W 第一部 第二話 56
「あははははははははははは」
甲高い笑い声が部屋中に響く
昨日の夜
春樹との電話を終えた秋は意気消沈していた
そこへ
「入るよー」
冬華が入ってきた
「具合は大丈夫ー」
心配そうな顔をして冬華が見てくる
「ああ、もうすっかり大丈夫だ」
笑顔を作ってみせるが、冬華の顔から心配はなくならなかった
「ふ」
優や彩夏のようにはできないな
秋は自嘲気味に笑った
そんな秋の手を冬華はそっと包み込んだ
「何かあったら言ってねー、私じゃあ頼りないかもしれないけどー」
あったかい、とても
秋の目から涙があふれてきた
ひとしきり泣いた後、秋は冬華にある提案をされる
その後、秋の体から心臓から抜き取られた
「ばっかじゃないの」
床に倒れる二人には聞き捨てるように言った
「秋を殺したのも、これからあなた達を殺すのも私だよ」
今までのおっとりした冬華からは想像もできないほどの残虐な笑みを浮かべながら、
懐から、包丁をとりだした
「何人か道連れにしてくれると思ったから、教えてあげたのに、本当使えない男」
冬華は自分のお茶を飲み干すと、一歩一歩、彩夏の方へ近づいていき
さあ、彩夏からはどこをいただこうかしら
しなやかな筋肉、それともきれいな目かしら、いっそ赤髪もいいわねえ
冬華が彩夏へ包丁を振り上げようとしたその時
キン
紫がかった黒い剣が冬華の包丁を弾き飛ばした
「嫁入り前の女の子に傷つけないでくれるかな」
「っ」
冬華の目の前には、睡眠薬を飲んで倒れていたはずの優が立っていた
「どうして」
冬華が優を睨みつける
「君のお茶なら飲んでないよ、口に入れただけで、倒れた時にだしちゃった」
あっけらかんとした口調で言ってくる
パッと見、隙だらけに見えるけど、優に意識は一瞬たりとも冬華から離れていない
「どうして、わかったの」
「理由はいっぱいあるんだけど、一番は高宮が来たことかな」
「それで、なんで私が秋を殺したことが分かったの」
優は一瞬笑みを浮かべて言った
「高宮はたぶん地球サミットの警備を抜け出してここに来たんだと思う、このホテルから旅館よりもサミット会場の方が近いのに高宮はぼく達よりも遅かったてことは」
「高宮にメールを送ったのは、私たちがメールを見た後になる」
「そう、そして誰にも気づかれずにそれができたのは」
「待機していた私だけってことか」
冬華が自嘲気味に笑う
策士策に溺れるね
ちょっと勿体なかったけど、一人で三人も相手するのはつらいから秋にご執心だった高宮を送り込んだんだけど
誰も殺せずに殺されて、挙句の果てにそれで自分が犯人と特定されてしまうとは
「君はここ最近の連続女性殺害事件の犯人だね」
「うん、そうだよ」
冬華は満面の笑みでうなずいた
「どうして私が女性達を殺して、体の一部を奪っていたか知りたい」
冬華が無邪気な子供のように言ってくる
「知りたいけどやめとくよ」
優は満面の笑みで冬華を見る
「だって君、誰かにメッセージ送ったでしょ」
「っ」
冬華は優に包丁を弾き飛ばされた時、とっさにポケットの携帯からメッセージを飛ばしていた
普通の動体視力なら気づかないほどのスピードだったが銃弾を受け流すことができるほどの動体視力を持つ優にとってはそこまでのスピードではなかった
「仲間が来る前に手錠をつけてほしいんだけど」
優の目は警戒している
最初からおとなしく捕まるなんて思ってないってことだね
ピンポーン、正解
「もうすぐかな」
「もうすぐ」
意味不明な言葉に優の警戒が強くなる
すると
「来た」
冬華は再び残虐な笑みを浮かべた
「ふゆかあああああああ、きさまあああああああ」
突然の絶叫に驚き優が冬華の後ろにあるドアの方へ目をやると
怒りの形相で冬華へ拳銃を向ける春樹がいた




