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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第一章 転生…そして幼少期編

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第52話 魔王の奪還成功

アストリア王国軍の殲滅を終えたライトは、全速力で魔王ガルスの元へと向かっていた。


二対の翼を大きくはためかせながら空を駆ける。

だが、その胸中は晴れない。


先ほどから、ある思いが何度も頭をよぎっていた。


――俺は間違えたんじゃないか。


怒りに任せて王国軍を滅ぼした。

だが、本当に優先すべきだったのは違う。


父を助けることだった。

もし自分が離れている間に手遅れになっていたら。


もし、あの場で命が尽きていたら。


そう考える度に胸が締め付けられる。


殲滅そのものは一瞬だった。

だが今は、その僅かな時間すら長く感じられた。


「急がないと……」


ライトはさらに速度を上げた。


やがて、先ほど魔王ガルスを残してきた場所が見えてくる。


そこには既に一頭の巨大な竜がいた。

魔竜王デッカーである。


そしてデッカーは――


ガルスが収められている黒い特殊個体を巨大な爪でツンツンと突いていた。


まるで珍しい石でも観察しているかのように。


「あっ! デッカーさん!」


ライトは慌てて降下した。


「何やってるんですか! 父ちゃん大丈夫なんですか!?」


「……」


デッカーは答えない。


代わりにニヤリと口角を吊り上げた。


ライトの顔が青ざめる。


「ま、まさか……」


「クックック……」


デッカーは肩を震わせた。


「安心しろ」


そして大きく笑う。


「ガルスはまだ生きてる」


「――っ!!」


その瞬間、ライトは全身から力が抜けそうになった。


「よ、良かったぁ……」


本気で安堵する。


「こっちは親を殺したんじゃないかって、ずっとヒヤヒヤしてたんですよ!」


「ハッハッハ!」


デッカーは腹を抱えて笑った。


「育ての親とはいえ、父殺しにならなくて良かったな!」


「笑い事じゃないですからね!?」


そんなライトを見て、デッカーはますます楽しそうに笑う。


しばらくして、ふとデッカーが首を傾げた。


「そういやライト」


「はい?」


「その翼は何だ?」


「翼?」


ライトは自分の背中に手を回した。


指先に触れたのは柔らかな羽毛。


白。


そして黒。


光と闇。


相反する力が当然のように共存している。


「……え?」


さらに触る。


やっぱりある。


「え?」


もう一度触る。


確実にある。


「えええええぇぇぇぇぇっ!?」


自分の叫び声が戦場跡に響き渡った。


「クックック……」


「アーハッハッハッハ!!」


デッカー大爆笑。


「いよいよ人族やめたのかお前!」


「やめてませんよ!?」


「どう見てもやめてるだろ!」


「やめてません!!」


平和だった。

つい先ほどまで死闘を繰り広げていたとは思えないほど。


そのやり取りが、戦争の終結を実感させてくれる。


やがてライトは咳払いした。


「と、とにかく! デッカーさん!」


「ん?」


「父ちゃん運ぶの手伝ってください!」


「む?」


デッカーの眉がぴくりと動く。


「俺を何だと思ってる」


「友達ですよね?」


「違う」


「魔竜王ですよね?」


「そうだ」


「友達でもありますよね?」


「まぁ……」


「じゃあ友達が困ってるんだから助けてください」


「……」


「薄情な魔竜王だなぁ」


「ぐっ!」


痛い所を突かれた。


「わかった!」


デッカーは盛大にため息を吐く。


「全く、この俺様を運び屋扱いなんぞしおって!今回は特別だからな!」


「ありがとうございます!」


「ただしお前も来い!」


「何でですか?」


「お前が説明しねぇと俺が敵扱いされるんだよ!」


デッカーは遠い目をした。


どうやら先ほど仲間を運んだ際にも一悶着あったらしい。


「確かに見た目は悪そうですもんね」


「うるさい!!」


デッカーは特殊個体を鷲掴みにすると、そのまま飛び立った。


