74/175
W 第一部 第二話 52
「いいんですか、勝手なことして」
ハットを被った赤髪の男が電話をしながらエレベーターに乗っていた
「騒ぎになったら支障が出るだろ、あくまで任務遂行のためだ」
「本当ですかー」
子供のような声の電話相手が疑ってくる
「うるせえな」
「まあ、いいですけどー」
ちーん
エレベーターが目的の階へ到着する
「いよいよだな」
「そうですね」
今まで軽口をたたきあっていた二人に緊張感が宿る
男はエレベーターを降りはまっすぐエントランスを目指す
ロビーでは宿泊客たちが新聞を読んだり、昼寝したりしていた
さっきまで上でドンパチやってたってえのに、のんきなやつらだぜ
自動ドアを抜けると、何の変哲もない光景が広がる
「代わり映えしない景色だな」
「今日までですよ」
悲しそうな声が受話器から聞こえた
「ああ、そうだな」
男もまた、同じ声を発していた
本当にお前はこれでいいんだな
男は既に電話を切っていた




