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EP71 最悪な出会い 中編

架空の星座としてランプ座というのを設定しています。星座に関してはのちに説明をするつもりです。


「え?え?……なななな、何なのこれ!?何なのこの格好……!?マーシー・ノアって何?」


混乱しているマーシーをよそに俺は観察と分析を進める。ステッキの先についているレリーフ的に、加護をもたらしている星座は、ランプ座か……。

 魔法少女の術式構築には、占星術師の預言と協力を得ており、魔法少女は対応する星座の運命の加護を受けている。ランプ座による加護の内容と、能力は気になるが今は無視しよう。


「マーシー……もろもろの事情は後で説明する。鋼魔獣からの分離は時間との戦いだ。場当たり的にはなるがこのまま戦闘に入る」


「うわっ!?あ、あなたさっきの人よね?その姿何なの……ううん、お母さんたちを助けるにはやるしかないのね……?」


甲冑を着たような姿に様変わりした俺を見て、彼女の疑問の対象が俺に切り替わりかけるが、目的のことを思い出し俺の言葉に従ってくれる気になったようだ。


「ああ……鋼魔獣が取り込んだ存在を分離するには魔法少女……お前の魔力攻撃を当てる必要がある。何か攻撃魔法は使えるか?」


「ううん……使えないかも……どうしよう!?」


彼女は両親の救出手段がないことに焦りを見せる。


「分かった。お前の持っているステッキには魔法弾を打ち出す機能が備わっている。先に俺が先行してあの鋼魔獣を抑えておく……お前はステッキに魔力を流すことを意識して、ゆっくりでもいいからやってみるんだ」


「わ、分かった……やってみる……」


知性妖精なら生活魔法は使えるはず、となればステッキに備わっている補正機能と合わせてすぐに必要な水準に達することができるはずだ。


「では、先行する……」


「ちょ、ちょっと!?」


不安げな声が背中にかかるが、俺は無視をして敵に向かっていく。俺が離れるのが不安なのだろうが今は確実に奴を引き付けておくのが、マーシーのためにも一番いい、彼女の目的を果たすには、彼女の適応力を当てにするしかない。


「うわーっ!」


「誰かーっ!?」


現在進行形で、取り込まれてしまっている妖精たちの叫び声が聞こえる。このまま好きにさせては敵の危険度が上がる一方だ。妖精の救出は俺の目的ではないが放置する理由もない。


「イヤ……!」


“ザッ!トンッ!”


恐怖でうずくまり、されるがままになってしまっている、女性型の妖精を先ほどリヴァリエにしたのと同じように、抱き上げて飛びのく。


「逃げろ……ここから離れるんだ……」


「あ、あなたは……?」


「何でもいい、早く逃げろ!」


俺は呆けているその妖精に、安全圏に逃げることができるほどの魔力を分け与えて、できるだけ強い声で圧力をかける。


「は、はい~!」


俺の叱責で防衛本能が起動したのか、その女は立ち上がってよろよろと歩いて逃げ出す。


「ガァァアア!!」


鋼魔獣は狙った獲物を逃がすまいと、炎を吐く。


「効かないぞ、学習しないな」


俺は両者の間に入って、マントで炎を防ぐ。そのマントは俺を構成するパーツの中でも特に強力なものだ。最高級の魔法素材に強力なレジスト系の魔法術式が編み込まれている。重量比、エネルギーパフォーマンスでみた時、その防御力は考える限り最高だ。

 それにしても、鋼魔獣は生命取り込むのが第一の目的のはずだが、それを半ば無視して相手はあの妖精を殺そうとした。

 鋼魔の持つ有機生命への殺意が大きいということか、それともすでに満腹になり始めているのか。いずれにしろあまり時間はないようだ。


「フッ……!」


“ガィンッ!”


俺は、両足での速度を乗せた拳を、相手の顔面にぶつける。周囲に鈍い金属音が鳴り響く。硬い金属同士の激突になったが、歪んだのは相手の内部骨格だけだ。


「グワァ……!」


 ダメージを与えた証拠に、敵は大きな呻き声をあげる。こちらの機体硬度は、想定通りの完成を見ているようだ。さすがパラレスといったところか……。

 また、契約が成立したからか、デマンド・サーキットが出力する魔力も向上しているようだ。しかしこちらの方は想定していた水準に達していないようだ。契約対象……マーシーのメンタルの状態が関係しているのだろうか?

 今こちらの持っている最大の攻撃手段は、魔力を流した刀での斬撃だろう。しかし、取り込まれている人間の救出を目的とする場合、相手の体内にダメージを与えるような攻撃はできない。


「ガァアアアーーー!!」


 敵鋼魔は、翼を兼ねた前脚を振り上げ、こちらに振り下ろしてくる。


「くっ……!」


飛び退くことで俺は、回避に成功する。しかし、風圧と衝撃が俺の身体を震わせ、動きを鈍らせてしまう。相手の攻撃能力も、侮ることができないようだ。

そうなると、相手に消化を終わらせるまでの猶予を与えるのは悪手だ。最悪討伐不能の強さに成長してしまう可能性がある。


「ぬぅ……」


 腕に力が入る。討伐を優先して、ここで勝負を決めてしまうべきか?俺は自問する。……いや、止めておこう。約束を違えるようなことをしては、契約対象との信頼感を損なう恐れがある。俺の最終目標を達成するのに、ここで相手を討伐するのは絶対条件ではない。少し耐えてみよう……。


「光魔法……!」


“ピカーー!!”


