↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/73

〈64〉

 少女の肩からは、ポタポタと見慣れた血が流れ落ちていた。


 歳は12歳くらいだろうか?


 髪は淡いピンク色、動きやすそうな服装の割に、足元は素肌のままだった。


 髪の色も、瞳の色も、日本人のそれじゃない。


 そんな中でもひときわ目を引くのが、彼女の耳元だろう。


 羊のようなクルリと曲がった角が、頭の両脇に付いているように見える。


「ひぅっ!!」


 榎並さんの握る銃口が、いつの間にか角の少女に向けられていた。


 慌てて体を割り込ませて、盾の正面を榎並さんの方に向ける。


 そのうえで、体だけは少女の方へと向けた。


 視線の高さを合わせて微笑んでみる。


「ビックリさせてごめんね。あれでも優しいお姉さんだから」


「……あれでも、ってどういう意味かしら?」


 なぜか不満げな榎並さんを後目に、少女の髪に手を伸ばして見せた。


「竜治さん!!」


「大丈夫。可愛い少女じゃないか」


 抵抗らしいものは見せずに、ギュッと目を閉じて俺の手を受け入れてくれる。


 さり気なく角に触れてみたが、見間違いなどではないらしい。


 無防備に近付いて見たが、攻撃されるような事もない。


「肩の治療をするよ。“力”を流すけど、大丈夫かな?」


「……は、はい、です!」


 怯えた表情のまま、彼女がコクンとうなづいてくれる。


 敵では無さそうだな。


「俺は竜治って名前なんだけど。キミはなんて呼べば良いのかな?」


「えっと、えっと……、ご主人様にはネネって呼ばれてますです」


「そっか、じゃぁ、ネネちゃんて呼ばせてもらうよ」


「はいです……」


 不安げに見上げるネネの肩に手を当てて、“力”を流していく。


 それにしても、ご主人様と来たか……。


 番号とかじゃないだけマシだろうけど、イヤな予想が頭の中に浮かんでくる。


「ネネのご主人様は、どんな人なのかな?」


「優しくて綺麗な方ですよ。お姉ちゃんって呼ぶと一緒に寝てくれるのです」


「不思議な事をされたりはしないのかな?」


「不思議なこと、ですか? 無いですよ? お姉ちゃんは優しいのです」


「そうなんだ」


 ご主人様の話をするネネは、ほんの少しだけ俺たちに対する怯えが減ったように見える。


 こんな場所に居て角まであるのだから、一般人だとはとうてい思えないが、嘘を言っているとも思えない。


 ……人体実験の被験者が逃げてきたのかと思ったが、違うのか?


(どう思う?)


(……わからないわね。私たちの時は、大人と話す機会なんて無かったわ。角を付けられることも、ご主人様なんて存在もね)


(そうか……)


 ネネにバレないように耳にあるマイクで問いかけて見たが、どうにも何かがずれている気がする。


「榎並さんでもわからないなら、宇堂先生にでも聞いてみるか……」


 はぁ……、とため息混じりにつぶやいた俺の言葉を、


「エナミ……? エナミって、エナミ キョウコですか……?」


 大きな瞳が見上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。