105話 ー踏み出すー
金属製の両開きの扉に鍵穴が1.2.3.4.5、5個。
「なんだこれは日本銀行の金庫か?随分と頑丈そうだな」
思いきり頭を打ち付けてみる。
ドン!
鈍い音。
「ビクともしてない。いけるか薺、鉄格子よりも相当頑丈だぞ」
音の感じからして結構な厚みがありそうだ。しかし自分のことながら頭突きを攻撃の最初として選択するとは驚くな、完全に受け入れてしまっている。
けどまあこれが一番威力がありそうだから仕方がない。
頭突き悪魔。
雑魚感めちゃくちゃ強い。
そんなことを考えているうちに薺はすでに行動を開始していた。
肥前国陸奥守忠吉
何と読むのかもわからない脇差。
鞘から引き抜いた途端白い光が集まっていく。蛍光灯みたいな白だ。
閃光一閃。
だが………
「斬れてない、嘘だろ」
人差し指くらいの深さまでは切れ込みが入ってはいる。しかしそれだけだ、貫通せずに途中で止まっている。
「どうした薺?」
唇を少し噛みしめている。
「・・・」
光が増した。
「うわっ」
まぶしくて目を開けていられない。
薺の存在感が強くなっていく。
閃光。
もの凄い音と地面が揺れる感覚、土煙。
光で何も見えなくとも、今度こそ薺が扉を切り裂いたのだ、それがわかる。
治まった光の中でようやく目を開けると扉は星形に切られその残骸が地面に崩れ落ちていた。
「よくやった薺」
「・・」
満足そうだ。
「それにしても分厚いな、鉄格子の3倍はあるぞ。重っ!」
破片のひとつを持ち上げてみたが見た目以上の重量感。普通の鉄とは比べ物にならない。特別な金属のはずだ。
「よしこれも持って行こう」
得した気分だ。
濃密な気配。
「なんだこれは……」
本当に宝があるのか?
「けどこの厳重なセキュリティーは」
何かしらの悪意を持った存在がいるに違いない。
本能の知らせ。
しかも確実に強い。
「勇者……」
俺には勇者が付いている。
そして無能。
どんなに強かろうが負ける気がしない。強い魂をくらえば俺という存在はさらに強くなる。
そうだ、俺には力が必要だ。鉄格子すらまともに破壊できない、それが今の俺の実力。
薺の足元にも及ばない存在、それが今の俺だ。
虚しい。
偉そうに薺に命令している自分が嫌だ。
薺の顔色を伺っている自分が嫌だ。
誰の命令にも従わず思うがままに生きたい。
強くなりたい。
強く、誰よりも強くなるんだ。
「誰よりも強く」
一歩足を踏み出した。
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