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W  作者: maow
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W 第一部 第一話 13

あの後、警察に襲撃犯の身柄を渡し、

ビルに戻ってきた


「あきあき、ふゆふゆ、おつかれー」

「おつかれー」

私たちよりも先に戻った秋は、スカイプログラム社長、天木から渡された証拠品を冬華に調べてもらっているようだ

「優、大丈夫だったか、撃たれたと聞いたが」

「しんぱいしたよー」

ビルに戻ってくる途中、優が電話で状況説明をしていたので

私たちが無事なことは知っているが

それでも二人とも心配してくれる

いい仲間である

「えへへ、大丈夫、ちゃんと剣で軌道ずらしたから、かすり傷一つないよ」

優も二人の気持ちをわかってるんだろう、ことさら明るい声で返す

「ずらしたからって」

私もいつものように返す

「ふ」、「ん」

秋も冬華もいつもの私たちを見て、

少し頬を緩ませる


「で、証拠って結局なんなの」

いつまでもこの雰囲気だとこそばゆいから

話題をかえる

「ああ、昨日スカイプログラムの社長天木の家に届いた脅迫文なんだが、冬華、どうだ」

「んー、何にも出ないねー」

「そうか」

冬華はシグナル唯一、希望でシグナルに入っている

冬華はもともと、科捜研で働いていたんだが、

人間関係がうまくいかず、孤立していたらしい

シグナルに科学捜査の専門家がいなかったため、ダメもとで募集をかけてみたら

冬華が志願してくれ、めでたく配属となった

いまでは、シグナルの捜査にかかせない人物なんだけど

シグナルが関わる科学捜査を一人でしているので、

一日、この科学捜査室兼冬華の仮眠室に籠っている

家帰れるのは週3ぐらいらしい

なむー

「まいったな、他の証拠になりそうなものは所轄にわたしてしまったしな」

「もぐもぐ」

「まー仕方ないよねー」

こっちは科学捜査できるのは冬華だけ

どう考えても、所轄に渡した方がはやく結果がでるわね

「彩夏、そっちはどうだ」

「もぐもぐ」

「何にも、爆破されて社内はむちゃくちゃ、すぐに所轄が来ちゃって、全部持ってかれたわよ」

捜査内容を担当でない部署には絶対秘密というわけではないが、

なるべくは秘密にしておいた方がいい

というわけで、さっきの襲撃で駆けつけた警察官にも

たまたま、他の事件で捜査途中でグランドネット社内が爆破され、窓から逃走しようとしていた犯人を見つけて、確保したと言ってある


「手がかりはゼロか」

秋が腕を組み、ため息を吐く

手詰まりだ

「もぐもぐ」

「これだけのことを単独で引き起こすなんて無理よね、よほど大きな組織がかかわっていないと」

「アトラスとかー」

「あれは都市伝説でしょ」

アトラス、裏社会を統べ、表社会にも強大な力を持つといわれている組織

だが、その存在を確認したという情報はない

「そんなに、大きな組織があったら、とっくに存在が世界中に知れ渡っているわよ」

「それもそうだねー」

アトラスが実在するかどうかはともかく、情報といえば、


「アイにいるあんたの知り合いに協力してもらって、何か情報をつかめないかしら」

以前、秋と春樹がアイに配属されていたのはみんな知っている

秋が春樹に好意を持っていることも

アイに秋に好意を持っている後輩がいることも

「難しいだろうな、今アイは連続女性殺人事件の捜査に全員かかりっきりらしい」

「あーまた被害者が出たんですよねーさっきニュースでやってましたー」

「そう、それじゃ無理そうね」

「もぐもぐ」

「て、あんたはさっきから、何してんの」

「ふおぃるふごふぁんふおふあふへてる」

うん、わからん

「ちゃんと、飲み込んでからしゃべれ」

「お昼ご飯を食べてる」

口の中に詰めたものを全部飲みこんでから、もういちど同じことを言った

「あんた、よくこんな状況で食べられるわね」

「でも、もうお昼だよ」

いや、そんなまっすぐな目で見られても

「おいしそー、私もちょうだいー」

冬華が弁当箱のミートボールをひとつつまんでくちにほうりこむ

「全く、この能天気コンビは」

「まあまあ、腹が減ってはなんとやらだ」

そういって、秋はブロッコリーをつまむ

食べたいだけじゃないでしょうね

「さいさいもどうぞー」

優が弁当箱を差し出してくる

ミートボールに卵焼きにブロッコリーとミニトマト、それにふりかけのかかったごはん

女の子らしい色鮮やかなお弁当である

たしか、旦那も同じお弁当よね

「はあ」

まあ、緊張感があったとこで事態は変わらない

それに、秋の言うとおり、お腹が空いていては頭も体もはたらかない

ここは優に甘えて卵焼きをもらう

「しょっぱ」

かなり塩辛い

「えっ」

優も卵焼きを食べてみると

「うぇっ、しょっぱ」

冬華も、一応食べてみるが

「しょっぱいねー、塩の分量を間違えたんじゃないー」

「あーあ、いつも使っている計量スプーン洗うのを忘れてて、普通のスプーンでやったから間違えちゃったんだー」

優が料理を始めたのは、結婚してからだから、もう一年ぐらいだと思うんだけど

まぁ、人には向き不向きがあるから仕方ないけど

「お茶入れるねー」

冬華はいつもコーヒーだが、コーヒーが苦手な優のためにお茶を人数分入れてくれる


「あーあ、ダーリン大丈夫かな、高血圧とかになったりしないかな」

「いや、たかだか、お弁当の卵焼きがしょっぱいぐらいで」

これにも困ったものである

「・・・・」

秋が黙って優を見つめている

かなり深刻そうに

「どうしたの、お腹でも痛くなった」

「えっ、今の卵焼きで、大丈夫」

「あっいや、なんでもない、大丈夫だ」

「お茶どうぞー」

「あっ、すまない」

冬華がお茶を秋に渡す

「なにかあったらいってよー、薬品ならいろいろあるから」

「それ、人に使っても大丈夫なんでしょうね」

「大丈夫ですよー、死体には」

「生きてる人に大丈夫かって言ってんの」

「ふふ、本当に大丈夫だ、心配ない」

さっきまでの深刻そうな表情は消えて

姉が妹を見守るような温かい表情になっている


「それにしてもー、どうするんですかー」

確かに、今のところ手立てはない

優のお弁当を四人で食べた後、再び考え込む

すると

ヴィーン、ヴィーン、秋のスマホに着信が入った

「は、はるきからだ」


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