58話
「オイ!てめ」
ドガッ!
扉から勢いよく突き進んできたガラの悪い男。しゃべる間も与えず、即座に右ハイキックを顎に叩きこむ。
ムカつく店員への怒り、いきなりのドアの音に驚いてしまったことへの怒りを込めた。
結果、左側に勢いよく吹っ飛ぶ。
「ちょ」
ガゴン!
飛んでいった先には一人の男。さっき舐めた口を聞いてきた店員。二人は勢いよくぶつかり倒れる大きな音がした。
ストライク!叫びたくなるほどに狙い通りだった。
「ゴマンスル!」
「御当主様!」
扉から続々と身なりの悪い男達が。
店の奥から護衛風の男達が。
続々集まってきた。
決して狭くはない道具屋だが、そこは大勢の男達で一杯になった。アドレナリンが臭いを放つほど部屋の中に充満している。
「「オイ!てめえ、なにしやがる」」
身なりの悪い男。護衛風の男。全く同時に同じ声を上げた。
「おが、おがががが」
鼻を押さえながらうめき声をげているムカつく店員。抑えた手のひらからは大量の鼻血が溢れ出ている。
「小僧!俺らはファベーラのも」
ドガッ!
右ミドル。
さっき吹っ飛ばした奴の仲間が懲りずに進み出てきたので蹴り飛ばす。なぜ同じ目に合うと考えないのか。
吹っ飛ぶ。
そしてまた激突。狙うのはもちろんムカつく店員。狙い通りまたストライクだ。才能があるのかもしれん、人間ボーリングの。
「コイツ狂ってやがる!話が通じねえ、構うもんかここで半殺しにしろ!」
ジリ、ジリ、ジリ、
警戒しつつマフィアが距離を詰めてくる。護衛は状況が呑み込めずに俺を見るべきなのかマフィアを見るべきなのかと、戸惑っている。
「ブ、ふざゲダごとをぬかすな!ここをドゴだと思ってる!エンポラル商会だど、アール・カウント伯爵の庇護下にあるエンポラル商会だど!貴様ら全員縛り首にしてやる!!」
ザワ、ザワ、ザワ、
大量の鼻血を流しながら殺意の篭った目で店主が叫ぶ。その言葉はマフィアすら脅すことが出来るほどの言葉だった。
縛り首。
言葉がこだまのように繰り返し聞こえた。




