14-2.安西さんが顔を歪める-穏やかな仮面が割れた。
その後も、卒業文集用のインタビューにはノアと黒石のペアで行かせた。二人に記事を書かせ、両方をインタビュー相手に投げた。ノアと黒石の記事の採用率は半々だった。インタビュー相手の中には、こんなことは言っていない、言ったことだけ書いてくれと、ノアの記事を没にした上で苦情を返してくる者もいた。しかし、俺が音声データを聴く限り、苦情を言う人は、自分をこうみせたいと心に鎧をつけているタイプが多かった。つまりは、逆ギレしているのだ―――ノアに自分の気持ちを見抜かれたことに。図星を指されたことに。
俺は二人がインタビューに行くたびに、必ず音声データを聴いた。卒業文集作成のリーダーは沢野だ。俺が音声データを聴いてチェックする必要はない。それでも聴いた。仕事というより、興味に近かった。ノアはいつも、何気ない瞬間に相手に切り込んでいた。相手の何に気づくのか、音声からは全くわからなかった。
見てみたい。ノアのインタビューを自分の目で見たい。そんな気持ちが大きくなった。
インタビューの相手が、最後の一人になった。俺は沢野に、俺とノアが組んで行くと言った。
十二月の始め、ノアと一緒に、インタビューに向かった。
インタビューの相手は建築家だ。卒業生達から集めた寄付金で、十年前、うちの高校の中庭を作った人だ。中庭が作られた年の文集にもその人のインタビューが載っているが、中庭建築十周年ということで、再度インタビューすることを決めた。前回のインタビュー以上に深い話を聞けるかどうかが勝負所だ。
JRを乗り継いで、建築事務所にお邪魔する。建築家の安西さんは、穏やかな雰囲気を持った人だった。今年で四十八歳。俺とノアを自分で出迎えて、応接スペースへ通してくれた。
「お茶でいいかな」
そんなことを言いながら、湯気の立ったマグカップを持ってきてくれる。
「ありがとうございます。生徒会長の滝川彰と申します」
「上田乃亜と申します」
「本日は、よろしくお願いいたします。恐縮ですが、記事起こしのため、会話を録音させてください」
ふたりしてお辞儀をしてから、ソファに並んで腰掛ける。俺はICレコーダのスイッチを入れて、ローテーブルに置いた。
「安西武志です。こちらこそ、よろしくね。後輩と話ができて嬉しいよ」
向かいに座って、安西さんがゆったりと言う。
もらった時間は二時間だ。ノアに存分に話を聞かせてみようと、長めの時間を設定していた。
建築家になったきっかけ、中庭を設計した意図、高校生に向けてのアドバイス。その他にも細かい質問を考えてはいたが、外せない質問はその三つ。
その三項目だけ俺がリードして聞いて、あとはノアと安西さんが話す流れに任せようと決めていた。ノアには、遠慮せず好きなだけ質問しろ、感じたことをすべて相手に伝えろ、と事前に言い聞かせていた。
まずは俺から、建築家になったきっかけを聞く。
安西さんはテレビで特集を組まれるほど有名な建築家だ。著書も何冊か出している上、各地で講演会も行っている。慣れた質問なのだろう、安西さんは滑らかに答えていく。俺は相づちを打ちながら、安西さんの表情や仕草をじっと見ていた。ノアは一体、どこで切り込むのか。
父が建築家だった、だから自然と建物に目が行くようになってね、と安西さんは笑った。そのことは著書にも載っていた。安西さんの父親も、有名な建築家だ。ノアがぽつりと呟いた。
「お嫌いだったのですか」
その質問は、どっちを指している。父と建物、どちらだ。
俺は黙って安西さんを見ていた。
安西さんが驚いたようにノアを見て、それから微笑んだ。穏やかに言った。
「僕は父を尊敬しているよ。すごい人だった。今でも僕は父に追いつけないと思っているよ」
