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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~良いとこどりで最強に育って無双します~  作者: ララ
第三章 レガリア編

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第144話 魔王国防衛戦

――アストリア王国


王都、王宮。


「…………」


玉座に座る国王の前。


一人の騎士が跪いていた。


「報告いたします」


「申せ」


「勇者フランジュについてですが……」


「…………」


騎士は僅かに言葉を詰まらせる。


「未だ、帰還しておりません」


「…………何だと?」


「魔王討伐へ向かってから、すでに数週間が経過しております」


「…………」


国王の表情が険しくなる。


「勇者ともあろう者が……何をしている」


「魔王国に潜り込ませている間者からも動きは無いと聞いております」


「…………」


「捜索隊を派遣しますか?」


「必要ない」


国王は冷たく言い放った。


「勇者フランジュは……魔王に殺されたのだ」


「…………!」


周囲の臣下達が息を呑む。


「魔王国が我ら人族の希望である勇者を殺した」


国王は立ち上がる。


「ならば――」


その顔に醜悪な笑みが走る。


「我々が仇を討つ」


「…………」


「全軍を動かせ」


「魔王国へ進軍する」


「はっ!」


臣下達が一斉に頭を下げる。


「勇者フランジュの仇討ちだ」


「魔王レイドを討ち――」


国王は拳を握る。


「我ら人族の誇りを取り戻せ!」


「――――はっ!!」



――魔王国


王都から遠く離れた地。


魔王城。


「――――ッ!」


一人の兵士が慌ただしく駆け込んでくる。


「ベイル騎士団長!」


「何だ、騒々しい」


玉座の傍らに控える魔族が顔を上げる。


「アストリア王国が……」


「…………?」


「軍を動かしました!」


「何だと!?」


「すでに国境を越え、こちらへ進軍しております!」


「…………」


魔族達の間に緊張が走る。


「理由は?」


「勇者フランジュの仇討ちだと……」


「…………」


魔族達が顔を見合わせる。


「勇者フランジュの仇討ち……?」


その言葉を聞いた瞬間、ベイルは王国の思惑を悟った……


「ありもしない事実で、我らの国を侵そうというのなら受けてたとう!」


「騎士団!迎え撃つぞ!」



――魔竜の洞窟


「……レイド様」


事態を伝えに来た魔族を前に、静かに思案するレイド。


「…………」


「俺が行く」


「…………!」


レイドが立ち上がる。


「王都へ戻るぞ」


「ですが、敵の狙いは恐らく闇のレガリア……レイド様は……」


「魔王国が攻められているんだろう?」


「…………」


「なら、魔王である俺が行かなくてどうする」


レイドは拳を握る。


報告を聞いたフランジュは黙っていた。


「アストリア王国が……俺を討つために軍を出したらしい」


レイドが言う。


「…………」


フランジュは俯く。


「私のせいですね」


「何?」


「私が戻らなかったから……」


「…………」


「私が貴方の討伐に失敗したと分かったから……」


フランジュは拳を握る。


「このままでは……」


「俺達は悪くない」


レイドが遮る。


「…………」


「お前が魔王国に来たことも」


「俺と話をしたことも」


「何も悪くない」


「…………」


「むしろ――」


レイドは笑う。


「ちょうどいい」


「え?」


「俺は魔王だ」


「…………」


「魔王国を守るのが俺の仕事だ」


レイドは立ち上がる。


「行くぞ」


「…………」


「魔王国へ」


フランジュはレイドを見る。


「……私も行きます」


「…………」


「私も戦います」


「お前は人族だぞ?」


「だから何です?」


フランジュは剣を握る。


「アストリア王国が私を殺されたという名分で、魔王国を攻めている」


「…………」


「そのせいで、魔族の人達が傷つく」


フランジュは真っ直ぐレイドを見る。


「それを……見過ごせません」


「…………」


レイドはしばらく黙っていた。


そして。


「……本当に面白い女だな」


「またそれですか?」


「褒めてるんだよ」


レイドは笑う。


「なら、一緒に行こう」


「はい」


二人は魔竜の洞窟を後にした。



――魔王国国境。


「――――撃てぇぇぇぇ!!」


ドォォォォン!!


大量の魔法が飛び交う。


「ぐああああっ!」


「押し返せ!!」


「敵軍を止めろ!!」


魔王不在の魔王国軍。


兵士達は必死に戦っていた。


だが。


「敵が多すぎる……!」


「アストリア王国軍……何という数だ!」


「このままでは王都まで……!」


アストリア王国軍は圧倒的だった。


整えられた軍勢。


地を埋め尽くすほどの兵の数。


その全てが魔王国へ襲いかかる。


「――――進め!!」


「魔王を討て!!」


「勇者フランジュの仇を討つのだ!!」


「――――ッ!」


魔族達は後退していく。


「王都へ連絡を!」


「急げ!」


「レイド様はまだか!?」



――その時


空が暗くなった。


「…………?」


「何だ?」


魔族も


人族も


一斉に空を見上げる。


「――――ッ!!」


巨大な魔力。


大地が震える。


「何だ……この魔力は……!」


そして。


黒い影が空から降りてくる。


ズドォォォォン!!


