駆け引き
『おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?』
「気持ちよく寝てたら連れ出されたんだろ」
「どこの部隊だよ」
「女性の部屋まで来るなんてサイテー」
「もう少し寝させろ」
昨日ミーティングを行った部屋に現地時間で早朝5時に呼び出されたみんなからは非難の声が合唱となって響き渡った。
『はいはい、わかってますよ。皆さんが、モーニングコールよろしく拉致られてここにきていることはよくよく理解していますが、状況が変化しました。もともと一月でキエフに到達の予定でしたが、ロシアがここにきて予定を繰り上げて半月での到着に変更してきた。いろいろ無理のある日程のはずだが、私たちと同じように南から北上してくる『破壊者』がアメリカを立ったとの情報が上がってきているためだと思われます』
「なんだよ、とばっちりじゃんかよ」
「どうせ半月後に到着できなければ権利がないとか言われたんだろ」
「断れよ」
「弱腰外交反対」
先ほどよりも大きな非難の声が上がった。
『はいはい、静かにしてください。ここから先は水先案内人のフランス外人部隊所属の江崎さんに説明をお願いします』
いまだに非難囂囂であるが、無視して江崎さんにマイクを渡した。
『静かにしてください。ありがとうございます』
遠藤さんの指示には一切従わなかった会場のみんなが、両脇に3人ずつの武装した兵隊を抱えた江崎さんの一声で静まり返った。
『これから3隻の船に分かれて乗ってもらいます。行先はオデーサになります。大した案内はできませんが、皆様には快適な船旅をお約束します』
そういうと地図を映し出した。
『オデーサに到着後、日本を出るときに分けていただいた10隊それぞれにダンジョン攻略をお願いします。道中13個のダンジョンが存在しますが、うち3つはQ型のため今回の攻略対象から省いております。それと、私の部隊より各隊に通信装置を持ったものを1名派遣します。各々自分の命を守れるので邪魔にはなりません。それぞれの担当のダンジョンはこちらの地図でご確認ください。部隊名は体調の名前となっております』
そう言い残し、部隊を連れて出て行った。
地図を見てみると田中さんが部隊長となっていた。
『それでは移動お願いします』
部屋の外に出ると部隊の人たちの案内でまだ暗い外に出ると、ゴムボートに分かれて乗り込み船へと向かった。
「おお、なにこれ?」
近づいてくる船は今まで見たことないようなフォルムをしていた。
「高速船の一種です。波の影響を受けないようにするため、海の上を進みのではなく海の上を飛んでいるような構造となっています」
なぜか、全く関係ない日本から来たたまたまゴムボードに同乗していた男性が答えてくれた。
「ああ、ごめんなさい。船が好きでつい」
田中さんとも、徳永さんとも別のボートになってしまい話す相手が居なかったので到着までの数分ありがたく話させてもらった。
船につくと中身は普通のフェリーとそう変わらない内装となっていた。
最初に乗り込んだ私が待つこと30分ですべての乗員が乗り込んだとのことで出発した。
先頭は徳永さんと三国さんが乗り込んだ船で、最後尾が私が乗り込んだ船となった。
船の中でやっと遠藤さんと合流できたので質問してみた。
「なんでこの隊の隊長が遠藤さんではなく田中さんなんですか?」
「ああ、その件ですか。この作戦が成功した時のメディア対応のためです。英雄が部隊長のほうがメディア受けがいいですからね。それより海上戦の準備をお願いします。いつ戦闘になってもおかしくありませんから」
そう言い残して、慌ただしく駆けていった。
「しょうがないから準備しようか。この部隊長が華麗な指揮を見せてあげるから」
「いやいや、私のスキルで呼び出した者たちは私の指示しか聞かないですから」
遠藤さんより先に合流していた田中さんが早速調子に乗ってきたのであしらって甲板に向かうことにした。




