『見るもの』の異名
頭を強打したためのたうち回っていると、田中さんが慌てて駆けつけてきてくれた。
「『不器用』スキルが働いてると、自分に能力を付与してしまったらまずいんじゃ」
近くの長椅子まで抱えられて、別の人が持ってきた毛布を枕代わりにして寝そべると、田中さんが心配そうに話しかけてきた。
「確かに、『不器用』スキルのせいでこんなことになっているが、『カード顕現』のスキルで生み出したものにまでは効果が及ぶことはないから、カード選びさえ間違わなければ周りに被害が出ることはないですよ」
「いやいや、それって周りに被害出ないだけで『不器用』スキルの影響を受ける安藤さんは大丈夫なの?」
「『不器用』スキルが発動したところで死ぬわけではないから大丈夫ですよ。たぶん」
話していて、今までのことを思い出してみると、死んでもおかしくないかもと思ってしまい語尾が弱弱しくなった。
休ませてもらっている間、特に何も起きず船の中に置いてあった竿とルアーを使い釣り大会が開催されていた。
「よし、かかったぞ」
「引け引け、ほかの2隻に負けるな」
「おい、前の船が1kg台吊り上げやがった」
「嘘だろ、こいつバラしやがった」
「次は俺だ」
下の魚群は船と一緒に行動しており、私が素手で捕まえてきたことも影響したのか船同士で対抗戦を行っているようだ。
そんな騒がしい中、周りのみんなの雰囲気を壊さないように寝るふりをしながら、幾度目かとなるカードを発動させる。
『飲み込め『虚影浸食』』
魚群探知機でさえ船の直下にここまでの大群があれば、その下から襲い来るモンスターを見つけることはできないため、今回本当なら必要のない『大海原の祖』を追加で召喚した理由は、海の中を正確に感じ取るためである。
最初に言った通り、私が剣などを持ったり、いくら『大海原の祖』の力で『魔法』カードを使用できるとしても、『不器用』のスキルがどのように働くかわからないため、戦闘はすべて『幻影龍』を使い数が多くない敵には船上の者たちに気が付かれないように処理を行っていた。
「これはデカいぞ」
「タモ持ってきたぞ」
「秤もってこいこいつはデカいぞ」
どうやら田中さんがこの船で最大の魚を釣ったようで、大盛り上がりとなっている。
「お加減はどうですか、安藤さん」
遠藤さんがわざわざ飲み物を持ってきてくれたので起き上がり、貰うこととした。
「ありがとうございます。船酔いも合わさって結構きついですね」
「それは大変ですね。この酔い止めいりますか?聴きますよ」
「ありがとうございます。もらいます」
せっかくの申し出に酔い止めの薬をもらい飲み切る。
「それにしても、皆さんは楽しそうですね」
「船対抗の釣り勝負らしいですよ。遠藤さんは混ざらないんですか?」
「安藤さんのおかげで暇になってますので混ざってもいいんですが、安藤さんだけ負担かけておくわけにもいきませんからね」
「私は召喚してしまえば戻さない限り居続けてくれますから大した負担でもないですよ」
「ああ、言ってませんでしたが、私の異名の『見るもの』は鑑定が得意という意味ではなくスキルに『飛視』と言って視線を飛ばすことができるんですよ。まあやっていることは『透視』に近いのかもしれませんが、『透視』と違い私の視力に依存しているので別個のスキルですね。そのおかげで完璧に何が海中にいるのかは見えませんが、安藤さんが『魔法』を使用して、散発的なモンスターの攻勢を防いでいることは見えてますよ」
異名を聞いただけではよくわかっていなかったがまさかそんなスキルがあるとは思わず驚いてしまった。
そして、ひそかに処理をする自分をかっこいいと思っていたため、見破れたことに恥ずかしくなった。
「私以外にも似たようなスキルを所持しているものがいますから気づいているとは思いますが、相手が『聖域』なので安心して遊んでいるようですよ」
慰められたが、恥ずかしさが頂点に達したため赤面した顔を隠すほかなかった。
隠れてやっていることがばれた時の恥ずかしさ
こんな簡単にばれるのも『不器用』スキルがあるからだろうな




