W 第一部 第二話 38
夜が明けた
春樹が起きた時にはすでに部屋の中には誰もいなかった
机の上に一階で朝ご飯を食べてくるとメモが置いてあった
恐らく、アリサ大使も一緒だろう
昨日はサミット会場の警備をしていたためあまり寝ていない状態でアリサ大使の護衛の任務に就いていた
眠気は特に感じていなかったが、どうやら疲れていたようだ
優達はたぶん一階のレストランだろう、いまから行って一緒に食事をとるか、それとももう少し寝るか
春樹が後者を選んでもう一眠りしようと横になろうとしたその時
ヴィーン、ヴィーン、携帯に着信が
彩夏からだった
「どうした、彩夏」
「春樹、大変よ」
彩夏は明らかに慌てていた
「どうした」
「秋がいなくなったのよ」
「・・・・・え」
春樹の手から携帯が落ちた
優達はレストラン一階で朝食をとっていた
「春樹さん遅いですね」
ミーサが腕時計で時間を確認する
「一昨日、サミット会場の警備してたから、寝不足なんじゃない」
「ですが、そろそろ出発しないと会場に遅れてしまいますよ」
「もう遅刻はごめんですね」
「だね」
昨日が嘘のように三人は笑い合いながらにこやかに会話していた
「じゃあ、ぼく呼んでくるよ」
「では、お願いします」
今だに来ない春樹を優が起こしに行こうとすると、血相を変えた春樹がやってきた
「ん、春樹じゃないですか」
アリサがいち早く春樹を見つける
「え、ほんとだ、おーい、はるはる」
優が大きく手を振って呼ぶと、春樹も気づいたらしくこちらに急いで向かってくる
「様子がおかしいですね」
ミーサが春樹の異変に気が付く
春樹はこちらまで来ると急に優の肩を掴み
「秋がいなくなった」
「え」
「な」
「何があったのですか」
春樹はついさっき彩夏から聞いた情報をそのまま説明した
昨日、秋は会談の後倒れてしまい、アリサ大使の部屋で休んでいた
しばらくして目を覚ました秋は、彩夏とケインから事情を聞いた後、もう一度休んだらしい
彩夏が夕食をアリサの部屋に運んだ時はまだ寝ていて
その後、起きた秋は俺に電話、行方が分からなくなった
説明を聞き終えた優は何も言わず俺の胸ぐらを思いっきりつかんだ
「・・・・・」
「優さん」
「優、手を離してください、そんなことをしても何も変わりません」
アリサに諭され優は何も言わずに手を離す
「優」
春樹の言葉に優は何も返さない
「俺は彩夏たちと一緒に秋を探す、お前はアリサ大使と一緒にサミットに向かってくれ」
春樹がこれからの指示を出すと
「やだ」
優はその指示を拒否した
「ぼくも、秋を探す」
なにいってるんだ、と言おうとしてやめた、春樹を見る優の目が譲る気はないと訴えていたからだ
「私たちは大丈夫です、秋さんを探してあげてください」
アリサに自分たちの護衛よりも秋の捜索を優先してほしいと言われる
「しかし」
「秋のおかげで昨日の会談を無事に終えることが出来ました、今度は私たちが彼女を助ける番です」
「アリサ」
「わかりました、お気をつけて」
「ありがとうございます」
春樹と優は、彩夏と冬華が待つ旅館へ向かった




