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今回はマジでヤバかった

評価・ブックマーク有難うございます。

 旧街道の様子見に行ったボブ達が真夜中になっても全然帰ってこない。

 追加で人を出したけどそちらからもまだ連絡がない。

 お母様もやきもきしているけど私も心配だ。

 そういう訳でこっそり様子を見に行こうと思う。


 ドレスのままおやすみなさいの挨拶。そして部屋に戻ると地味なワンピースに着替え窓から屋根の上に出る。部屋は最上階なので特に難しい事ではない。

 何時ものフード付きケープは馬車の中に積まれたままなので使えない。代わりに赤いショールをフード代わりに使っている。魔力感知で周囲に人がいないのは分かってるけど、一応隠しておかないとね。


 魔力の足で体を上空まで持ち上げ魔力の紙飛行機で旧街道を辿る。

 結構速度が出るのですぐに見つかるだろう、というかすぐに見つかった。馬車なら半日程度の距離、確か分かれ道がある辺りだ。


 魔力で様子を見ると、丁度ボブ達に追加のメンバーが合流したところの様だ。

 こっそり近くに着地して木の陰から様子を窺う。


「道がないだと!」

「そうっす。本当ならこの辺りに分かれ道があるはずなんっすけど全然見つからないんす。念のため先まで行ってみたんすけど墓のある廃村まで一本道で、本道は見つからなかったっす」

「それは困った。計画が根本から崩れてしまう、どうしたものか……」


 皆で困り顔をしているけど実は私には心当たりがある。

 私が隠れているこの場所だ。

 道の脇に丁度いい空き地があると思って着地したのだけど、魔力感知によるとこの空き地、私の背後からずーっと向こうまで細長く続いている。

 よく考えると、というか普通に考えるとこれは道だ。きっとこっちが本道なのだろう。


 しかしボブ達がいる所とこの場所とは何本もの木で隔てられているのだ。

 分かれ道の所に木が、しかも何メートルもある大きなのが生えているのは明らかにおかしい。しかも魔力感知によるとこの木々はかなり弱っている。というか地面の下に根が感じられない。

 その辺の木を伐ってきて穴を掘って立てた、そんな感じだ。

 これは偽装だ。道を森に見せかけているのだ。

 この事をボブ達に知らせたいんだけど、どうしよう。抜け出しているのはバラしたくないし……


「あれ? 今なんかニオイがしなかったっすか?」

「臭い? 気付かなかったが、何の臭いだ?」

「柑橘系のニオイっす。最近フレンお嬢様が髪につけているのと同じ……」


 ええっ! 匂いで気付かれた!? 確かに香油はついたままだけどそんなにきつい匂いじゃないのに。もしかしてボブは犬の生まれ変わり!? ボブの前世は犬なの!?


 気が付くと目の前の木が向こう側に倒れ始めていた。

 いつの間にか身体強化が発動している! 動揺したせいで暴発してしまったんだ。


「うおっ! 危ない! 木が倒れてくるぞ!!」

「避けろ!!」


 倒れ始めた木が見る間に他の木を巻き込み将棋倒しに倒れ始めた。

 危ない! 私は咄嗟に魔力の腕で木を支える。そして皆が安全圏まで避難するのを待って魔力の腕を消した。

 同時に私は近くの高い木の上に身を隠す。

 

 ズズーン! と地響きを立てて何本もの木が倒れる。


「大丈夫か! 巻き込まれた奴はいないか!」

「こっちは大丈夫っす! 誰もケガしてないっす!」

「こっちもだ!」

「なんか倒れ方がおかしくなかったか?」

「おい、あれを見てみろ。木が倒れたところに道が!」

「おお!」


 ヤバかった。

 今回はマジでヤバかった。

 気が付かないうちにうっかり木を、穴に挿さっていただけの不安定なやつを“ちょっとだけ”押してしまったのだろう。

 魔力の腕が間に合わなければ大惨事だった。

 やっぱり私は普通の社会生活はしない方がいいのかもしれない。危険すぎる。


「この木を伐ったのはつい最近、きっと今日の昼間だな。見ろ、葉先がまだ瑞々しい」

「やっぱ妨害工作っすかね」

「それ以外にないだろ。今夜のうちに見つけられて良かった。

 フレッド! 一足先に戻って奥様に報告! 残りは全員で街道の復旧だ!」


 眼下では家士達が力を合わせて偽装に使われていた木を片付けている。

 ここはもう大丈夫だろう。

 帰ろう。


 あ、そういえば廃村にはリースのお墓があるんだっけか。そこに行ったらリースと話できないかな。話したいな。

 よし、行ってみよう。




 廃村は森の奥、高さ何十メートルもありそうな巨木に囲まれた中にあった。

 小さい広場の周りに数軒の家が建ってるけどどこも生き物の気配はない。

 その広場の一番奥、どの家からも離れた場所に白い長方形の石碑が大小二つ並んで立っていた。

 近づいてみるとかなりデカい。小さい方でも私の身長よりずっと大きく、大きい方は私の倍くらいある。

 そしてどの面もつるつるで表面には何も刻まれていない。白い石を削り出しただけの縦長の薄い板のような形だ。

 闇夜に白く浮かびあがっている様はまるで異世界への入り口みたいだ。


 普通に考えたら小さい方が将軍で大きい方が女王、つまりリースのだよね。

 私は大きい方に向かって話しかけた。


「リース、今晩は。聞こえる? 私だよ。フレンだよ」


 返事はない。

 当たり前か。ここはリースの墓と言い伝えられているだけの場所。本人は王宮にいるし亡骸もそこだ。

 石碑に手を触れてみる。

 冷たい手触り。唯の石だ。転移でどこかに飛ばされるようなこともない。それどころか魔力の動きは一切感じられない。もう片方の石碑も同じ。霊的にはどうだか分からないけど魔力的には完全に不活性だ。


「やっぱり聞こえないんだね。でもいいや。話したいことを話すよ。実はさっきちょっとやらかしちゃって……」


 喋っているうちにだんだん気が楽になってきた。相手はそこには居ないっていうのにね。ため込んだものを吐き出すって大事だね。


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