W 第一部 第二話 45
「ここね」
アールホテル301号室
冬華の携帯に送られてきたメールに書いてあった場所である
「早く入るぞ」
「待ちなさい」
「なんだ」
急いで部屋に入ろうとする春樹の肩を彩夏がつかみ、止めるが
春樹は苛立ちを隠さずその手を払いのけた
「中で武器を持った犯人が待ち構えてるかもしれないわ、ここは冷静に」
「なら、俺が先頭で入る、お前らは後から入れ」
春樹が大声を上げる
まずいわね
完全に正気を失ってるわ
こんな状態で中に入って、もし敵が待ち伏せしていたら、春樹は
もし、秋を無事に保護できても、春樹にもしものことがあったら
彩夏は拳銃を握る手に力を込める
この錯乱状態の春樹なら
足音を立てないように少しずつ、少しずつ、春樹の後ろに回る
いける
彩夏が春樹を気絶させようと手を振り上げた瞬間
「まって」
優がその手を止めた
「優、今の春樹は危険よ、とてもじゃないけど」
「わかってる」
優と彩夏は春樹に聞こえないように小声で話す
「ぼくがカバーする」
「それじゃ、あんたが危険になるでしょうが」
相手の正体についてこちらは何もわかってない、未知の相手
こういう状況では一瞬の判断が生死を分ける
そんな時に、人のお守なんてしていたら
「大丈夫、これがお別れかもしれないから」
お別れって
その意味は彩夏にもわかっていた
わかってはいたが、深く考えないようにしていた
優の顔には覚悟があった
「ふ」
あんたは、本当に強い子ね、初めて会った時から
「わかったわ、私もサポートする」
「うん」
二人がうなずくのと、春樹がドアを開けるのは同時であった
ドアを勢いよく開けると同時に三人は部屋に飛び込んだ
部屋には誰もいなかったが、机の上にカップが三つ置かれていた
敵は三人
隠れられるところと言ったら
彩夏がバスルームとクローゼットを見る
優も同じ意見らしく、二人は目を見合わせると
優はクローゼット、彩夏はバスルームへ突入しようとするが
春樹がベッドの方へ走り出した
「ちょ」
止めようと、春樹の肩を掴もうとしたが、遅かった
春樹が向かうベッドの上にはアリサ大使の変装をして横になっている秋がいた
「あ、秋」
春樹が急いで秋に駆け寄る
彩夏と優は秋の顔を見て一瞬ホっとするもすぐに周囲を警戒する
駆け寄った春樹は、秋の体を揺らすが秋は一向に応えない
「っ、あき、あき、あき」
春樹が大声で呼びかけても答えない
周囲を警戒する彩夏と優の鼓動も早くなる
春樹は秋にかけてあった毛布をはぎ取ると
「っ」
そこには生まれたままの姿の秋がいた
白いベッドを赤く染めて
「あああああああああああああああああああああああああ」
春樹の叫び声が部屋に響き渡った




