1.彼女が死んだ日
初めてオリジナル小説を書きました。
設定や描写が下手なところもあるかと思いますが、読んでいただければ嬉しいです。
よろしくお願いします。
本日は3話投稿しています。(1/3)
「───バイバイ、さっちゃん! やくそく、わすれないでね!!」
「ユリちゃんも! バイバイ!!」
クラスで1番仲が良くて、大好きだった子───さっちゃん。
さっちゃんの両親の都合で、幼稚園の年中さんの途中で引っ越していってしまった。
それ以来、ずっと会っていない。
いつの間にか顔も名前もあやふやになってしまった。憶えているのは自分だけがその子を〝さっちゃん〟と呼んでいたこと。
大きくなってからどうしても気になって卒園アルバムを開いてみたけれど、卒園まで在籍していなかったせいか、さっちゃんは写真も名前も載っていなかった。
もう一度会いたかったな。
きっと、約束は忘れちゃってるとは思うけど。
ふと目を開ければ、白い天井、白い壁、白いカーテン。
ピッ、ピッ、ピッ───と一定の間隔で電子音が聞こえる。
「百合子、起きたのか?」
百合子の視界に入ってきたのは両親───中年の域には入っているが元々美男美女なのに、ずいぶんと憔悴しきった顔だ───その2人が彼女を覗き込む。
「ユリちゃん、夢見てたの? 何か寝言言ってたわ」
心配掛けまいとしてか母親が百合子の手を握り笑いかける。
その自分の手のなんと痩せ細ったことか。
電子音は百合子の心電図。
そうか、もう長く生きられないんだっけと思い出す。
彼女はこくりと頷く。
「幼稚園のとき───仲良かった子のこと、思い出してた⋯⋯懐かしいなって」
酸素マスクが声を阻み聞こえにくかっただろう、それでも両親は聞き取ってくれたようだ。
ふふふと可笑しそうに笑う。
「⋯⋯母様の知ってる子? 連絡してみましょうか?」
「その子の名前は?」
百合子はゆっくりと首を横に振る。ふぅ、1つため息をついて。
「もし、その子が訪ねてきたら───〝約束、守れなくて、ごめんね〟って⋯⋯伝えて」
「百合子、自分で伝えなさい。父様が絶対お前を助けるから」
「⋯⋯ありがと。お父様、お母様───でも、もしものときは、この本⋯⋯いっしょに、火葬して」
百合子の枕元に置いてある単行本は、ネットで話題になって書籍化されたライトノベル。大学時代の友達が入院のお供にと差し入れてくれた。
不遇の死を迎えた男女が異世界転生して、やがて恋して無双して───ありきたりなストーリーだが、あと少しで読み終わるところだったのに、もう本を持つことさえかなわない。あの世で続きは読めるだろうかとぼんやり思う。
そしてその本に挟んであるしおりは、幼い頃にもらった大切なプレゼント。
それを近くに感じながら、再び百合子の意識は混濁し───その翌日。窓からカーテン越しの朝日に照らされて。
彼女は永い眠りについた。
西園寺百合子、享年25歳。
あまりにも早すぎる死だった。
百合子の身体に繋がれていた器具やチューブが取り除かれ、まだ体温の残る娘の亡骸に母親が嗚咽を漏らしながら抱きついている。
その肩を抱く父親の目からも1筋の涙が流れた。
「父様が必ず、生き返らせてやるからな⋯⋯それまで待ってなさい、百合子」
そしてその約束を守るべく───父親はその頭脳と財力と時間のすべてを費やし、神の領域に手を出した。
お読みいただきありがとうございました。
本日は3話投稿しています。ぜひ続きもお読みください。
よろしくお願いします。