父親のほうか。ノアは安西さんが父親を嫌いだと感じている。ノアが呟いた直前、安西さんは笑っていた。笑って話していたのに―――何故、気づいた。
「そうなのですね。追いつけないと、思っていらっしゃるのですね」
ノアの声が揺れていた。涙声。
このくだりで、なぜ泣く。
安西さんが困ったようにノアを見る。場が静まる。俺は迷った。何か言うべきかどうか。こらえて黙った。
しばらくの沈黙の後、ノアが言った。
「もし、お嫌でなければ、お話を、お聞きします。どうぞ」
安西さんがため息をついた。
「上田さんには、わかるんだね」
「感じます。それだけです」
ノアと安西さんの間だけで伝わる会話。
「会長、レコーダを止めても、よろしいでしょうか」
ノアの言葉に、一瞬、息を呑む。レコーダを止めると記事起こしができない。レコーダを止めたいということは、話をメモするのもだめだということだ。しかし―――腹をくくった。この先二時間、話の内容をすべて覚えきるつもりで、無言でレコーダに手を伸ばした。安西さんが電源の切れたレコーダを見つめた。
「安西さん、私がお聞きします。ただ、お聞きします」
涙声で、ノアが言った。
安西さんが大きく息を吐いた。視線をローテーブルに落としたまま、呟いた。
「上田さんが言うとおり、僕は父が嫌いだ」
「はい」
ノアが静かに先を促した。安西さんが顔を歪めた。穏やかな仮面が割れた。
「大嫌いだ。仕事、仕事、仕事、あれは俺が作った、これは俺が作った、今度はあれを作る、だから何なんだ。どうして僕を見てくれない。自慢ばかり。自慢ばかりで、母のことも僕のことも何一つ聞こうとしなかった。僕らは家族じゃなかった。家はただの宿だった。母はただの家政婦だった。母は家政婦で、だったら僕はなんだったんだ。父にとって僕はなんだったんだ。僕はもう父の年を越えた。父が死んだのはもう何十年も前なのに、今になってもなぜ振り切れない。何を作っても父の陰がついて回る。僕は建築家になるつもりなんかなかった。あんなやつ。あんなやつと同じ仕事なんて。後悔して、何度もやめようと思って、別の仕事をしようとして、それなのにやめられない。父の陰を追っている。建物に父をみている。おかしい。変だ。どうしてやめられない」
安西さんから溢れ出した負の感情に飲み込まれる。穏やかな人―――その印象が反転する。なんという激情家。これだけの混乱を抱えて隠してこれまで生きてきたのか。
「お父様は、ご自慢ばかり、でしたか」
ノアが聞く。安西さんが頷く。
「自慢ばかりだった。それだけが父との会話だった」
絞り出した声。
「それでも、お父様のお話を、お聞きしていたのですね」
安西さんが俯いたまま吐き出す。
「みんなが僕の父の話をする。すごい人だった、一緒に仕事をしていて楽しかったと言う。厳しくて優しい人だったと―――父の葬式で、そんな話を聞いた。そのとき僕はまだ高校生だった。どうして僕ら家族には厳しくも優しくもしなかったのか。僕は父を憎んでいる。僕らに見向きもせず、仕事のしすぎで勝手に死んだ。過労だった。父と最後に会話をしたのは父が死ぬ一月前だ。今度はあれを作る、大きな仕事だ、すごいだろ。それだけだった。次に会ったとき父は死んでいた。もがいたような、苦しそうな死に顔だった」
安西さんとノアの会話が噛み合っていない。
「はい」
ノアがただ一言、それだけ言った。
沈黙が続く。安西さんが言葉を探す。
「父が死んでから、初めて、父の作った建物を見た。もがいて死ぬほど仕事して、あいつは一体何を作っていたんだと、そう思いながら、日本中を見て回った。海外にも行った。父の作った建物の中に入ると空気が変わる。安心を、する」
「はい。安心、なさるのですね」
ノアが答える。
「安心するんだ。……どうしてかな」
安西さんが呟いた。
「どうして、でしょうか」
ノアが静かに繰り返す。禅問答。
安西さんが考える。
