57話 -バイク-
「こ、こ、これは!」
半分冷やかしのつもりで入った大通りの高そうな道具屋。しっかりした造りの扉を開けると、扉のすぐ近くに飾ってあるモノに目が釘付けになった。
バイク。
なぜ、こんな所にバイクがある。地球と繋がっているのか?いや、誰かの特殊スキルで召喚したのか?なぜこの世界にバイクがあるんだ。
「いかがでございますか?素晴らしい逸品でございましょう?」
なかなかハンサムな中年の男。髪を短く切りそろえ、物腰が柔らかかく、言葉遣いが丁寧だ。
「これは?」
「魔導二輪車でございますよ。名うての冒険者が迷宮の深部からわざわざ持ち帰った大変に貴重なものでございます」
「魔道二輪車・・・」
この世界ではそういう名前なのか。
名前があるという事は過去にも複数見つかっているという事だ。そのわりには今までに一台もみなかったが。いや、俺が知っているのはこの街と森林だけだ、大きな都市にいけば見るのかもしれない。
このバイク・・・
バイクには全く興味が無いのでわからないが原付、カブと呼ばれるものとは違う、免許が必要な本格的なバイク。
タンクが紺とゴールドの2色にカラーリングされている。前にはライトがひとつ、ハンドル右側に後方を見るためのミラー、エンジンが鈍い銀色に光っている。メーカー名は書いていないし、ナンバープレートもなしだ。
これなら薺とふたり乗りできるんじゃないだろうか。そうすれば歩く必要もないし移動時間も一気に短縮できそうだ。それに、なによりも格好いい。見ていたら欲しくなってきてしまった。
欲しい。
だが、しかし、
780万ゴールド!
控えめに置かれた小さな値札には強力な値段が記されている。高!高っか!
「魔石を動力とすることが出来ないタイプの魔道二輪車ですので、使用できる人間は限られますが、それでも、愛好家にとってはのどから手が出るほどの一品です」
高っか!高っか!
「いかがです?この機会に?」
ぐっ、
「おや?どうしました?あー、値段ですか、問題は、なんだ、値段ですか。私はてっきりそれくらいのものは持ったうえで来ていただいているのかと思っていましたよ」
「は?」
「一級品のみを扱っているうちのお店にはどうやら、あまり相応しくないようですね、どっかそこいらの露店で足袋でも買って歩いて行かれることをお勧めいたしますよ」
「は?」
「オイ!!いたぞ!」
ドアを蹴り破るようにして男達がなだれ込んできた。




