541 セレンシアダンジョン 初入塔
ここから新章としました。
セレンシアダンジョン。
それは王都の中にある塔の形のダンジョンだ。
塔は、とても高く、雲を突き抜けてさらに高くそびえている。
入場するには冒険者のライセンスが必要。
あとは自己責任。
とはいえ、一応ランクによって推奨階とか上限の目安はある。
ギルドではさまざまな情報を提供しており、魔獣の種類や強さ、ドロップする物、罠の種類、そして地図など、わかる範囲で貴重な情報を提供している。
上に行けば行くほど、地図は役に立たない。ダンジョンは勝手に通路を作ったり変えたりしてしまうからだ。
これは他のダンジョンでもほぼ同じ。
奥に行けば行くほど魔素が濃くなり、魔獣も強くなる。
このセレンシアダンジョンの場合も、ジオのダンジョンと同じく1階に転移魔法陣があって、踏破した階はスキップできるし、フロアボスを倒すと階段が現れて、上の階に行ける。
セレンシアの場合はジオとは違い、各階に転移魔法陣があるし、さらに「セーフティーゾーン」というのが各階2つか3つある。そこにたどり着ければ、転移陣があるので、1階に戻ってこれる。
それから、「帰還石」というのが売っていて、高価で使い捨てだが、どうにもならなくなったときは、帰還石を割ると転移魔法陣が現れるので、1階にもどれる。
この帰還石というのは、セレンシアダンジョン用に特化しており、もし他のダンジョン用があったとしても、セレンシアでは役に立たない。
帰還石さえあればいつでもどこでも1階に戻れるから、そういう点ではジオのダンジョンより気が楽だ。
なお、セレンシアでは、帰還石は低層階の宝箱で時折ドロップする。真面目にやっていれば、2階や3階層で5回に1回の割合でドロップする。売れば薬草よりそれなり高く売れるので、駆け出し冒険者にとってはオイシイ戦利品である。
実はヴィルド近くにあるジオのダンジョンは、ダンジョンの中でも難易度は高かった。それはひとえにこうしたスキップができる帰還方法が少なく、転移魔法陣が5階ごとしかないことが原因のひとつだ。とにかく魔法陣があるところまでたどり着くか、ひたすら歩いて戻るかしか、方法がないからだった。
このセレンシアダンジョンの9階には、大きなセーフティーゾーンがあって、多くのパーティーが何日も野営している。上級パーティーは此処を拠点にさらに難易度の高い上層階を目指すし、中級や低級パーティーはひとまず此処を目指して登ってくる。いわば冒険者のレベルを計る基準となる階層なのだ。
入場受付は1階の中にある。
1階は広場になっていて噴水があり、受付があるほか、ギルド公認の屋台まであって、パーティーの待ち合わせ場所にもなっている。
「へえ。ダンジョンの1階層なのに、まるで街だねえ。」
『まったくだ。』
受付で初回入塔料の700ルビを払い、入塔カードを貰ったり、諸注意を聞かされたりと、ジオのダンジョンと同じような手続きがあった。ジオは、入場料は500ルビだったが、此処は王都だからか、ちょっと高い。それでも、最初だけなので良心的といえる。
あとは入場ごとにその気があれば寄付する方式で、お金が無ければ寄付せずともよい。これはジオも同じだった。見ていると10ルビとか50ルビ程度を入れているようだ。
冒険者は験を担ぐ。心付けを入れると、きっと無事帰ってこれると信じられているそうだ。
「此処は転移魔法陣が各階層にあるし、セーフティーゾーンまであるんだね。」
僕はダンジョン受付で貰った地図兼ガイドパンフを広げて見ながらシンハに言った。
『ああ。セシルとは3階層までだったが、レスリーとはもっとずっと上まで行った。よく行ったのは、滝があって、冒険者たちが野営できる場所があった階までだ。レスリーが欲しい薬草があったのでな。』
「へえ。それ、9階だよ。滝が名物で、キャンプ村もあるんだって。薬草は何だったの?」
『よくおぼえておらんが、たしか大きな白い花で赤いまだら模様のあるやつだった。ランペリとかドンペリとかいう』
「あーもしかするとランドルペリニウムかな。食虫植物で、花が筒状で大きくて、結構においが強烈なやつ。」
百合のお化けみたいなやつだ。薬草だが毒草でもある。
『そうだ。それだ。あまりの臭いに、俺は風魔法を使わないと近くに行けなかった。』
「なるほどね。急ぐつもりはないけど、皇太子殿下との約束もあるから、9階層のキャンプ場までは行かないとね。」
『9階ならワイバーンもいるのだったな。』
「うん。でも本格的なのは22階。それと…大型種は40階だね。あ、6階の海のエリアにも、たまに崖にワイバーンが居るって。」
『むう。40階まで行きたいが、まずは22階を狙うか。』
「いやいや、まずは6階でしょう。クラーケンも居るって書いてあるし。美味しそう!」
『…。でかいクラーケンのばけものを単なる食料としてみているのは、冒険者でも少ないと思うがな。』
「えーそうぉ?」
『まあ、確かにあの程度なら俺たちの敵ではないし美味いから、狩るのは賛成だ。』
シンハは僕の言動に呆れながらも、尻尾をブンブン振ってゴキゲンだ。
「じゃあまずは6階、それから9階目指して行ってみよう!」
『おう!』
などと張り切って入っていく。
2階。通称通路階。迷路ではあるが、簡単。スライムが出る。
「ちょうどいいから、水スライムの体液を採ろうかな。ゼリー作りたいし。」
『ああ。あれか。冷やすと美味いな。』
「電撃で麻痺させて、体液だけもらおうか。」
『狩らないのか?』
「無益な殺生は控えましょう。」
『ふ。どの口が言うのだ?スタンピードで2万匹も昇天させたくせに。』
「あれはあれ。ゼリーはゼリー。」
適当に電撃で麻痺させて太い注射器で体液を適当に抜き、放してやる。
ちなみにスライムには痛覚はない。
30匹ほどそうして、次の階へ。




