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この中に1人男の娘がいる! いや、まぁ僕なんだけどね43

「――ラインの交換、しようよ」

「お安い御用だぜ」

 むしろ、それはご褒美だ。

 さっさとラインの交換を済ませる。これで、オーディションが終わったあとも麗しのボクっ娘との関係を保てる。ああ、大変なことも多いけど、来てよかったぜ。

「ぎゃーぎゃー騒ぎすぎて喉乾いちゃったぜ」

「ボクも」

 トイレした後なのに、バカ騒ぎしたせいで体が水分を欲している。それに、お互い失態を見せつけあったせいで、間を欲していた。

 二人して小銭を持って三階から一階へと降りる。

 その途中の出来事だった。

 にゃ、にゃーん。ごろにゃーん

 まただ。二階の踊り場で、猫の鳴き声が聞こえてきた。

「赤目くん……聞こえたかな?」

「あぁ、ばっちり聞こえたぜ」

「やっぱり、猫のお化けがいるの?」

「僕は、すべての怪奇現象にはことごとく人間が絡んでいると考えるタイプだからね。今度は、忍び足で声がする方に行ってみよう」

 にゃにゃーん。

 前は夜だったので、恐怖感があったけれど、吹雪の中とはいえ昼間なので視界は良好でさほど怖くない。

 気配を消して声の方に近づいていく。その発生源は、廊下の終着点にある客室で以前と変わりない。

 にゃ、にゃー。にゃにゃー。

 今度は、僕達の気配を猫の幽霊に悟られていないようだ。客室の扉の奥から明確に声がする。それに加えて、何者かが動く気配。そのサイズは猫のような小動物ではなく。

「これ、人だ」

 中にいる人に気づかれないように、僕は小さくつぶやく。

「でも、二階に割り当てられた人はいないよね?」

「いない。だからこそ怪しいぜ。確認は絶対にする必要がある」

「でも、入る手段がないよ? ノックしても絶対に居留守されるだろうし……」

「それについては考えがあるぜ。予備の鍵の在処を僕は知ってる」

「えっ」

「あ、悪用はしてないぜ」

「……ボクの部屋に勝手に入った」

 やっぱり隠していた特殊性癖を暴いた恨みは大きいんだろうぜ。

「それはなかったことにしようぜ。とにかく、ぼくは鍵を取ってくるけど、ここだと危ないからボクの部屋で待ってる?」

「どうしようっかなぁ」

「僕がいない間に、また服のにおいを嗅ぐのはダメだぜ?」

 ボクっ娘に服のにおいを嗅がれるのは全然かまわないのだけど、また犯行現場を目撃したら桜島さんが心に傷を負いそうなので、あらかじめ注意しておく。

「さっきのは事故みたいなものだよ! 赤目くんが疑ってくるからボクも行く」

 僕達は、一階にある管理室に忍び込む。部屋自体には鍵はかかっていないので、それはまったくもって簡単だった。鍵以外は取られて困る物がないからセキュリティがガバガバなのだろう。その鍵は、金庫にしまってあり、ダイヤル式の鍵が付けられているから部屋自体に入られても心配はないという寸法だ。

 だが、僕は以前に如月さんが開ける際に入れた六桁のパスワードを見て、覚えている。

 あっさり金庫破りを済ませた僕は、マスターキーを選んで持ち出す。そして、猫のお化けが潜むであろう部屋の前まで戻ってきた。

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