「父は建物を愛した。その中に住む人やその中で働く人のことをひたすら考えていた。父の建物の中にいると、僕もその一員になれる気がする。だから、安心を、する。父の気配を感じる。お前もこういうものを作れと、言われている気がする。……錯覚だね」
「錯覚ですか」
ノアの質問に、安西さんが頷く。
「錯覚だ。父は僕に一度もそんなことを言ったことはない。だけど……だけど、僕は錯覚を信じた。僕も作ってみたいと思った。建物を作っていた父の気持ちを知りたいと思った。だから、建築学科に進んだ」
建築家になったきっかけ。俺が聞いた質問の答えに、ようやくたどり着く。
―――父が建築家だった、だから自然と建物に目が行くようになってね。
まとめれば、確かにそうだ。けれどその裏にはこれほどの葛藤が隠されていた。
「僕は、父が嫌いだ。でも、あれほどの建物を作った人だ。尊敬を、している。この気持ちは……嫌い、なのかな」
「お嫌いですか。それは、ほんとう、ですか」
ノアが尋ねる。
安西さんが黙る。長い沈黙の末に。
「嫌いだ。だけど、尊敬を、している。愛されたいと思っていた。僕は、父を……好きなんだろうね」
涙目で、ノアが笑った。
「はい。安西さんは、お父様が大好きです」
―――お嫌いだったのですか。
ノアが最初に呟いた言葉。お嫌い「だった」のですか。過去形だ。そこまでノアは見抜いていた。その勘の良さに総毛立つ。俺もノアのように人の気持ちに気づきたいと思っていたが、これほどのレベル、とても真似などできない。ノアの足元にも及ばない。追いつけない。
安西さんが目を上げて、ノアに聞いた。
「僕が作った中庭は……どう、かな」
ノアは手で涙をぬぐって、にっこりと笑った。
「私は、中庭が大好きです。晴れの日は、お昼ご飯を、中庭でいただきます」
「そう」
安西さんが微笑んだ。ノアがまばたきをする。
「何か、気になるところが、おありですか」
「うん……、いや、ごめんね。暑いよね。夏は、照り返しで教室が暑くなっちゃうでしょう」
うちの高校の校舎は、中庭をぐるりと一周囲むような構造になっている。中庭は総タイル張りだ。タイルの上に、腰の高さ程度の大きな丸い石やツノ状のオブジェなどが点在している。
暑い。確かに。夏はタイルが日光を反射し、教室内が暑くなる。中庭に面した窓際の席は敬遠される。少しでも照り返しを防ぐべく、夏は、たいていの教室でカーテンを閉めている。
何で中庭をタイルにしたんだ、どうせなら土のままにしとけばよかったのに。あんなオブジェ作って、意味ないよな。中庭作ったヤツ、何考えてんだろうな。有名な建築家だなんて言ったって、俺ら一般人にはよくわかんないよな。―――そんな生徒の声もある。
そんなことはないです、と声をかけようとした。しかしノアのほうが早かった。
「暑いですね。はい」
おいポンコツ。内心舌打ちする。どうすんだバカ。
「そうだよねぇ」
安西さんがため息をついた。
「ほんとは、芝生にしたかったんだけどね。メンテナンス費用を考えると予算がどうしても折り合わなくて。だけど、オブジェを置きたくてね。下が土のままだと、雨が降ったらオブジェが汚れてしまうでしょう。汚れてたら、誰もオブジェを使わなくなっちゃうから、だから、タイルにしたんだよね。今なら、照り返しを抑えるタイルなんかもあるし、もう少し暑さを和らげることもできると思うんだけど、僕も十年前は、まだ考えが至らなくてね。ごめんね。暑いよね、やっぱり」
思わず身を乗り出した。中庭設計の裏話が飛び出してきた。十年前のインタビュー記事には載っていない。これは記事の目玉になるか。
ノアが少し考えてから言った。
「夏は暑いのですが、でもですね、春と秋はとても良いです。丸い石が太陽で暖まりまして、抱きつくと気持ちがいいです。心があたたかくなります」
