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身体の節々が痛い。どうやら地面で何時間も眠っていたようだ。身を起こしながら、なんとか重い瞼をこじ開けると、明るい光の筋に刺され、思わず強く目を閉じる。
すると今度は鳥の囀りや川のせせらぎ、森が風に揺れている音が鼓膜を揺らす。
「…ん?なんだこの感覚」
目を覚ました時から身体が訴えてきている猛烈な違和感によって、朦朧とした意識が冴え渡っていく。
しばらくたって、漸く光に慣れた瞳を開けると、視界にあたり一面を鬱蒼とした木々に覆われた景色が入り込んできた。
「は…?なんだ…ここはどこだ?いや、それより昨夜は確か…」
確か、そうだ、そうだった。
脳内に朧げだった記憶が浮かんでくる。
カーテンを閉め切り、残飯やペットボトルが散乱する暗い部屋。その中で、唯一の光源であるデスクライトが照らす、大量の睡眠薬———。
思わず胃酸が逆行し、喉に切り付けられたような、鋭い痛みが走る。
「失敗した…のか。ちゃんと、量も調べたのに、なんでだよ…なんで」
形容し難い感情が胸を締め付け、目の前の景色を水に濡らしていく。
「やっと、終わったと思ったのに」
しばらくそうして嗚咽を漏らして、体内に溜まった澱みを吐き出している内に、瞼が重くなる。
眠ったのか、気絶したのか、とにかく無意識に意識を手放した。
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どれほど時間が経ったのかわからないが、目を覚ますと、既に温かい日差しが木々を照らしていた。
眠って少し考える余裕ができたからか、さまざまな疑問が浮かんでくる。
まず、どうしてこんな森の中にいるのか。見回してみても、目に入ってくるのは木々ばかりで、現在地を探す手掛かりは見当たらない。
冷たい風が木々を抜け、身体の熱を奪って通り過ぎていく。
「耳が痛い…って、服、なにこれ…マント?」
薄汚れた厚手のマントの中身は、シワの入ったベージュ色のチュニックで、さらにその下に目をやると、足には革製の靴下のような靴が嵌っている。
記憶の最後に残っている服装は、シルク素材のパジャマだ。こんな、バイキングが着ているような可笑しな服ではない。
それに指や手の腹に、こんな痛々しい古傷はなかった。気が狂ったのか、幻覚を見ているのか、もうわけがわからない。
「スマホは…ないな」
インターネットが使えないのなら、場所を確認したり、助けを呼んだりするためにも、森を抜ける必要がある。この奇怪な現象も、その後じっくり解決すればいい———そう考え、いち早く歩き出すことに決めた。
歩いて周囲を観察していると、とめどなく溢れてくる不安が、少しは鳴りを潜めてくれる。
どうやら周囲を囲んでいる木々は針葉樹のようだ。人工物のような物は、なに一つない。
身体に感じる違和感に慣れて感じなくなるほど、随分歩みを進めたが、森を抜ける気配はなく、ついに日が落ちてしまった。
月明かりだけが照らす真っ暗な森は、自分の内面を際立たせ、抱える恐怖心を膨張させる。
「もう歩ける明るさじゃないよな…」
木々の根に引っかかって怪我でもしてしまえば、このまま飢えと寒さを感じながら死ぬことになる。
「どうせ一回死のうとしたんだ。これ以上足掻く必要なんてないか…」
一つ深呼吸をして、木の幹に背中を預ける。
そうして、ぼんやりと真っ暗な中空を見つめて、どれだけの時間が経ったか。ゆらゆらと揺れる淡い光が暗闇に浮かんでいるのに気がついた。
こんな森で灯りを持って歩くような動物は、人間以外にいない。
(…こっち!!!)
急に大きな声を出そうとして、言葉が引っかかってしまった。それでも、苦しみたくない一心で残った体力を振り絞り、明かりがある方向へ走り出す。
人影が見えてきて、「助かる」そう思った瞬間、松明に照らされた巨影の造形が明らかになった。
そこにいたのは、見上げるほどの身の丈がある、巨大な二足歩行の豚だった。松明の光が反射した、獰猛な本能を映し出す瞳が、こちらの顔を凝視している。
数瞬、固まってしまった体をなんとか動かそうと思った時には、既に左肩を大きな手、それも人間の頭をトマトのように握りつぶしてしまえそうなほど大きな手に掴まれていた。
「たっ、たすけ…って…」
豚は、こちらの体を舐め回すように見て、生暖かく、湿気を感じる吐息を吐くと、大きな牙を携えた口内をゆっくりと露わにした。
喰われる———そう思って、無意識に目を瞑ってしまう。
「なんだ、獣じゃないんだ」
暗い森に、地響きのような低い音が響いた。
お目通しいただきありがとうごさいます。
完結を目指して書いていきますので、よかったらお付き合いください。
なろうの使い方はあまり詳しくないので、もどかしく思われるかもしれませんが、どうかご容赦ください。なにか気になるようでしたら、気軽に感想いただけるとありがたいです。




