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魔王幹部少女の好き勝手  作者: もじゃね
マコと魔王
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05 ストレート

 中に入ると、玄関ホールと言うのだろうか、2階へ上がる階段が正面にある広い空間に出た。

 絨毯もシャンデリアも無いので、何とも味気ない。明かりになるものが窓から入る月の光だけなので、余計に物寂しい空間に感じられる。

 このようなホールならば、壁や窓に彫り物か飾りがあってもよさそうなものだが。


「右の部屋に、生活に最低限必要なものを揃えてあるから、そこへ行こう。」


 歩き出したネオの後ろに付いて行く。

 ホール右奥にある扉から廊下に出てすぐのところ、右手側にその部屋はあった。


 部屋の広さは20畳ぐらいか。月明かりに照らされて、入口近くに木のテーブルと椅子、奥の窓際にベッドが、ぽつんぽつんと置いてあるのが見える。


 ネオが椅子に座った。

 オレを召喚した理由の続きを話してくれるつもりだろう。


「『マコちゃん、君を召喚した理由だったかぁ。それはねぇ、復讐をするためだぁ。』

『なんですってー。』

『今までオレをだまして楽しんでいたのだろぅ。今度はオレが楽しむ番だぁ。がおー。』

『きゃー。ビリビリー。』」


 オレは、棒読みで一人芝居をしながら、もう一つの椅子に座った。

 はじめは不思議そうな顔をしていたネオだったが、意図が分かったのか、焦ってツッコミをいれてくれた。


「そんなことしないよ!」


「今のは冗談ですけど、その、オレのこと恨んでいませんか?」


 一週間前から気にかかっていたことだ。

 ゲームとは言え、女だと騙して、告白までさせてしまった。恨まれていても仕方ない。


 もし、この世界にオレを召喚したのがネオで無ければ、オレは激怒していただろう。

 ネオに対する後ろめたさがあって、怒りをぶつけられないからこそ、落ち着いてこの世界のことを聞いていられたのだ。たぶん。


 もっと早く知りたいことではあったが、こうして会えた以上、落ち着いたところで、向かい合って聞くべきだと思った。

 気恥ずかしさもあって、終始まじめに、とはできなかったが。


「恨んでなんかいない。むしろ、感謝してるよ。」


「感謝、ですか?」


「恥ずかしい話なんだけど、今まで女性とは、その……ね。趣味や好みが合わないのは仕方ないけど、何にも影響しない些細なことに文句を言ったり、済んだ話をぶり返して怒ったり、意見を求めるくせに僕の出した意見を全部却下したりする訳でしょう!」


 はじめはぽつぽつと話していたネオだが、だんだんと勢いがついてきた。

 自分はこのような偏見を持っている人間であると、あえて強調するような妙な言い回し。

 具体的な話はしていないはずなのだが、過去の実体験に基づいていることを感じさせる。

 深く聞きたいが、今はやめておこう。


「マコちゃんと遊んでいる間は本当に楽しかった。でも実は、男性かも知れない、とは思っていたんだ。大雑把で、男らしいところがちらほらあったからね。むしろ、自分から女性だと信じ込もうとしていたのかも知れない。」


 ネオに『自分から進んで騙されていたのだ』と言われて、ようやく気持ちが少し楽になった。確かに、全力で女の子を演じていた訳ではない。あくまで、ゲームプレイを楽しむのがメインだった。

 でも、もし、オレに気を遣って言っているのなら――

 ネオさんは本当にいい人だ。


「感謝してるっていうのはね、男らしい、いや、男まさりっていうのか、そんな女性となら僕でも楽しく交際できるだろう、って教えてくれたことについてだよ。」


 ネオさんはさわやかな笑顔で言った。

 感謝する理由としては、だいぶ無理がある。

 もはや、オレが気に病んでいることに気付いた上で言っているとしか思えない。

 後腐れなく、今後もこれまで通り付き合えるように、嘘をついてくれた。さすが、ネオさん、オレが女の子だったら惚れている。


 それに、男まさりの女性ならば、この剣と魔法の世界でなら、きっと大勢いるだろう。まだ見ぬ女性に思いを馳せるのも悪くはない。




「ネオさん、ありがとうございま――」

「さらに言えば!」


 お礼を言おうとしたが、遮られた。


「男性の心を持った女性となら、確実に楽しいお付き合いができると思うんだ!」


 おおっと。

 何を言っているんだ、ネオ。

 男まさりの女性なら大勢いるだろうが、男心を持った女性となると、話は別だ。

 オレは1人しか知らない。ネオもそうだろう。


 ネオが気持ち悪い笑顔でウィンクした。




 ……口説かれている。


 『オレ、男なんです』は使えない。承知の上でのお誘いだ。

 もはや、オレが気に病んでいることに気付いた上で言っているとしか思えない。

 原因はオレにあるのだから責任を取れ、とさえ解釈できる。卑劣だ、ネオ、どんな女の子でもドン引きだ。



「わたしは身も心も女の子なので、ご期待には答えられないと思いますぅ。」

 ネオから目を逸らしながら、男心は捨てたと宣言した。我ながら無理がある。


「ええっ、身も心も女の子なら、なおさらお付き合いしたいよ!」


 おい。『男性の心を持った女性』と付き合うのではなかったのか。


「ごめんなさい。生理的に無理。」


 適当な理由をつけるのは諦めて、一刀両断にした。


お便りありがとうございます。とても励みになります!

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