100話 -気が付く男-
泉へと踏み出した薺。
不思議だ。
水を歩いているはずなのに水の音がしない。幽霊か何かか?
女神の象が持つ水瓶から落ちてくる水の下に立ち手を合わせて祈る。果たして薺は精霊の加護をもらえるのだろうか?
充分強いから貰えなくてもいい気はするがせっかくなら何か貰いたいと思うのが人情というものだ。
「これを見ろケイタ!」
アルハイトがテンション高く近寄ってきた。
「おお」
ハイトの手の上の水が球体になっている。
「これが水の精霊様から頂いた加護「水固め」だ。どうだすごいだろ!」
うーん、どうだろうか。
「あ!」
指でつついたら一気にただの水になって流れ落ちた。
「全然駄目じゃねえか」
「ひどいな!俺が初めて作ったやつだぞ」
「水を固めるのがお前の加護か?」
「そうだ!」
「もっと硬くしろよこれじゃあ使い物にならないだろ」
「硬く?硬くしてどうするんだよ」
「そしたら敵に投げつけたりとかできるだ」
「なるほど!そうか」
自分で言っておいてなんだがそれだと石と変わらないか。
「もっとデカいのとか」
「確かにいいなそれ!」
「硬くてデカいのでドカンだ!」
「おおお!ドカンか!それは絶対いい!絶対できるようにするぞ!」
「そうしてくれ」
「お前らは?」
ロアンとピネルに声を掛けた。
「ぜんっぜん駄目だった」
「私もです。やはり王族でないとダメなのかもしれません」
うーん、だったら薺も駄目か?いや、でも勇者だからな。少しくらい何かくれてもいいような。
空気が揺れた気がして振り向いてみると薺が泉を歩いている所だった。
「どうだった?」
「・・」
駄目か。
「ちょっと待ってくれ薺さん!あんた全然違うよ!」
ピネルは興奮している。
「薺は何も感じなかったんだぞ」
「なんで気付かないんだよ!ほんと男っていうのは」
薺も首をかしげている。
「肌がものすごく綺麗になってる!」
え?
「前から物凄く綺麗だとは思ってたけど全然違う、めちゃくちゃプルプルだ!」
そう言われてみれば違うような気がする。いや、でもこれは泉の水で濡れているからそう見えるだけじゃないか?
「髪の毛もつやつやしてて天使みたいだ!」
そうか?
そうなのか?
アルハイトとロアンの顔色を伺ってみると、わかったようなわからないような顔をしている。
だめだこいつら。
なんにもわかってねえ。
俺はこいつらとは全然違う、気が付く男なんだ。
「よかったな薺。前々から綺麗だとは思っていたが精霊のおかげでさらに綺麗になってるぞ」
言い方が大事だ。
綺麗になった、といってしまったらそれなら前は綺麗じゃなかったのか!と怒られてしまう。
前から思っていたけどさらに、というのが大事なんだ。
「・・・」
嬉しいみたいだ。
俺は気が付く男「黒部 圭太」だ。
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