W 第一部 第二話 31
「そうか、よくやった」
春樹は彩夏からの報告をみんなに伝える
「よかったー、ねえアリサ、みさみさ」
「はい」
「よかった」
この報告が来るまでこちらも気が気でなかったが
成功してくれて何よりだ
他の三人にも笑顔がこぼれる
「でー、これからどうする」
ひとしきり喜びをかみしめた後、優が今後の予定を聞いてくる
「そうですね、近くのホテルに泊まるのはどうでしょうか、ここからなら地球サミットも近いですし」
ミーサがアリサに近くで宿を取ろうと提案する
「ケインさんは置いてけぼりでいいの」
優が旅館にいるケインのことを気にする
アリサ大使の護衛は3人、本来は6人体制のはずなので、単純に今は戦力が半分になっているということだが
「そうですね、システムが復旧するのがいつ頃かわかりませんし、ケインには後で連絡するとして、私たちは近くのホテルに泊まりましょうか」
アリサ大使はこのまま3人での行動を選択する
まあ、ここから車に乗っていけないわけではないが、下手に動くより、ホテルにいる方が安全だろう
誰も、アリサに反対することはなく、泊まれるホテルを探しに行く
ホテル探しはそこまで難航することなく、見つかる
アリサ大使が和風のホテルに泊まってみたいということで、旅館を会談の場に選んだが、今日はいろいろあった、西洋風のホテルの方が落ち着くだろう
ミーサさんはアリサ大使と同じ部屋に泊まるということで見送った後
俺と優は同じ部屋に入った
うん、ちょっとまて、なんだこの状況は
まて、まて落ち着け俺
ホテルはすぐに見つかった、しかし空いているのが二部屋しかなかった
そこでミーサさんが違うホテルを探そうとしたところ、アリサ大使がそこでいいのでと言って、俺と優もそれに賛同、いや、しかしと言いながら渋るミーサさんの携帯をじれったくなった優が奪い取って予約してしまい、今ここに至る
あの鈍感バカ三人組
このことにアリサが気づいたのもほぼ同時だった
「あー、うん、まあ、一日だし大丈夫、だよね」
優がわずかに距離をとる
それもそのはず、まさかのダブルベッド
「俺は、ソファで寝るから、優はベッドで寝ろ」
「え、でも」
「寝ろ」
「うん」
シグナルの班長になって、初めて優がちゃんと言うことを聞いた気がする
夜
優が風呂に入っている、もちろん風呂場の鍵をかけて
今、優は生まれたままの姿で
がん、春樹は自分の顔を自分で殴った
何を考えてるんだ、俺は、任務中だぞ
そこで春樹は気づく
そうだ、任務中だ、アリサ大使の護衛という重要な任務の真っ最中なのだ、いつ襲撃に遭うかもわからない、聞き耳を立てて
「はあ~」
優の幸せそうな声が聞こえた
がん
優がお風呂から上がった後、風呂を勧められたが断った
頬は少し腫れていた
ヴィーン、ヴィーン、春樹の携帯に着信が、秋からだ
「秋か」
「春樹か」
「ああそうだ」
春樹は携帯が鳴ると、電話に出てくると優に告げ、すぐに部屋の外に出た
「はあ、はあ」
「ん、なんか息が苦しそうだが、今はまずかったか」
息が荒れている春樹を秋が心配するが
「いや、構わない、むしろ助かった」
「たす、かっ、た?」
秋が不審がるも
「いや、なんでもない」
春樹が即座に否定する
まさか、風呂上がりの優のいい匂いが充満していて、息を止めていたら窒息しそうになり死にかけていたとはさすがに言えない
「どうした、何の用だ」
深堀されないよう即座に話を変える
「エレクトロツールについて、シン国王にも聞いてみたが、やはり収穫はなかった」
「そうか、まあ仕方ないな」
国王だからと言って、企業の内部事情に詳しいとは限らない
「俺はアリサ大使の護衛をこのまま行う、お前もケインさんと一緒に明日地球サミットに向かってくれ」
「わかった」
今後の動きを簡単に確認し電話を切ろうとすると
「は、春樹」
「ん」
秋に呼び止められた
「今、ホテルに泊まっているんだよな」
「ああ、そうだが」
嫌な予感がする
「優と同じ部屋か」
やはり
「いや、ちがう」
「そうか」
その声は一見いつもの秋のように聞こえた
部屋に戻ると、優はもう寝ていた
俺は、眠れそうになかった
さっきの秋の電話
携帯を見つめるが、もうかかってくることはなかった
少し、ほんの少し、優の寝顔を見る
「ふ」
相変わらずだな