「早く来い!」


「はーい!」


ライトも翼を広げる。


そして後を追った。


道中。


ライトは新たに生えた翼の性能を試していた。


肩甲骨の辺りから伸びる純白の翼。


その下にある漆黒の翼。

二対四枚。


どう見ても厨二病全開だった。


速度は凄まじい。

細かい機動もできる。


そして何より目立つ。

滅茶苦茶目立つ。


「これ……一生このままだったらどうしよう……」


少しだけ泣きそうになる。


「恥ずかしいなぁ……」


そんな悩みを抱えながら飛び続ける。


やがて司令部へ到着した。

そこではデッカーが不貞腐れながら待っていた。


「遅ぇ!」


開口一番それだった。


「結局全部説明したぞ!」


「すみません……」


「討伐隊組まれる寸前だったんだからな!」


「それは本当にすみません……」


ライトは素直に頭を下げる。


デッカーは鼻を鳴らした。


「まぁいい」


そう言って立ち上がる。


「早く仲間の所へ行け」


「ありがとうございます」


「ガルスも心配だろうが、仲間もお前を待ってる」


ライトは頷く。


「また遊びに行きます」


「ああ」


デッカーは笑った。


「次はガルスも連れて来い」


「父ちゃんもですか?」


「病み上がりのリハビリに付き合ってやる」


「……」


絶対ロクなリハビリじゃない。


ライトは確信した。


こうして魔竜王と別れたライトは救護班へ向かう。

司令部の中は慌ただしかった。


戦争の後処理。


負傷者の対応。


補給の確認。


誰もが忙しく動き回っている。


だが。


「ライト様だ!」


「ライト様がお戻りになったぞ!」


「おおおおおっ!!」


一瞬で騒ぎになった。


ライトは苦笑する。

だが悪い気はしなかった。


長い修行を終え、ようやく帰って来たのだと実感できたからだ。


しかし今は感傷に浸っている場合ではない。


父の安否。


仲間達の容体。


それを確認しなければならない。


ライトは人混みを掻き分け救護班へ向かった。


建物の入口にはアローラがいた。


しゃがみ込み。


両手を組み。


祈るように俯いている。


極限まで心をすり減らした姿だった。


ライトは何も言わない。


ただそっと肩に手を置いた。


そして静かに中へ入る。


建物の中には…


黒い特殊個体。

そしてネイビーブルーの特殊個体。


二体の残骸が並べられていた。


その周囲ではシュプール達開発局が慌ただしく動いている。


「そこ~! 魔力回路切ってくださ~い!」


「室長! 爆発するなら先に言ってください!」


「そこ無理やり外すと自我なくなりますよ~!」


「えぇぇっ!?」


相変わらずだった。


だが頼もしい。


ライトはその輪へ近付く。


「シュプール!」


「おや~!」


シュプールが振り返った。


「ライト様お帰りなさ~い!」


「父ちゃんは助かるのか?」


その一言だけだった。


シュプールはニコリと笑う。


「大丈夫ですよ~」


その言葉に力強さがあった。


「難しいですけど~、切り離せそうです~」


ライトは胸を撫で下ろす。


「良かった……」


「お任せくださ~い!」


今は信じるしかない。

自分に出来ることはない。


ならば邪魔をしないことが最善だ。


ライトは静かに頷いた。

そして仲間達の病室へ向かう。


その途中。


鹵獲されたゴーレムが目に入った。


もし解析できたら。


もし量産できたら。


人的被害を大きく減らせるかもしれない。

前世では当たり前だった技術。


だがこの世界では違う。


戦争になれば誰かが死ぬ。


それが常識だった。


だから変えたい。


少しずつでも。


仲間達が死なない未来へ。


目標は――死傷者ゼロ。


そして何より。


ロボット軍団…


男の夢である。


「……これは絶対作りたい」


新たな野望を抱きながら、ライトは仲間達の待つ場所へ歩いていく。


救いたい父がいる。


無事を確かめたい仲間がいる。


そして。


この戦争の裏に隠された真実もまだ終わってはいない。


ライトは歩く。

希望の待つ場所へ向かって。

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