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24.生徒会引退

24.生徒会引退


 黒石はノアに告白しなかったらしく、ふたりが付き合いだしたという話は聞かなかった。三学期の終業式を終え、放課後、生徒会の後輩たちが慰労会を開催してくれた。俺たち二年は今日で生徒会を引退だ。

 打ち合わせテーブルに用意された菓子や飲み物をつまみながら、好き勝手に話す。

「会長、ハチマキは置いて行かれるんですか?」

 黒石が会長机の筆立てにぐるぐる巻きにされたハチマキを指さす。私物は昨日までにすべて引き上げていた。筆立てはもともとある備品だ。

「ああ、これな。生徒会のお守りだから飾っとけ。けっこう効き目あるぞ。飾ってから生徒会順調だったしな」

 黒石が怪訝そうな表情になる。

「乃亜さんのハチマキだと、聞きましたが」

 ん? もしや俺がノアを好きだとでも誤解されてたか。

「ノアって希望の箱船だろ。だからノアのハチマキは生徒会のお守り。ノア本人が言ってた。次の体育祭でお前がもらって取り替えるか、お前とノアでハチマキ交換して私物にして、これはそのままにしとくか、どっちかにすれば? っていうかお前らどうなってんの? 俺の『がんばれ黒石』メールは没? ホワイトデー何あげたの?」

 会長机に寄りかかって紙コップでコーラを飲みながら続々と質問を投げると、黒石がわずかに赤くなる。

「会長、あのですね、そういったことは……。ハチマキはわかりません、乃亜さんの気持ち次第です。どうにもなってません。メールも、写真は確かにありがたく保存させていただきましたが、がんばれって俺にどうしろって言うんですか。ホワイトデーは普通のお菓子です」

 声を抑えて、黒石が正確にすべて回答する。

「言っとくが、別に、生徒会内で恋愛禁止のルールはないぞ。今年いなかっただけで、去年は付き合ってる先輩達もいたし。ノアに彼氏がいないうちに早めに収穫すれば?」

「収穫って、会長。物じゃないんですから」

 黒石が呆れて俺を見る。

「物っていうか、あいつペットっぽいだろ。ポンコツペット。ポンコツ人形?」

「会長……」

 俺の言い草に黒石がため息をつく。

「俺はそれなりに、ですね、会長に遠慮してたんですが」

 はぁ。

「俺があのポンコツとどうなるってんだ。黒石、頭いいくせに恋愛方面苦手か」

 沢野達と話していたノアが寄ってきて、黒石は慌てたように離れていった。

「会長、アイスコーヒーです。少しぬるくなってしまいましたが、どうぞ」

 ノアが俺に紙コップを差し出す。

「ん、ありがと。しかしお前も、半年でよく進化したな。アイスコーヒーを持ってくるレベルになったか」

「会長がお好きなものは、はい。覚えました。アイスコーヒーとキャラメルと我が家直伝のマシュマロですね。チョコやバニラシェイクはそんなにお好きではないですね」

 ノアが会長机を見て、筆立てに手を伸ばした。ハチマキを外そうとしているのでストップをかける。

「何やってんの?」

「ええと、ハチマキを会長にお持ちいただこうと。お守りですから、ぜひ」

 はぁ。

「生徒会のお守りだろ。ハチマキは黒石にこのまま引き継ぐぞ。置いとけ。そんでお前、次の体育祭では黒石とハチマキ交換しろ」

 どうやら仲介しないとふたりが進展しなさそうなので言っておく。ノアがまばたきする。

「は……、ええと、黒石くんと交換なのですか。ご指示ですか。しかし、ですね、私のハチマキは、どうやら、会長専用です。次も会長に差し上げます。はい」

 おいおい。

「黒石が会長なんだから黒石と交換だろ。黒石会長、ノア副会長だろ。しっかりしろ」

「いえ、しかし、ですね、会長、あの、ですね」

 ノアがあたふたしているところに他の後輩や水原達がやってきて、わいわい話す。

 慰労会を終えて、俺は生徒会室を後にした。いい仲間に恵まれて生徒会はほんとに楽しかったなと、そんなことを思った。

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