地面が大きく陥没した。


土煙の中……一人の男が立っていた。


「…………」


漆黒の髪


褐色の肌


額に浮かぶ第三の目


魔王――レイド。


「…………」


その隣に、白銀の鎧を纏った少女。


勇者――フランジュ。


「…………!」


魔族達が歓声を上げる。


「レイド様だ!!」


「魔王様が戻られた!!」


アストリア兵達もざわめく。


「勇者……?」


「なぜ勇者が魔王と一緒に……?」


「馬鹿な……!」


「勇者フランジュ!?」


「生きていたのか!?」


フランジュは剣を抜く。


「…………」


「アストリア王国軍」


「…………」


「今すぐ退いてください」


「何だと!?」


「私は生きています」


「…………」


「そして――」


フランジュはレイドの隣に立つ。


「この国を守ります」


「――――!!」


アストリア兵達が騒然とする。


「裏切り者だ!!」


「勇者が魔族に寝返ったぞ!!」


「魔王に操られている!」


「殺せ!!」


無数の兵士が突撃する。


レイドが笑った。


「フランジュ」


「はい」


「遠慮するなよ」


「もちろんです」


二人が同時に踏み出す。


「――――ッ!!」


レイドの魔力が爆発する。


ドゴォォォォン!!


巨大な黒い魔力が敵陣を吹き飛ばす。


「ぐああああっ!!」


「何だ、この魔力は!?」


その隣でフランジュの剣が閃く。


「――――はぁっ!!ピアスオブライト!」


ガキィィィン!!


敵の武器を弾き飛ばす。


「速い!」


「勇者だ……!」


「本物の勇者フランジュだ!!」


戦場が一変した。


魔王と勇者。


二人の圧倒的な力によって、アストリア王国軍は押し返されていく。


「――――退くな!!」


「勇者を討て!!」


「魔王を殺せ!!」


だが。


「遅い」


レイドの拳が兵士を吹き飛ばす。


「――――ッ!!」


フランジュの剣が大地を裂く。


「ここから先へは――行かせません!」



――数時間後


「…………」


アストリア王国軍は完全に後退していた。


魔王国軍が追撃する。


「勝った……」


「我々が……」


「レイド様が戻ってきてくださった……!」


魔族達から歓声が上がる。


その中心。


レイドとフランジュ。


「…………」


フランジュは息を整える。


「これで……」


「終わったな」


レイドが答える。


「…………」


だが、二人は知らなかった。


この戦いの最中、アストリア王国軍の中に――


一人の魔導士がいたことを。


「…………」


その魔導士は、戦場の隅からフランジュを見ていた。


そして、フランジュが敵兵に囲まれた瞬間。


「――――ッ!」


彼女の身体が光に包まれる。


「…………!」


白銀の光。


眩いほどの神性。


フランジュの剣が――光そのものへと変わる。


「――――光のレガリア」


魔導士が呟いた。


「…………」


フランジュは知らない。


自分が何者なのか。


自分の力が何を意味するのか。


ただ。


守るために力を解放した。


「――――ッ!!」


一閃。


光の奔流が戦場を駆け抜ける。


敵兵達が吹き飛ぶ。


「…………」


魔導士は震える手で魔導具を握る。


「記録……」


「すぐに記録しろ……!」


「光のレガリア保持者を確認……!」


「勇者フランジュ……」


その名を記録する。


「光のレガリア――」


「フランジュ」



――アストリア王国軍、撤退中。


「…………」


馬車の中。


先ほどの魔導士が震える手で報告書を書いていた。


【勇者フランジュ、生存】


【魔王レイドと共闘】


【光のレガリア保持者であることを確認】


そして、最後の一文。


【アストリア王国の当初計画とは別の価値を持つ可能性あり】


「…………」


魔導士は唇を噛む。


「勇者が……レガリア保持者だった」


「…………」


「ならば――」


この情報が王都へ届けば。


必ず、国王だけではない。


王国の研究者達も。


ツヴァイス神聖国も。


動く……



――魔王国


戦いが終わった夜。


戦場跡で焚かれた大きな焚き火の前。


レイドとフランジュは並んで座っていた。


「…………」


「まぁまぁ疲れたな」


レイドが言う。


「そうですね」


フランジュは小さく笑う。


「でも……」


「ん?」


「守れました」


「…………」


「魔王国を」


レイドは笑う。


「ああ……お前のおかげでもある」


「…………」


フランジュは炎を見る。


「私は……」


「どうした?」


「今日、力を使いました」


「…………」


「光のレガリアを」


「…………」


レイドは何も言わない。


「誰かに見られていた気がします」


「…………」


「もし……」


フランジュは拳を握る。


「王国に知られたら」


レイドの表情が変わる。


「…………」


「私も……狙われるのでしょうか」


「…………」


「恐らくな」


レイドは静かに答える。


「だが――」


「俺達はもう知っている」


「…………」


「何を?」


「敵が何を狙っているのかを」


レイドは炎の向こうを見る。


「ならば――」


「こちらも準備するしかない」


フランジュは頷く。


「はい」


だが。


二人はまだ知らない。


この日。


アストリア王国に――


「光のレガリア」の存在が知られたことで


王国の狙いが、レイド一人から――


二人へと変わったことを。


そして。


光と闇。


二つのレガリアを同時に手に入れるため


アストリア王国とツヴァイス神聖国が――


新たな計画を始めることを。


――三百年前


勇者と魔王は、共に戦った。


だが、その戦いこそが二人の運命を大きく変える――


最初の一歩となった。

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