安西さんが目を丸くした。
「抱きついてるの? あの石に? 石の上に座ったり、寄りかかったりして、石の周りに集まってお昼ご飯を食べてくれたらいいなと思って、置いたんだけど」
中庭を設計した意図。外せない質問の二つ目に、勝手に話が飛んだ。
「はい。私だけではなくて、他の方々も石にくっつきたがります。お昼休みは、石の取り合いになりますね。みなさん、あの石が大好きです。私はなかなか石取り合戦に勝てませんので、放課後、石のところにいって抱きついております。あたたかくて気持ちがいいです」
俺は昼食を教室でさっさと済ませるが、昼休みの中庭はそんな状況なのか。へぇ、と内心呟く。
安西さんが笑った。
「そっか。それなら、良かったなぁ。夏は暑いけど、春と秋はいいんだね。冬はどう?」
聞かれたノアが困った顔をする。
「冬はやはり寒いですので、お昼も中庭ではなかなか食べられません。ですが、窓から中庭をみますと、心が和みます。丸い物というのは、いいですね。石がころころしていてかわいらしいです」
しばらく考えて、付け足した。
「私が、まだ一年生ですので、中庭に雪が降った状況を経験していなくてですね、これは希望なのですが、これからもっと寒くなって雪が積もりましたら、雪だるまを作りたいです」
「雪だるま?」
安西さんが不思議そうに聞き返す。ノアが笑顔で頷く。
「はい。あの丸い石の上に、ひとつ雪玉を置きましたら、雪だるまです。きっとかわいらしいです。楽しみです。ニンジンなど持ってきまして、鼻にして、作ってみたいです。大きな雪だるまができます。下がタイルですから、グラウンドよりは、きっと雪もきれいでしょうし、下の方まで雪が使えます」
安西さんが笑い出す。
「雪だるまかぁ。そこまでは考えてなかったなぁ。あのさ、他のオブジェは、どう? ちゃんと役に立ってる?」
「はい、ええと、あのツノのようなものはですね……」
ノアと安西さんの話が弾む。中庭設計の裏話が続々と出てくる。
その日のインタビューは予定の二時間を大幅に超え、三時間半に及んだ。
一通り話を終え、安西さんにお礼を言う。
「ありがとうございました。長い間、お時間をいただきまして、恐縮です」
俺が頭を下げると、安西さんが言った。
「いや、楽しかったよ。父のことがね、ずっとトゲになってたんだけど……トゲが抜けたっていうかね、トゲが溶けてなくなった気がするよ。うーんと、どうしようか、レコーダ止めちゃったし、記事を書くの困るでしょう」
確かに。三時間半の内容はさすがに全て覚えきれなかった。
俺が言葉に詰まると、安西さんが微笑んだ。
「滝川くんと上田さんがもし良かったら、だけどね。聞きたい質問だけ教えてくれたら、僕が自分で記事を書くよ。原稿用紙何枚分?」
ありがたい申し出に飛びつきたいものの、躊躇する。
「それは大変、助かりますが……安西さんのお仕事のお邪魔にはなりませんか。安西さん、お忙しいのでは」
「うん、忙しいのは忙しいんだけど、上田さんと話して心が軽くなったし、そのお礼も兼ねて、書くよ。実は僕ね、生徒会の書記だったんだ。僕もインタビューよくやってたんだ。文集も、毎年送ってもらってるよ。たまには寄稿っていうのもいいかなと思うんだけど、生徒会長としては、どうかな」
こんな有名な方からの寄稿。ありがたすぎる。
「はい、ありがとうございます。文集の目玉にさせていただきます」
「うん。そしたらね、何を書こうか」
ざっと、質問の三本柱と原稿用紙の枚数を説明する。できれば中庭設計裏話も添えてほしいことを、控えめに言っておく。
安西さんは楽しそうに笑った。
「了解、了解。そうだなぁ、文集でしょ。僕のころと変わってなければ、印刷に出すのが一月半ばあたりだから……十二月中には、原稿送るね。それでいいかな」
