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【ポンコツ系異世界日常コメディ!】魔人スカーレットは過労でしんどい   作者: 鳴尾リョウ


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第45話 魔人スカーレットは参拝する

 参拝する! お土産は帰りに……。




 先日のクイズ番組で海外旅行を惜しいところで逃したスカーレットとじいやは、その代わりに一泊二日で旅行に来ていた。


「久しぶりに飛行機に乗ったけど、思ったより早く着いたわね」


 空港からバスに乗り目的地に着いたスカーレットは、荷物をコインロッカーに預けるとそう言った。


「普段なかなか遠出はできないですからね。私も久しぶりの飛行機に興奮しましたよ」


 首からいかついカメラをぶら下げるじいやも、仕事を忘れたように見知らぬ土地で気持ちが高ぶっているようだった。


「ここから神社はまっすぐ上がっていくみたいだけど、直行するの?」


 ガイドブックは予習済みだ。今回の旅の目的は有名な神社である。縁結びが特に有名らしいが、彼女の目的は巨大な大しめ縄を見ることだった。テレビや雑誌でよく特集されており、以前から実際に現地で見てみたいと思っていたのだ。


「いえ、せっかくなので参拝の作法通りに行こうと思っています。まずは歩いて砂浜に向かいます」


「えぇー、めんどいなあ」


 じいやが言うには、ここから歩いて十五分ほどのところの砂浜で砂を集め、それを神社の砂と入れ替えるのだという。持ち帰った砂はお守りになるそうだ。


「文句言わないでください。さあ、行きますよ」


 彼はさっさと先を歩いていく。スカーレットも参道の店にあるおいしそうなものたちに後ろ髪を引かれながら、急いで彼を追いかけて行った。


 少し歩き砂浜に着くと、遠くからでもわかるほど明らかに異質なものが鎮座していた。


「なにあれ?」


 岩だ。それもとても大きい。近くに寄って見上げてみると、上部の植物が生えている辺りに小さい神社みたいなのがある。なぜに砂浜に岩?


「それは大きな岩に見えますが、実は島なんです。昔、神様も祀られていたとか……」


 ははあ、それであの神社か。確かに見る者を圧倒する程の存在感がある。


「せっかくだから、写真撮りましょうよ!」


 じいやのカメラを指さすと、彼もうなずきベンチの方から構図を探った。


「……ああ、スカーレット様、もう少し右です。……はい、そこでオッケーです」


 ベンチに置いたカメラのタイマーをセットし、じいやはスカーレットと二人で島を挟むように立つ。チカチカ、パシャリ。二人で仲良くピースする写真を確認すると、彼は満足そうに笑った。


「さて、写真も撮れたことですし、砂を集めて神社に行きましょう」


「よしきた」


 スカーレットも意気込んで砂を集めようとした。だが、そこで気づく。


「……あたし、砂入れる容器持ってないんですけど」


 すると、せっせと一人で持ってきた瓶に砂を詰めているじいやがあきれたように言う。


「ガイドブックに書いてあったじゃないですか。……しょうがないですね。こんなこともあろうかと、瓶をもう一つ持ってきていたのであげます」


 なんか恩着せがましいんだよなあ……。まあ、もらうけど。 


 二人はせっせと砂を詰めると砂浜を後にした。


 そこから神社に向かう道中は、長い坂が続いた。ぜえぜえ息を切らしながら歩くスカーレットに対して、はるかに年上のじいやはどんどんと上がっていく。


「ちょ、ちょ待って……」


 じいやって何歳だっけ? 確か、お父さんよりも上だったような……。淡々と坂を上っていく彼を見て、スカーレットはそんなことを考えていた。


「スカーレット様、遅いですよ! もうすぐなんで、頑張ってください!」


 もう頑張ってるって! それより、主人をおいて先に行く執事ってどうなのよ!


 そうこうしているうちに、二人は本日のメインの神社にたどり着く。


「つ、着いた……」


 入口から木々に囲まれた神社に入ると静寂に包まれており、今までのにぎやかな参道とは趣が異なっていた。澄んだ空気を吸い込むと、怠惰な生活を送っている体が浄化される気さえする。


「なんか、厳かな感じするわね……」


「スカーレット様、『厳か』の意味わかって使ってます?」


 馬鹿にしたようにじいやがそう言ったので、思わずポカりと手が出る。こいつは相変わらず、あたしのことをなめている。


「知ってるわ! えっと、あれよ。なんか、『重みがある』とか、『引き締まる』とか、そんな感じよ!」


「大体合ってますけど……。ちょっと声、大きいですよ」


 神聖な場所で、あんたが怒らせたんでしょ! また声を張り上げそうになるのを我慢して、二人は本殿へと続く下り坂を進む。そして途中の拝殿で、目的であったしめ縄を見つけた。


「これが『大しめ縄』! ……よね?」


 スカーレットは目の前のしめ縄を観察する。これがあの有名な大しめ縄。稲わらから作られたそれは確かに太く大きく、吊るすための木材も立派なものではある。しかし、なんというか……。


「思ったより、小さいわね……」


 テレビ画面や紙面で見たものは、もっと迫力があったような……。いや、実際はそういうものなのかも。


「立派ですねえ。さて、お参りして砂を交換に行きましょう! ちなみにここでは『二礼四拍手一礼』なのでお間違いなく」


 彼の言う通りお参りをして、持ってきた砂を社で交換する。ここまで来るのに苦労したのに、着いてしまうとあっという間にすることがなくなった。


「あとはお守り買って、おいしいもの食べてからホテルに行きましょうか」


 スカーレットはすっかり仕事を終えた気になっている。自分用とベロニカたちに配る分のお守りを買うと、入り口に戻ろうとした。だが、


「あっちにも何かあるみたいですよ」


 じいやが右手に見える小さな門を指さす。結構歩いてるのに、まだ体力があるのか。正直、疲れたので早くホテルに行きたかったが、ついでだからと行ってみることにする。


 門を抜けると、神楽殿と言われる巨大な建物があった。そして、その吊り木に吊るされているしめ縄を見て、スカーレットは息を飲んだ。


「……大きい」


 ガイドブックには、全長十三メートル、重量五トンと記されていた。およそ人の手で作り出せるとは思えない代物だったが、熟練の職人たちの手作りで生み出されているらしい。


「こっちが有名な大しめ縄だったのね……」


「そのようですね。さっそくお守りの効力があったんじゃないですか?」


 じいやはこともなげにそう話す。彼はさっきのしめ縄を見た時も特に反応していなかった。いくら鈍いスカーレットでも、ここまでくると理解する。


「じいや、こっちが本命って知ってたわね……」


 参拝の詳しい作法を知っていたり、道中迷うことなくドンドン進んでいった彼のことだ。ガイドブックに書かれていることなど、全部頭に入っているのだろう。もちろん、大しめ縄の場所さえも。


 カメラを構え、写真を撮りながらじいやは答える。


「はて? しかし、ここは縁結びで有名な神社ですからなあ。ご縁があったのかどうかは『神のみぞ知る』ということではありませんか?」


 したり顔でそう言う彼に、スカーレットはわき腹を小突いてやり返した。


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