12.「彼氏彼女、親兄弟にも言うな」
12.体育祭二週間前、金曜日
翌朝、ノアを連れて登校した。昼休みに山本にキャラメルを五粒渡し、放課後は昨日と同じく、水原・沢野・俺、三人分の仕事をこなし、あっという間に定例会の時刻になった。
会議室に全員を集めて、恒例のチェックをする。今日中の仕事が終わってないやつ、期限の危ない仕事を持っているやつ。確認してフォローを割り振る。そして言った。
「生徒会メンバーはこの後、生徒会室に集合。これから十五分ぐらい、俺が部屋の扉空けるまで、生徒会メンバー以外は生徒会室に立入禁止な」
生徒会の二年が心得顔で頷く。一年はきょとんとしていた。
時間がないので、さっさと解散を告げて俺は生徒会室に引き上げる。生徒会メンバーがついてくる。扉の内側から鍵をかけ、声が外に漏れないよう部屋の奥に全員を集める。
「いよいよあれか」
「来たね」
水原と沢野がささやき合う。俺は声を抑えて告げる。
「応援合戦の審判決めだ」
途端に、二年が一斉に挙手する。
どういうことだと一年が戸惑っているので、まぁ待てと二年を抑えて説明する。
「毎年、生徒会から一人、応援合戦の審判を出すんだ。それを決める」
審判席は、各組が用意する応援ステージの真ん前に設けられる。応援合戦を間近で見られる特等席だ。
そして、各種係に追われる生徒会メンバーは、審判にならない限り、じっくり応援合戦を見ることはできない。去年は全員が立候補し、公平にじゃんけんで決めた。勝ち抜いて審判役をもぎ取ったのは俺だ。審判が各組の団員に惑わされないよう、審判が誰なのかは体育祭当日まで秘密にされる。
「勝負よ」
「今年は負けないもん」
「俺だって」
二年たちが色めき立つ。つられて、一年たちもやりたいと言い出した。
声を潜めて盛り上がる場に若干罪悪感を感じながら、俺は言う。
「あのな、今年はノアを審判にしようと思ってる」
皆の視線が俺に集まる。一番後ろに控えていたノアが、おののいた顔をした。
「か、会長、私にはそんな大役は、とても」
「いや。みんなわかってると思うけどな。俺達の中じゃ、ノアが一番感覚が鋭い。どの組が一番がんばってるのか正確に感じ取れるはずだ。審判役に適任だと、俺はみてる」
えー、と残念そうなブーイングが起こるが、まぁ確かに、と半数ぐらいのメンバーが頷く。
「お前らも、審判やりたいっていうよりは、応援合戦をちゃんと見たいってことだろ。だからな、どうしても見たいやつは、なんとか時間やりくりするから。まずは見たいやつ手ぇ上げろ。遠慮しなくていいぞ」
去年見れなかった二年のほとんどが、続々と手を挙げる。一年も数人、手を挙げる。
「三浦は? 見なくていい?」
聞くと、三浦はあっさり言った。
「去年見れたから、今年はいい。どうせビデオ撮るだろ」
「黒石は?」
「俺も、いいです。来年見ることにします」
そうか、と頷く。
「他、見たいやついない? 大丈夫か? ここで手ぇ上げなかったら応援合戦中の仕事割り振るぞ」
念を押すが、それ以上手は挙がらない。
見なくていいやつの数を数える。俺を入れて六人。これならなんとかなるか。
「よし。そしたら、今、手ぇ上げてるやつは、応援合戦中はフリーな。存分に見ろ。今年見た一年は、来年は他のやつに譲ってやれ。で、審判はノアだ。このことは当日の応援合戦開始まで極秘だ。資料にもノアの名前は載せるな。彼氏彼女、親兄弟にも言うなよ。誰かが洩らせばすぐ噂になる。ノアも、絶対、誰にも言うな。去年審判したの俺だから、質問があったら俺と二人きりの時に聞け。うっかり誰かに言ったら審判役代えるからな」
ノアを含め、全員が頷く。
「じゃ、解散。各自仕事に戻って」
はーい、といい子の返事をして、生徒会メンバーは仕事に舞い戻っていった。
次回、いよいよ体育祭当日です!