「はい。充分間に合います。本当にありがたいです。よろしくお願いいたします」
嬉しさに声が弾んだ。
「うん。こちらこそ、ありがとう。遅くまで話込んじゃって、ごめんね。気をつけて帰ってね」
「はい。ありがとうございました」
ノアと二人で安西さんにお礼を言って、安西さんの事務所を後にした。
腕時計を見れば、夜十時過ぎだった。さすがに遅いか。ノアを最寄りの地下鉄の駅まで送っていくことにする。
「お前、すごいな。ほんとすごかった。俺なんかよりよっぽどすごい」
隣をのんびり歩くノアを誉めると、ノアは目を丸くした。
「会長よりすごいとは、それは、ないと思いますが。誰よりも会長が、すごいです」
「まぁ、実務はそうかもしれんがな。人の気持ちを見抜くとこ、お前はずば抜けてるな」
ぽん、とノアの頭をなでる。ノアの巻いているマフラーが風でほどけそうになっていたので、手を伸ばして歩きながら結び直してやった。
「ありがとう、ございます」
ノアが嬉しそうに笑う。俺を見上げて、ためらいながら言った。
「あの、ですね。会長。もし、ご迷惑でなければ、なのですが。ほんとうに、もしよろしければ、なのですが」
何か言いたいらしいが、なかなか言い出さないので、促した。
「なんだ? 言ってみろ」
「はい、あの、ええと、クリスマスにですね、うちの両親が、会長を我が家にお招きしたいと言っておりまして。私の面倒を見てくださっているお礼をしたいと」
はぁ。
「礼は別にいらないけど。お前の面倒みてるの、仕事のうちだし」
「はい、お招きするのは会長にご迷惑だと、両親にも言ったのですが、両親がどうしてもと、言い張りまして。ですので、もし、よろしければ、ほんとうに、よろしければ、ですね。お時間をいただいてしまって、大変申し訳ないのですが、我が家のクリスマスパーティに来ていただきたいのですが、いかが、でしょうか」
ノアが不安そうに俺の顔色を窺う。
ノアの両親か。
―――私、養子なんです。
―――私は両親が大好きです。
行って、ノアは生徒会でよくやっていると親を安心させてやるか。
「クリスマスパーティって、いつ? 何時から?」
「あ、ええと、十二月二十五日です。クリスマス当日です。時間はですね、会長のご都合に合わせます、はい」
その日は何曜だったか。携帯電話を取り出してカレンダーを確認する。金曜か。ちょうど二学期の終業式の日だ。生徒会もそんなに忙しくないし、遅くならない時間に行けるか。
「ん。そしたら行く。何持っていけばいい? 食べ物とか飲み物とか」
父がイギリス人で母がアメリカ人。海外の風習はよく知らないが、とりあえずホームパーティのノリだろう。
「いえ、あの、会長はお客様ですので、何もご用意はいりません」
「ご馳走になるわけだから、何か持っていく。持ち込み不可のものとかある? お前の親って何が好き?」
食べ物を持っていったら失礼にあたる、などのルールがあるといけないので、聞いておく。
「ほんとうに、なにも、お持ちにならなくて良いのですが……、持ち込み不可のものは、ないです。はい。両親はお酒が好きです」
酒か。
「酒って、どういうの? ワインだったら甘口とか辛口とか」
「ええと、ウォッカと泡盛ですね。両親とも強いお酒が好きでして」
ウォッカに泡盛とな。ロシアと沖縄か。
「……ウォッカと泡盛って、なんか種類あるんだっけ。味の好みは?」
「好みは、特にないですね。強いお酒ならばなんでも好きです、はい」
「あ、そう」
ウォッカと泡盛って、普通の店に置いてるか? ネット通販で探してみるか。
「時間は当日までちとわからんな。わからんが、まぁ……夕方六時までには学校を出れるようにしておく」
「はい。では六時に学校を出ると両親に伝えます。ありがとうございます」
「ん。よろしく」
ノアを地下鉄の駅まで送り、俺はJRの駅に引き返して帰った。




