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20.名前問題

20.名前問題


 黒石はよくやっていた。自分の仕事をこなしながら、信号ノートをみて要領を得ないノアの話を根気強く聞き、フォローに入る。

 やはり文集作業で数人赤信号が出たが、それは俺が対処した。

 文集も締切りギリギリになりつつ印刷会社への原稿出しを終え、沢野チームが水原チームに合流して、三年生の送り出し会にとりかかる。

 一月末の次期生徒会長選挙もうまくいった。建前上は一年全員から会長の立候補を募集するので、生徒会仕事をしたことのないどこの馬の骨ともわからんやつが数人立候補してきたが、それぞれの演説と全校生徒の投票の結果、圧倒的大差をつけて黒石が次期会長に決まった。

 あとは三月の卒業式直前にある三年生の送り出し会と、予算だな。

 順調に進んでいるので、生徒会メンバーは全員正規の下校時刻、夜七時に帰れるようになった。俺はやはり書類仕事が溜まるので、生徒会室に一人残って片づける。

 部活の時間延長届けや音楽部の部員募集掲示許可願いにさっさと判を押し終えて、帰ることにする。

 帰り道のマクドナルドで、ガラス張りの店の外から、ノアと黒石をみかけた。

 黒石から問題は報告されていなかったが、はて。

 ノアのポンコツ具合をフォローしきれなくなってマクドナルド行きになったか。

 明日確認するか、と、そのまま帰宅した。


 翌日、放課後一番に黒石を呼ぶ。

「ノアとはうまくいってるか?」

「はい。特に問題ありません」

 黒石も至って普通の表情だ。内心首をかしげる。

「昨日、マックでお前ら見たけど……ノアのフォローをマックでやってんの? 生徒会の時間で片づけろ。あいつの家、帰り道危ないし、早めに帰してやれ。時間が足りないならお前の仕事を減らして調整するぞ」

 提案すると、会長机の向こうで黒石が慌てた。

「あ、すみません、ええと、仕事というか、ですね」

 はぁ。

「プライベート?」

 眉をひそめて聞いてみる。あのポンコツとプライベートとは一体どういうことだ。黒石、妙な趣味でもあるのか。

「全くのプライベートでもないんですが。何と言ったらいいか」

 黒石が視線をさまよわせる。常に的確なこいつにしては珍しい反応だ。

「名前で呼んでいいか、など、そういったことを聞いてまして」

 はぁ。

「いいだろ別に。お前、次期会長なんだから。ノアって彼氏いないだろ」

 言ってから気づく。ノアに彼氏がいないか確認してから、ずいぶん時間が経っていた。

「ノア!」

 パソコンに向かっていたノアを呼びつける。

「は、はいっ」

 ノアが駆けてくる。

「お前、彼氏できた?」

 いきなりの質問にノアがうろたえる。

「は……、いえ、まさか、彼氏さんなど、おりませんが」

「だろ。じゃぁ別にいいだろ」

 黒石に向かって言い切ると、黒石が「いえそれが」と言葉を濁す。

 なんだ。

 名前で呼ばれることをノアが突っぱねたか? このポンコツが?

「ノア、黒石がお前のこと名前で呼ぶって言ってるが嫌なのか?」

 聞くと、ノアがさらにうろたえる。

「いえ、あの、もちろん嫌ではないですが、お好きにお呼び下さいと言いたいところなのですが、その、なんと申し上げたらよいのか、ええとですね、ええと」

 話が全く進まないのでストップをかける。

 名前一つでなんて有様だ。大丈夫かこいつら。

「ノア、落ち着け。何が問題だ」

「は、はい、問題はですね、その、ええと、ノアというのは会長専用の呼び名にしたいというのが私の希望で、ですね」

 はぁ。

「次期会長は黒石だ。いいだろ」

「いえ、あの、ええと、会長は会長でも、その、会長専用、なのです」

 ああ? このポンコツは何を言っている。

「四月からは良いってこと? 俺が引退して黒石が正式に会長になったら許可?」

「は……、いえ、あの、会長専用です。ええと、すみません、お名前で失礼しますが、アキラさん専用です」

 俺専用とな。

 よくわからんな。よくわからんがポンコツなりの理屈なのか。ブラジル由来か。

「まぁ、そしたら黒石は諦めろ。ノアはどこまでいいんだ。名前呼び捨てがだめなのか、ちゃんでもさんでもつければ名前でいいのか、そもそも男からの名前呼びは嫌なのか。どれだ」

 ノアに譲歩させるべく追求する。

「ええと、ええと、ちょっとお待ち下さい、すみません」

 ノアが両手で頭を押さえる。ポンコツなりに猛スピードで考えているらしくじっと宙を見つめていたが、しばらくして言った。

「あの、名前呼び捨てがだめです。ノアというのはアキラさん専用です。はい」

 はぁ。

「だったら黒石は名前呼び捨て以外で好きに呼べ」

「はい、そうします。えーと、乃亜さん? 乃亜ちゃん? さん、かなやっぱり。乃亜さん」

「は、はい。では恐縮ですが、さんでお願いいたします。ご迷惑をおかけします」

 ノアが黒石に頭を下げる。

 なんだこのふたりは。来年度の生徒会はほんとに大丈夫か。

「わかった。名前問題解決。解散。仕事に戻れ」

 ため息をついて、ふたりを戻した。

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