年に1度の健康診断
「目が覚めると、見知らぬ天井だ」と一度は言いたかったセリフを吐いたせいで小岩井さんにこっぴどく怒られることとなった。
私が1時間たっても目が覚めないため気絶している間に、救急車に乗せられて近くの大きな病院へと搬送され今まさに診察を終え病棟に移ったタイミングだったとのこと。
無事に意識を取り戻したが、気絶をした原因が頭を打ったことだったため検査入院をすることとなった。
私が意識がなく搬送されたと聞き慌てて駆け付けた社長が見たのは、病院の入り口近くに併設されているコンビニで談笑している私であった。
意識がないと聞いていた人間が普通に談笑しながら目の前を歩いていることに腰を抜かしてへたり込んでしまった社長に、心配して声をかけたところまるで幽霊を見たのかのような怯え方をされ、注目を集めてしまった。
「社長、何があったかわかりませんが、とりあえずここを離れましょう」
小岩井さんからどんな風に伝えられていたかわからなかった私は、社長を支えてその場を去ろうとしたら、手を振り払われ余計におびえられてしまった。
その状態だとどうすることもできず、小岩井さんと途方に暮れていると警備員が駆け付けてきてくれて、社長を落ち着かせて話を聞いてくれた。
「安藤が死にかけだと聞いて駆けつけてみれば、こんなところで安藤とうり二つの人間が歩いているわけだ。さらに同じ声で私を社長と呼ぶなんて、お迎えが来たとばっかり」
というのが、過呼吸になりかけながら半泣きの社長の言い分を要約した内容なわけだが、社長がホラー系統が苦手だと初めて知ることとなった。
そしていつの間にか私が気絶しているという部分が死んでいるに代わっていた部分にも驚くこととなった。
「私は気絶して目が覚めないので念のため病院に搬送すると事務の方に伝えたはずですが・・」
「え?私が聞いたのは死にかけだと」
「えーと、申し訳ないですが、聞き間違えか、伝達ミスだと思われます」
「良かった。どうやって親御さんに謝ればいいか、5号警備が始まってまだ軌道にすら乗ってないのに私の会社から死者を出すなんてこの先どうなるのかといろいろ考えてしまったではないか。それで体調は大丈夫なのか?」
本当に安堵したのか、本音が漏れていたが聞かなかったことにした。
「今のところは、この後精密検査をして、1日入院して経過観察して何もなければ開放とのことです」
「そうか、どうせなら健康診断もやってもらうか、近々受けなければいけないんだからちょうどいいだろ、ちょと受付に行ってくる」
そう言い残すと、病室の番号を伝える暇もなく歩き去ってしまった。
まるで、さっきまでの取り乱しようをなかったことにするように健康診断をいきなり受けるように提案していたが、どう見ても恥ずかしさをごまかすためとしか思えず、小岩井さんと笑ってしまった。
これは警備だけではないですが年に1度健康診断を受けなければなりません。
そして、夜勤を行ってるものは半年に1度と受ける頻度が多くなります。




