壊者』に田中さんが声をかけた。
「次、私がやってもいいですか?」
「やってみるといい」
勝てたことで気分がいいのかすごくいい笑顔で返してきた。
「主はやらないのかい?」
「私はいいですよ。見てる方が楽しいので宇」
Dr.ヘーゲルシュタインの判断基準がどうなっているのかわからないが、戦いを進めてきた。
格闘技に自信があるわけでもなく、『不器用』スキルのせいで何が起こるかわからない戦いは遠慮したかった。
田中さんも他の2人に習い武装をすべて外して、先頭に立った。
移動し始めてすぐに出会うことができた『ライアン・クレイジー』に対して、一礼をすると敵も返してきて戦いが始まった。
先制は田中さんで、敵の顔に向けて右足で蹴りを繰り出した。
『ライアン・クレイジー』は避けることはせず、左腕で受け止め、その足を右手で掴むと大きく振りかぶり、地面にたたきつけた。
田中さんがたたきつけられたことに驚き安否を確認しようと身を乗り出したが、地面には田中さんがいなかった。
足をしっかり掴んでいたはずなのにいなくなった田中さんを敵も周りを見渡し探そうと周りを見るがいなかった。
地面に潜っと思った敵は地面を破壊しようと腕を振り上げたときにいきなり後ろから腰をつかむ腕が現れた。
全くの予想外の動きに対応できない『ライアン・クレイジー』を後方にたたきつけて、勝った田中さんは他の2人と同じようにガッツポーズをとって勝利の余韻に浸っていた。
現実世界にダンジョンが現れたらただ強いだけのモンスターだけじゃなく、こんなモンスターも居てくれた方が攻略したくなります。




