W 第一部 第二話 63
ショールはパニックを起こしていた
どうしてこうなった
本来なら、国の意思に反しシン国王のUA加入を手助けしたアリサを告発し、自分が大使の任に就くはずだったのに
それが、後ろ盾になるはずのジョンが死に、そして目の前には剣を持ったアリサがこちらを侮蔑した目で見てきている
どうしてこうなった、どうして、どうして、どうして、どう・し・・・・て
アリサの剣がショールの胸を貫いていた
「きゃあああああああああああ」
再び、あちらこちらから悲鳴が上がる
なんだこれは、いったいどうなっているんだ
あまりの衝撃にヘラクレスの思考は止まっていた
「はやく、警備のものを、はやく」
井坂が机をたたいて叫ぶも聞く者はいない
皆、我先にドアから逃げようとして
「はやくにげろー」
「ちょ、なにすんのよ」
「どけ、貴様」
「なにするんざますか、私を誰と心得て」
「知らん」
ある者は押しのけ、ある者は先行くものを引っ張り、ある者は権威をかざして
自分だけは助かろうと醜い争いをしていた
「はあ」
近くにいる者を剣で切り捨てながらアーサーはその様子を見ていた
そんなことしなければ、もっと早く逃げられるのですが
アーサーは逃げるものは追わず、逃げ遅れた者達に剣を振るっていた
「やった」
一人の男がようやく、会議場の扉の前に到着する
しかし
「っ、開かないぞ」
扉には鍵がかかっていた
ドンドンドン
「開けてくれ、中に人殺しがいるんだ、早く開けてくれ」
すると
カチ
扉の鍵が開いた
急いで男はドアを開けて外に出る
「た、たす・・か・・・た」
外に出た瞬間、男はマリオネットのような踊りをしたあと事切れた
「へ・・・・・」
会場からはもう悲鳴すら上がらなかった
ドアの前には、機関銃を持った白髪の男が立っていた
男は何も言葉を発さずに、引き金を引いた
床が赤黒く染められた頃
会場内には井坂とシン意外に生きている者はいなかった
「こは・・く」
井坂の口から白髪男の名前がこぼれた
「なにをしている、警備のものは」
「死にました、全員」
「っ」
井坂の目には恐怖以外の感情が宿っていなかった
そこへ
「ヘラクレス様」
女性の声が会場中に響いた
「っ」
呆然自失していたヘラクレスがその声の方へ視線を向けた
「ヘラ」
そこにはヘラと黒髪の男が一人
「やっと来たのか、マカミ」
アーサーがその男の名前を呼んだ




