26-1.残りの高校生活、そして
26-1.残りの高校生活、そして
一般生徒として優雅に文化祭を楽しんだ。その後、黒石とノアが付き合いだしたと風の噂で耳にした。体育祭の応援合戦にも参加し、あっという間に卒業となった。俺は第一志望の大学に合格し、地元を出て一人暮らしを始めた。
大学生活は高校よりよほど時間に余裕があり、生徒会業務をしていない以上、相方が優秀なやつである必要もないので、一定レベルを超えてさえいれば、告白されるがままに女と付き合った。
彼氏の義務としてメールや電話やその他諸々に対応するのだが、どうも保たない。すぐに面倒になる。
その日も「限界、ごめん別れよう」と彼女に告げ、泣かれたがさっさと自分の家に引き上げた。こうなることがわかっていたので、彼女に自分の家の合い鍵を渡したり、そもそも家に上げることはない。
ベッドに転がって、携帯電話を取り出した。
ノアの声が聞きたい。のんびりとした、穏やかな声を。
携帯でノアの電話番号を眺める。
あいつは今頃、受験勉強の真っ最中だ。
俺のことを忘れろと命じた。ノアはそれを守った。ばいばい、と告げてから、互いに一度も話をしなかった。目を合わせることもなく、知り合いですらなかったかのように、その後の高校生活を送った。
今更声を聞きたいなんて、言えるわけない。黒石という立派な彼氏もいる。
ノアに電話しようとして、やめる。次々にできる彼女と別れるたびにそんなことを繰り返して、苦しくて、ノアの連絡先を削除した。
写真を、眺める。
雪だるまを挟んで黒石とノアが笑ってる写真。俺とノアが笑ってる写真。
楽しかったな、と雪合戦を思い出す。
忘れろ。ノアのことはもう、忘れろ。
写真を消した。
大学一年も終わりに近づいた三月半ば、電話がかかってきた。沢野だった。
「はいよー」
ベッドの上で気楽に応答すると、沢野が笑った。
『会長、ずいぶん遊んでるみたいね。水ちゃんから聞いてるよ』
水ちゃんというのは水原のことだ。沢野や水原など俺と同学年のやつらは、未だに俺を会長と呼ぶ。水原と俺は同じ大学に通っている。
「遊んでるっつーか、まぁ、こうも暇だと遊ばざるを得ないな」
『今、彼女いるの?』
「ちょうどいない。何人か告白受けてるけど保留中。何かもう、めんどくさくなった。ピンと来るやつがいない。付き合って別れての繰り返し。もーやだ。なに、沢野が彼女に立候補? 沢野だったら遠距離恋愛でも大歓迎ー」
沢野は行きたい学科があるということで、地元の大学に通っている。愚痴をこぼしつつ軽口で返すと、沢野が応戦してきた。
『会長ってば、私がそんな軽い女だとでも? 失礼ねぇ』
「へぇ。そっちは順調なんだ」
まぁ、沢野ならそうだろうな。
『常に絶好調。このままゴールまで行くね』
自信満々で沢野が言い切る。羨ましすぎる。
「あー、俺もそんな彼女がほしい。ゴールまで行ける子」
『うん。それでね、会長におすすめの子がいてね。だから会長は、これから四月末までフリーでいてよ』
「はぁ。沢野の知り合い?」
『うん。後輩の子。高二の三月末に彼氏と別れて、それからずっとフリーなの。四月から会長と同じ大学』
俺と同じ大学に来るほど優秀なやつか。しかし。
「……なんか嫌な予感がする。お前、俺にチョコ渡してきた後輩女子とか紹介する気? 断ってこじれたらどうすんだ。沢野が困るだろ」
『あのね、絶対こじれない。うまくいく。保証する。だから会長はフリーでいてね。約束だよ。それではまた』
笑いながら沢野が電話を切る。
沢野おすすめか。どんなやつだろうな。沢野レベルで有能なやつか。
たいして期待はせず、それでも受けていた告白をすべて断って、俺はフリーを保った。




