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【怪談】 闇の中の足音

評価・ブックマーク有難うございます。

 いや、それがどうも「霊廟の扉が勝手に開いた」ってのは本当の事らしい。

 知り合いの騎士様から聞いた話なんだが、建物を外側から監視している装置に扉が開くところがはバッチリ写っていたんだそうだ。

 ああ、内側から開いたってのは間違いないらしい。

 でも開けた何者かはまるで写っていなかったそうなんだ。扉の警備をしていた騎士様たちは何かが出て来たって言っているらしいんだが、それは全く写っていない。


 まあ確かに、死角になる所に何か仕掛けを施せばそう見せかけられるだろうさ。

 でも考えてもみろよ。内側に仕掛けをするには中に入る必要がある。誰がそんな仕掛けの為わざわざあの霊廟に入るって言うんだ? お前なら行くか? そもそも入り口は全部監視されているんだ。忍び込むのは無理だろう。


 それでだ、その日以降霊廟の中で何かが起こっているらしい。これも騎士様から聞いた話なんだけどな。

 霊廟の周りを警備していると時折中から女の子の声が聞こえたり、足音のようなものが聞こえたり、一瞬変な魔力を感じたりするらしい。一人だけじゃない。結構な人数が経験しているそうだ。


 流石に偉い方々も放置できなくなってな、中の監視装置を動かして様子を見てみようって事になったんだ。

 ああ、監視装置自体は最初からあるんだ。あそこは霊廟っていっても元々王宮の一部だったんだ。で、霊廟に作り替える際に監視装置は外さずそのまま残しておいたんだそうだ。というか工事の時は必要最低限しか中に入らなかったって話だから監視装置は放置しておいたんだろうな。


 いや、俺もあのお方が写るかどうかなんて知らないよ。でも霊廟の中がどうなっているか調べるのには監視装置が手っ取り早いだろう。


 そんな訳で、監視装置を動かそうとしたんだが、これがうんともすんとも言わない。で、色々調べた結果壊れているのは霊廟内のどこかだって事になった。


 そうすると修理のために人を送るよな。

 へえ、お前の所にも話が来たのか。何でいかなかったんだ? 報酬良かっただろ……まあそうだよな。俺でも行かない。

 じゃあ行った奴の話は? 聞いていないのか。実は行かざるを得なかった奴もいたんだ。魔導具ギルドに泣きつかれて仕方なかったらしい。

 お前が聞いていないってことは秘密にしているって事だろうな。うん? そりゃ変な評判が立ったりすると困るからだろうさ。

 俺もどこの誰が行ったのかは聞いていない。騎士様も二人いたとしか教えてくれなかった。


 その不運な二人の魔道具師は四人の騎士様に連れられて霊廟に入ったんだ。ああ、話をしてくれた騎士様は入っていない。別の人達だ。

 入り口は選りに選って例のひとりでに開いた扉。修理ついでに何かの痕跡がないか調べる為だったらしい。

 もちろん最初に調べたのは例の扉だ。入口だからな。結局何の細工の跡も見つからなかったんだが。

 その後彼らは扉を開け放したままおっかなびっく……慎重に奥へと入っていった。


 昼間とは言え光の差し込まない霊廟だ。まずは廊下の魔導灯を点けようとした。だが何故か点かなかったらしい。

 魔導灯を調べた結果魔力の供給に問題があるんじゃないかという話になって、取り敢えず地下にある、なんて言ったっけ……そう、魔力制御盤だ、それを調べようということになった。

 地下に降りる階段は廊下を進んで角を曲がったさらにその先、広い霊廟の中央近くにある。

 何が言いたいのかと言うと途中からは外の光なんかまるで届かない真っ暗闇だという事だ。

 最初は手持ちの魔導灯で照らしながらそろりそろりと廊下を進んでいたんだが、角を曲がって入り口の光が届かなくなった辺りで急に魔導灯が点かなくなった。二つあった魔導灯が二つ共だ。

 一人の騎士様がすかさず小光球を出したのでパニックにこそならなかったものの、既に全員及び腰だ。とっとと帰りたいというのが本音だったそうだが王の名の下に出ている命令だ、投げ出すわけにもいかない。

 とにかく通路全体を明るくしようということで四人の騎士様が力を合わせて現在位置から階段の前までずらっと小光球を浮かべたんだ。


 明るくなればどうということもない通路だ。両脇に所々扉があるがそれらは全部閉まっている。視界の一番奥、右脇にある階段が上下に薄暗く続いているがそれも小光球で照らせばいいだろう。


 一同が気を取り直して先に進もうとしたところで、コツ……コツ……と小さな音が聞こえて来たんだ。


 音は前方、階段の方から聞こえてくる。

 コツ……コツ……

 体重の軽い誰かの足音の様だ。階段の上からゆっくり降りてきているのが分かる。

 その誰かが降りてくるのに合わせるかのように、階段前の小光球が急に力を無くし消えていった。その近くの小光球も暗くなってきている。

 コツ……コツ……

 暗くて見えないが音の主は一階に降り立ったようだ。そのままこちらに歩いてくる。小光球も端から暗くなって消えていく。

 急に横からギィィーーッと音がした。

 見ると通路脇の扉が一斉に開き始めていたんだ。


 もう王命もへったくれもない。全員転がるように霊廟から逃げ出したそうだ。


 それ以来誰も霊廟には入っていない。入ろうとしない。

 件の魔道具師たちは道具も何も中に置いてきてしまったが「入る位ならいっそ殺してくれ」と言い始める始末で偉い人達も諦めたらしい。

 それきり修理は沙汰止みになったそうだ。


 だから今霊廟の中がどうなっているのか誰にも分からないんだ。


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