俺は時間稼ぎのために、刀を媒介にして魔法を行使して、閃光を放ち、目くらましをする。


「……!!グガァーーー!!」


「……ッ!?」


相手を牽制したつもりだったが、逆に相手を怒らせてしまったようで、敵は火炎放射をでたらめに吐き、辺りの瓦礫を弾き飛ばしながら大暴れしてしまう。


「ア゛アァーーー!!」


飛んで行った瓦礫が、敵の力場で動けなくなっていた妖精を押しつぶしてしまう。破裂音にも似た低い断末魔が聞こえる。おそらく絶命してしまったことだろう。知性妖精に被害が出るが、吸収されるよりはマシか。

 俺がそう考えている時だった。


「これ以上、させない!」


“ズドンッ!!”


声が聞こえるのと一緒に、俺の脇を桜色の光弾が敵に殺到していき、着弾する。


「グガァッ!?」


大きな衝突音とともに、竜の鋼魔がひるんであとずさりすらする。リンクが繋がって、すぐそばにある強大な魔力を感じる。想定よりも、ずっと大きい。そして早い。

 プラスの方向だったが完全に想定外で、俺は一瞬硬直してしまう。


「なんか、頭に響いてきたの魔力弾ってこれでいいんだよね……?」


その攻撃を放った張本人が、前へ進みながらこちらに声をかけてくる。


「…………」


「ちょ、ちょっと!?どうしたの?大丈夫?」


「……ああ、言うことはない。ほぼ完ぺきだ……」


あまりの出来事に、一瞬思考が停止してしまっていた。彼女の声掛けで我に返る。

いかん……魔法装置である俺が、生物のように動揺するなどあってはならないことだ。

俺は、そう自戒して鋼魔へと意識を向けなおす。


「今の攻撃を続ければ、お母さんたちを助けられる……のよね?頭の中にそんな感じの声が聞こえてきたの……あってるんだよね?」


彼女はステッキを敵に向けることこそやめていないが、声が尻すぼみになり、立ち姿も腰が引けてきているようだ。今のは、勢いに任せたまぐれということだろうか?


「ああ、そうだ。今の俺とお前の精神はその一部が繋がっている状態にある……頭の中で声が聞こえたとしたら、それは俺の声だ。当てにしてくれていい」


俺は、本題を話す前に精神リンクについての説明をしておく。彼女の混乱を避けるためだったが、俺自身未知の体験だったので、俺のためでもあった。


「精神って心がつながってるってこと?念話みたいに?」


マーシーの口から出たのは、念話という情報伝達魔法の話だった。厳密には違うと言えたが今はその程度の理解で十分か……。

 それにしても、何とも形容しがたい感覚だ、流れてくる情報は抽象的で、あいまいでグラデーションに富んでいる。定義づけたり区切ったりすることができない。正直もどかしい。しかし、自分はこんな曖昧なものと付き合っていかなければいけない。


「そう考えてもらっていい……これからは情報面の補完を思考を介して行う。そのつもりでいろ」


「わ、分かった!でも、その小難しい話し方、やめてくれない!?ただでさえ頭の中余裕ないのに……キャ!?」


「グゥオッ!」


マーシーが話し終える前に体勢を立て直した敵が、腕を振り払う反撃を行ってくる。彼女が狙われているようだったが彼女は足がすくんでろくな回避行動もとれないようだ。


「させん!」


俺は刀を掲げながら割って入り、彼女を庇った。二本の刃の切っ先を敵の指の間に差し込んで、その動きを止める。


「攻撃は、必ず俺が防御する。お前は距離を開けても、威力が出なくてもいい。ただ攻撃の手だけは緩めるな!」


「で、でも……私……」


俺は、後ろのマーシーを見ずに声をかけるが、本人の言う通り今の彼女には余裕がないのだろう。生命の危機の渦中に自ら飛び込んでいるのだ、キャパシティーを超えるストレスがかかるのは無理もない。だが、魔法少女の攻撃を当て続けて消化を阻害することは取り込まれた者たちの救出に必須だ。


「お前は、俺が守る……!俺を信じて、やることだけを考えるんだ」


彼女の頼み通り、必要な情報を絞って伝える。俺は魔法少女を守るために造られた。どんな状況であれ、俺は彼女を守り抜くことができる。パラレスは優秀な錬金術師だ。自分の性能まで疑う必要はない。

 その俺の自信というべきものが、彼女にも伝わったのだろう。その精神の動揺が収まり、思考がクリアになっていくのが伝わってくる。


「分かった、頑張る!」


 リヴァリエは両足に力を入れ、ステッキをまっすぐ構えた。



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