W 第一部 第二話 21
地球サミット会場
春樹は三日間、ここの警備をしなくてはならないのだが、少し退屈である
巡回はまだよいが、サミット会場の入り口でただ立っているというのは、どうしても気が抜けそうになってしまう
集中力が散漫になりかかっていると、不意に声がかけられる
「よお、春樹、久しぶりだな」
「虎白さん」
声をかけてきた真っ白な白髪の男
春樹が憧れている、先輩の虎白だった
「シグナルに行っても元気にやっているようだな」
「虎白さんはどうしてここに」
アイは今、連続女性殺人事件にかかりっきりのはずだが
「アイも地球サミットの護衛にかりだされたんだよ」
「そうだったんですか」
どうやら、一部のアイのメンバーがこちらを担当させられ、その指揮を虎白さんがとっているようだ
「そういえば秋もいっしょか」
「いえ、秋は別任務です」
憧れの先輩とはいえ、任務の内容を言う訳にはいかない
虎白もその辺のことは分かっているようで深くは聞かない
「なんか困ったことないか」
「大丈夫ですよ、3年もシグナルの班長やってるんですから」
配属が変わっても心配してくれている
やはり、いい先輩である
「なら、いいが、高宮も来ているが会っておくか」
高宮・・・か、秋の部下で、俺とも面識はあるのだが、どうも苦手というか、敵意を向けられというか、とにかく好き好んで会いたくはない
「いえ、任務中ですから・・・・・」
やんわりと断ると
ヴィーン、ヴィーン、春樹の携帯が鳴っていた
「ん、優」
な、なぜ優が
いや、まて、落ち着け、確か今、優たちはアリサ大使の護衛任務のはず、何かあったのか
恐る、恐る、電話をとる
「どうした、優」
「あっ、はるはる、実は、お願いがあるんだけど」
「お願い」
優が、俺に、お願い
「明日アリサとこの辺を観光したいんだけど」
「あ、アリサって、アリサ大使のことか」
彩夏と同じ驚き方をしている
「そうだよ」
いつの間に、そこまで仲良くなったんだ
「いや、さすがにそれは」
「お願い、はるはるなら、何とかできない」
叶えたい、叶えてあげたいが・・・・
いや、方法はなくはない、と虎白の方をちらっと見る
「できなくはないが」
「本当」
「しかし、一人では危険だ、俺も付いて行こう」
別に、優と一緒に出掛けたいとか、デート気分を味わいたいとかそういうわけではない、そういうわけじゃない
「うん、わかったありがとう」
通話を終え、春樹は黙って虎白の方を見る
「あの・・・虎白さん」
会話を聞いていたのだろう、一言
「お前さっき、俺の力なんていらないとか言ってなかった」
「すいませんでした」
「お前もまだまだだな」
虎白さんは快く引き受けてくれた




