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今やるべきは

評価、ブックマーク有難うございます。

 「王妃」が正式に王様と結婚して王妃になったのは私が引篭もりになる少し前の初夏、私が6才になる直前の事だ。

 彼女の卒業を待って正式に結婚、ということだったが結婚式は予定通りに行われた。

 婚約者といえば卒業パーティーでの婚約破棄(偏見)。

 実は王妃の場合も在学中誰それの私物を隠したとか誰かを階段から突き落としたとかいう噂が流れたらしい。

 でも本人や取り巻き全員にはきっちりアリバイがあった。いつでも行動を証明できるように全員が慎重に行動していたのだそうだ。世の悪役令嬢物でもここまで徹底的にアリバイを用意するのは珍しいんじゃないかな。でも制約が多くて学園生活はつまらなかったんじゃないだろうか。ちょっと気になる。

 そのおかげで濡れ衣を着せられることもなく婚約破棄もされずちゃんと結婚まで漕ぎ着けたそうだ。反面「ざまぁ」はなかったらしいけど。


 そして今度の妊娠。


 その情報を聞いたお父様は王都から戻って来たばかりだというのにすぐさま王都へと取って返した。少数の供回りだけを連れて。

 表向きの参内(さんだい)の理由は「お祝いを述べるため」だそうだけど、側妃派がなりふり構わず動くのを危惧したのだ。


 側妃の子である第一王子は7才。王位継承順位は第一位だけどまだ王太子ではない。

 そこに王妃の子である第二王子、若しくは第一王女が生まれてしまうと王位継承順位が第二位に落ちてしまうのだ。しかも将来王妃が二人目、三人目の子を産めばその分だけ継承順位は下がっていく。

 そうなってしまうと第一王子が王位を継承する可能性はかなり低くなる。

 しかも実は側妃は既に病死しているのだ。(いつの間に!) 側妃派、というか第一王子派は第一王子が王になれなければ将来冷や飯を食わされる羽目に陥るだろう。


 王妃の子が生まれる前に第一王子を王太子にする。最悪子が生まれること自体を阻止する。

 これが現在第一王子派がとるかもしれない手段であり、王妃派であるお父様の懸念だ。


 私とは遠い所で事態がどんどん動いていく。

 普通の6才児なら当たり前のことだけど私は転生者なのだ。お父様の為に何かしたかった。引篭もりとは言え家族が嫌いなわけではないのだ。


 しかしお父様は私が事態を知る前に出発してしまったしお母様は私が追いかけて行くのを許可してくれなかった。

「きつい言い方になるけどフレンちゃんが付いていったところで何も出来ないわ。むしろ足手まといになる」

 腕力では助けにならない、と諭されてしまっては一言もない。


 よくある転生主人公なら。強いチートや使える前世知識を持っていたら。

 そういうのを駆使して色々引っ掻き回した挙句なんかいい感じに纏めることが出来るのだろう。ついでに王子様に見初められたりもするのだ。もしかしたら王子様とのロマンスが派閥争いを止める、なんて展開になるのかもしれない。


 でも私にはそこまでの能力も知識もない。あるのは腕力だけ。それも制御がいまいちで時たま暴走するやつだ。


 宮廷闘争では基本出番がない。使えるような前世知識なんか持ち合わせてないし頭の回転がとんでもなく早いってわけでもないのだ。政治の駆け引きに首を突っ込んだら確実にお父様の足を引っ張ってしまうだろう。

 活躍できそうのは暴力沙汰になったときだけ。それもきちんと訓練を受けた騎士と比べるとどうなんだろう。そもそも王都は警備が厳重で治安がいいって言うしそんな展開にはなりそうもない。

 同年代の子の護衛とかなら需要があるかもしれないけどそういう年頃の関係者といえば第一王子だけ。つまり敵方なので私が護衛することはない。ロマンスも始まらない。

 仮に腕力で活躍できてそれを第一王子に見られた場合でも見初められるなんて展開にはなりそうにない。それどころかヴォルフくんの時のようにまず確実に怯えられてしまうだろう。「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」で済めば御の字だ。


 残念ながら私は何でもできるチート主人公じゃない。


「分かりました。王都に行くのは諦めます」


 だから私は今の私に出来ることをするしかないのだ。

 私にできることと言えば戦うこと。

 前みたいにシャドウクーガーを(けしか)けてくる輩がいないとも限らないのだ。そんな時は家族や皆を守って戦おう。また怯えられてしまうのは怖いけど失うのはもっと怖い。攻めてくる相手は片っ端から叩きのめそう。


 こちらが無事ならお父様も目の前の事に集中できるだろう。そちらの方がお父様の助けになる。

 お母様だって本当はお父様と一緒に行きたいはずだ。でもここに残っているのは何か起こる事を懸念しているからだろう。


 つまり今やるべきはしっかりここを守る事。その為にももっと身体強化の訓練をしないと。


 パワーはともかく動きの制御はまだ心もとない。まともに走れるようになったぐらいで喜んでいてはダメだ。未だに移動中に木にぶつかったり岩に突っ込んだりといった体たらくなのだ。もっと精密に、かつ臨機応変に動けるようにならないと。


 幸い森の奥には巨大なイノシシ?やクマ?がいる。今までは出合い頭の衝突事故以外では接触しなかったけど、これからは積極的に近寄っていって彼らを相手に色々やってみよう。


 迷惑だとは思うがこれからよろしく頼むよ、イノシシ君、クマ君。我が家の平和のために!


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