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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね45

「なんで物凄く嫌そうな顔をするの!? 赤目さん、絶対に如月さんの妹のあれを揉みたかっただけだよね!?」

「そ、そんなわけないぜ」

「やっぱり赤目さんは変態だよ!」

「人の衣服を物凄く集中して嗅ぐ桜島さんほどじゃないぜ」

「ぐぅうううううう、赤目さんのいじわるぅううう」

 僕のカウンターパンチは予想以上に効いたみたいで、桜島さんはばたばたと悶える。出会ったころはひたすらおどおどしていたけど、仕草や表情がずいぶんと豊かになったなぁ。

「ま、如月さんの妹ってのが嘘じゃなければ、これで全員女の子なのが確認付いたわけだ」

「お姉にゃんに頼まれて男の娘を探してたにゃ――?」

「そうだぜ」

「奈々お姉にゃんが……赤目にゃんは信頼することにするとは言ってたにゃあ。でも、女の子の部屋に押し入ってくる変態は信じられるのかにゃ」

 如月さんが僕に<男の娘探し>の調査を依頼したってのを知っているということは、なおさら妹だっていうのは嘘じゃなさそうだぜ。

「僕は変態じゃない」

「嘘だよ」「嘘にゃ」

「あれ? 僕に味方はいないのか」

「でも、悪い奴じゃないのは、見てればなんとなくわかるにゃ」

 みんなさあ、無条件に僕を信頼してくれるけど、それはちょっと危ないぜ。

「信頼してくれるなら、出てきてくれないかな」

「にゃー。人前に出るのは嫌にゃ」

 いつもの岸さんを見る限り、コミュニケーション能力はかなりある方だと思ってたけどね。

「ボクと同じコミュ障が近くにいたんだっ」

 嬉しそうに桜島さんの声が弾む。

 当然のように自らをコミュ障と断ずる桜島さんの自虐精神よ。それに道連れにされる岸さんも不憫だ。

「だからこそのバーチャルアイドルか」

「そうにゃ! 顔出し不要! 直接人と接する必要もない! これぞ天職だとぼくにゃんは思ったにゃ!」

「そのほどよいダメ人間っぷりもいい。ボク、岸さん一気に好きになっちゃった」と、桜島さんがやたらシンパシーを感じてるぜ。

「話すのはこのままじゃないとダメかぁ」

「諦めるにゃ。岸花は安い女じゃないにゃ」

「わかったぜ」

「それでいいにゃ!」

 僕がじかに顔を見るつもりはないと分かってから、段々猫娘の時の調子を取り戻してきたみたいだ。この状況も、ふすま一つ隔ててのやり取りだから、彼女にとってはディスプレイ越しのやり取りと同じ扱いなのかもしれない。

「ところで、さっき全員女の子の確認が付いたと言っていたにゃ――?」

「うん。如月姉妹以外の女の子全員、おっぱいを揉んで確かめたから間違いないぜ」

「手段が低俗なのはともかく有効な手段であるのは間違いないにゃー。だとすると、誰かが意図的に男の娘がいるかのように仕組んでいることになるにゃ?」

 思考の時間をほとんど必要とせずその結論に至れるのだから、岸さんは頭が切れる人間のようだ。

「そうだぜ。目下、僕達はその犯人を捜してる」

「男の娘がいないなら、犯人はわかるにゃ」

「ほんと!?」

「にゃ。深夜に僕にゃんの部屋の前で、無防備に電話してた人間がいるにゃ」

 この凶行を引き起こした犯人が、部屋の前で話していた内容を岸さんが話し始める。

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